【 読書レビュー 】答えは市役所の3階に
答えは市役所の3階に/辻堂ゆめ著 光文社
「2020の心の相談室」と副題があります。
突然のコロナ禍で生活環境がガラリと変わり、自粛生活を余儀なくされた日々。記憶もまだそれほど遠くなく、そして未だに完全にはコロナ前の生活に戻ることはなく、インフルエンザ同様いつ罹ってもおかしくない状況は続いている。
2020年のコロナ発生から人々が「交流」することが悪とされるよう状況下で追い込まれた人々。医療従事者、飲食店経営者、妊婦さん、学生、等々…もちろんすべての人達に影響はあったが、特に話題になった職種や立場に関わる人が1話ずつ登場し、市役所に設置された「心の相談室」を訪れる。
まだ若い臨床心理士の晴川さんと年配男性の正木さんコンビが、訪れた人達の悩みを傾聴する。
中にはすぐに話せない人もいたり、なかなか本心を明かすことができない人もいる。
と、晴川さんは正木さんに言う。
クライアントの話をじっくり聞き、疑問に思っても直接聞き出すことはしない。最後に晴川さんが、表に出さないことを推理し、新たな事実が浮かび上がる謎解きがそれぞれの話にあって面白い。
辻堂ゆめさんの小説は何冊か読んでいて、特に好きなのは「あの日の交換日記」です。この話も、あっと驚く仕掛けがあってとても印象に残っています。(今となっては細かい内容は忘れているので、ぜひ再読したい)
人生で、大きく躓くことがあった時、そのショックから立ち直る過程で、人に心の思いを話すことはとても助けになります。
私自身、40代の初めに大きな挫折を経験しました。その時に、うつっぽい精神状態にもなりましたが、心のどこかで「うつにならないように…」何をしたらいいかと思い、藁をも掴む思いで『家庭生活総合カウンセリングセンター』というところを訪れました。
そこも、この本の「心の相談室」と同じで無料でカウンセリングが受けられ、資格を持ったカウンセラーの方が私の話を聞いてくれるのです。
親や友人にも、話を聞いてくれる人には話しをすることもありましたが、あまり頼るのも迷惑になりかねません。
それでも、「話す」ことがとても大事で少しずつ心が軽くなっていくのがわかったので、カウンセリングセンターへ行ってみようと思ったのです。
2回くらい行ったかな。同じ人が対応してくれたのも安心感がありました。
言葉にしたり書いたりすることで、物事を客観的に捉えることができるというのも本当にそうだと思います。
何度も話しを繰り返すうちに、「もういいよ、そろそろ次のステップに行こう」という気持ちが自然と出てきて、前に進むことができるように思います。
まだショックが大きいうちは、せっかくの助言や励ましの言葉がきつく感じられ、自責の念で押しつぶされそうになることもあるので、ただ黙って傾聴してくれるというのは、本当にありがたいことなのです。
この本を読んで、その時の体験を思い出し、もし心の悩みをどこかで整理してみたいと思ったら、公的なカウンセリングセンターもおすすめです😊
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?