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シュヴァンクマイエルの住む丘で。

Q.  住んでみたい場所は?

A.  チェコ、月、砂漠。

これは単に、語呂が良いとゆう理由から、だけじゃない。
(だけではないけれど、それもある)

月には絶に対宇宙人が住んでいると思っているし、
伊坂幸太郎さんの小説「砂漠」に出てくる

その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕で出来るんですよ

伊坂幸太郎 著「砂漠」

この言葉は、どの小説のどんな文句よりも大好きだし、
そしてチェコは、チェコだけは、本当に住みたいと思っていた。
なぜならそこは、巨匠が住む街だからである。

ヤン・シュヴァンクマイエルは、チェコスロバキア出身のアニメーション作家。
人形を使ったストップモーションアニメーションは日本でも有名。
いわゆる巨匠。分かりやすく言えば、チェコの宮崎駿のような人である。

巨匠に会えるかもしれない。
チェコ滞在中の2006年春に、そんな事をふと思った。
なんでもシュヴァンクマイエルの奥さんがプラハでギャラリーをやっていて、
そこにどうやら本人も住んでいるらしかった。
これは、と思い早速そのギャラリーを探しに行った。
当時は、iPhoneもない時代だったから、
「地球を歩こう」を頼りに歩いてみるものの、
もちろん外国の街で目的の場所を探すのは簡単じゃない。

とりあえず休憩、と入ったカフェでは
店主夫妻と常連客が仲良さそうにおしゃべりをしていて、
思い切って尋ねてみることにした。
シュヴァンクマイエルのギャラリーはどこですか?

彼なら、さっきまでそこいたよ。笑

これまで生きてきた中で、
これほど衝撃的な「さっきまでここにいたよ」は聞いたことがなかった。
シュヴァンクマイエルは、さっきまで、そこにいた。

ああ。
ここに住みたい。

その人は、ふらりとカフェにやってきて、のそりと帰ってゆく。
巨匠が「さっきまでいた」カフェのあるこの街に、住んでみたいと思った。

結論を言うと、
17年前のその日のことで今も覚えているのは、
シュヴァンクマイエルには会えなかったこと。
ギャラリーには無事たどり着き、
息子さんの素晴らしい版画作品を購入したこと。
(巨匠の作品は高すぎた)。
シュヴァンクマイエルに関しては、それだけである。
本当に会いたかったのか?と思うほどあっさりしている。
でもそれからの事は、今でもはっきりと覚えている。

僕は帰りにまたそのカフェに行った。
再び訪れたそのカフェで、
嘘みたいな話だけれど、そのあとずっと夜まで過ごし、
お店が閉まってから飲みにまで連れて行ってもらった。
そして翌年、現地で待ち合わせをしてインドを旅行した。
そしてインドで、信じれれないレベルの下痢をした。
そして、当時なかったiPhoneに、今年も家族の写真がたくさん届いた。

自分はあの日あの時あの場所で、大切な事を2つ学ぶことが出来た。

巨匠の街では奇跡が起こること。
そして、その気になれば、砂漠に雪を降らすことも出来ること。


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