【登山記】熱地獄よりイズる!伊豆山曼荼羅を巡る~走り湯と白山神社編
湯の出ずるところ 伊豆
伊豆は、湯の出ずる処が語源という説がある。その湯の出ずる処といえば、この「走り湯」である。
走り湯は、伊豆山神社の階段から、海に向かって下ったところにある。日本三大古湯である。
車で行こうとすると少しわかりにくいが、伊豆山神社から下っていけば、迷わず、また直ぐにたどり着ける。
走り湯の名の通り、横穴から熱水が走り出すように噴き出ている。その昔、役行者が伊豆に流された時、岩肌から噴き出す高温の水が、もうもうたる蒸気を挙げており、地獄の様相だったことから、ここを修験の地として整備したという。
実際、この横穴に入ると、ものすごい熱気とゴウゴウという音が身を包む。注意書きにあるが、かつては、一日900リットルもの温泉水が湧き出ていたという。
ゴウゴウと湧き出る熱水と豪快な湯の華がこびりついている。すさまじい熱気に5分といられない。
すぐ近くに走湯神社もあるのでお参りしたい。
走り湯カフェにも立ち寄ろう
伊豆山地区を襲った令和3年の大豪雨。伊豆山神社本宮のすぐ横の山が崩れ、逢初川を大規模な土石流が下った。周辺の家屋をなぎ倒し、多くの人命が失われたことは記憶に新しい。
復興未だならずの地区であるが、この復興を応援すべく、立ち上がった地元のダイバーが開いた走り湯カフェが近くにある。
トレーラーハウスの簡単なカフェだが、コーヒーやカレーなどの軽食もある。私はコーヒーをいただき少し休みながら、店員と話をしていた。店主が不在で、どうやら関係者が代打で店番をしていた。しばらくすると、すまなそうに買い物に行っていた店主が帰ってきた。この少し緩い感じがとても微笑ましく、良い感じがした。
伊豆山神社から奥宮へ
改めて、伊豆山神社にお参りすることにした。
この日メインは走り湯の見学だったが、まだ時間も早いこともあり、いけるものなら、前回参拝時にかなわなかった本宮のほうまで行ってみたいと思った。
伊豆山神社の立派な鳥居をくぐり、長い階段を上る。伊豆山神社は縁結びの神社としても有名であり、そして熱海が東京圏の若者に人気があるため、この日も多くの若者とカップルが訪れていた。
階段の途中には、役行者の木像や縁結びの神社「結 明神社」(むすぶみょうじんじゃ)の里宮がある。
伊豆山神社への参拝は軽く済ませ、右手奥にある「白山神社の遥拝所」に向かう。ここから山中にある白山神社までは、約20分とあった。
遥拝所は、そこまで行けない人が白山神社の祭神を拝む場所である。ちなみに、白山神社の祭神は、伊豆大明神の奇魂とある。また菊理媛命(ククリヒメノミコト)も祭っている。
ククリヒメは、イザナミとイザナギの別れの際に仲裁をした神と言われており、そこから縁結びの神様となったようだ。
私はこのククリヒメも古い地層の神ではないかと思っている。日本書紀や古事記にも登場しない謎の女神ではあるが、全国の白山神社に祭られている。ククリという語感が、縁結びというよりも、括る=縛る、封じ込めるに私は近いと思う。古来、伊豆や富士山は噴火や地殻変動が頻繁な場所であったこともあり、そうした荒魂を封じたのではないかと思った。
白山神社に向かって歩くことにした。天候があまり良い日ではなく、少し小雨もぱらついてきたので、空の様子を見ながら歩くことにした。
道は、人に踏まれてしっかりとしていたが、登山道に近く木の根やガレキで歩きやすいとは言えない道だった。とはいえ、運動靴程度で十分登れる山道ではあった。
途中、見過ごしそうになるが、伊豆山修験の行者跡という場所があり、磐にしめ縄をめぐらした場所がある。かつて、伊豆修験に挑む行者が準備を整えた場所であったろうとされる。
私は、この場所でなにか、ひんやりとした冷気=霊気を感じた。行者の気がこもっているのであろうか。しばし、ここで佇み、白山神社を目指した。
白山神社へ到着
白山神社は、小さな祠だった。
巨岩が山腹にあり、そこで行者が修行をしたのだろうか。なんとなく、座りたくなるような岩がいくつかあり、私は古の行者を幻視した。
幹の太い杉や厚い岩に手を触れ、ここでもパワーをいただいた。伊豆山地区には、やはり何か不思議な力がみなぎっているような気がする。
すぐ近くに住宅地があるとは思えないほど、森の力を感じる。ふと伊豆山神社の境内にある資料館で読んだ、伊豆山と富士山の両界曼荼羅のことを思い出した。これによると伊豆山と富士山は、それぞれを曼荼羅(まんだら)の入口と出口とされており、一体となって宇宙を表しているらしい。また、箱根の火山群とも地下を通じてつながっている・・・そういう伝説もある。実際地質学的にも、箱根も富士山もこの伊豆山神社のある伊豆半島が本州に衝突してできたのであるから、マグマの道があってもおかしくはない。
そうした科学知識がない中で、昔の人は大地のエネルギーの流れを肌で感じていたのだろうと思った。
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