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【オーディブル】会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレーション/三木 那由多 著

オーディブルで聴きました。

私たちは会話を通じて何を伝え、何を企んでいるのか。
あるいは相手の心理や行動にどんな影響を及ぼそうとしているのか。
気鋭の言語哲学者が、『ONE PIECE』や『鋼の錬金術師』などの人気の
フィクション作品を題材に、「会話」という営みを徹底分析!
コミュニケーションとマニピュレーションという二つの観点から、
会話という行為の魅力と、その中身をわかりやすく解き明かす。

Amazon書誌説明より

マニピュレーションとは、

マニピュレーションは発言を通じて話し手が聞き手の心理や行動を操ろうとする営み

会話を哲学する

ちょっと、いや、かなり難しい内容で、一度聴いただけでは理解できない(読んでも無理かも)
著者は研究者なので、解説されている内容が専門的な用語を使って学術的に論じられているだろうことは明らかです。
それを、平易な言葉に置き換えて、サブカル的な題材を使って分析を進めているところに意味があるように感じました。


著者の定義では、会話をする者同士で約束事を構築するのがコミュニケーションで、そのコミュニケーションを通じて相手を意のままに操作しようとするのが、マニピュレーションということのようです。

それはつまりどういうことなのか?を、漫画や小説、映画などフィクションの会話場面を引用して分かりやすく、丁寧に解説されています。

分かりやすく、と書きましたが、私は漫画を読みませんし、引用されている中で知っていたのはシェイクスピアの『オセロー』のみです。
取り上げられている漫画や映画、ゲームに親しんでいる方は読解が深まりより楽しめると思います。
この機会に『高橋留美子劇場』や『鋼の錬金術師』を読んでみたくなりました。



先に書いたように、悪意のマニピュレーションの典型として『オセロー』を取り上げています。
イアゴーが巧みな話術でもって、オセロに妻に対する不信を芽生えさせ、やがて破滅に導いていく会話の道筋が細やかに解説されます。

破滅にまでは追い込まれずとも、会話の中で、言葉に含みを持たせて印象操作をしていると感じたり、うっかり口を滑らせるのを誘導されているようでなんとなく不信感を持った経験はあります。
けれども、発した言葉を一つ一つ検証したりはしません。
なるほどこういうことなのかと腑に落ちましたが、それは言外に含まれている意図をどう読み取るかでよいのではないか?…
しかし、それでは、読み取る側の心理や感性や資質、偏見に作用されてしまう脆弱性があるのだと思いました。

会話によるコミュニケーションとマニピュレーションを分析して、著者がもっとも言いたかったことが、最終章に込められてるように感じます。
ここに収束させるためのこれまでであったのだと…

フィクションの中に限らず現実社会で、双方の約束事を構築するコミュニケーションにおいて、一方的に約束事を取り決められてしまったり、意図的なマニピュレーションによる差別は日常的に行われている…
違和感を持つのは"わたしのこころ"の問題ではなく、明らかに、そこに見えにくいものが存在していることを知っていれば、ただ傷ついてしまうのは避けられそうだと思いました。
そしてそれに立ち向かうことも!

逆に意識的に無意識に、会話で相手に影響を与え操作していたり、意のままにせんとしていないか、省みることも必要に思いました。

「そんなつもりで言ったのではない」は言説的責任を免れても倫理的責任がなくなるわけではないのだから。







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