【わりと簡単】春のちょっと変わり種おでん×「青雲 颯 純米 超辛口」~日本酒ペアリング研究会 報告書No.6~
※「日本酒ペアリング研究会」は、日本ソムリエ協会が認定する日本酒・焼酎のソムリエ資格「SAKE DIPLOMA」を持つ筆者が、ご家庭でもできる料理と日本酒の合わせ方を提案する企画です( ˘ω˘ )。
ついでに日本酒は三重の地酒を中心に取り上げ、料理で使う食材はほとんど三重の地物食材です。料理のレシピも詳しく解説していますので、ぜひお読みください( ˘ω˘ )。
〇はじめに
こんばんは( ˘ω˘ )。
今回は日本酒ペアリング研究会の第6回目です!
今回の料理は「春のちょっと変わり種おでん」です。いや~だいぶ春になってきまして、新玉ねぎやタケノコなど春野菜がどんどん出てきております。とはいえ、まだ朝晩は寒いですからね(執筆時、外は3℃予報)。そんな春先は、春らしいおでんを楽しんじゃいましょう( ˘ω˘ )。
お酒は桑名市にある後藤酒造場さんの「青雲 颯 純米 超辛口」を選びました。かなり旨口なお酒です。
それではさっそくやっていきましょ~( ˘ω˘ )。
と言いましても、今回は出汁やら食材の解説や紹介がメインです(笑)。
◯材料と作り方
◇材料
<おでんつゆ>
市販のでもなんでもいいです。今回は鰹出汁を引いて作りました。
以下に基本の比率を書いておきましたので、ご参考までに。
水 600ml
鰹節 20g
塩 3g
醤油 大さじ1
みりん 大さじ1
料理用の清酒 大さじ1
これをもとにして、今回は鰹出汁900ml+醤油・酒・みりん各大さじ1.5で作ってます。
<具材>
好きな具材を入れてください。参考までに、今回の具材をご紹介。
ごぼう天
たけのこ
新玉ねぎ(小さめが良いです)
椎茸
人参
アスパラガス
芽キャベツ
<味噌だれ>
われわれ東海地域の民には、これが欠かせません。
大阪に住んでいたころ、おでんにほんとに味噌だれがついてこないことにびっくりしてました。
赤味噌(できれば純粋な豆味噌) 大さじ2
三温糖(上白糖でも) 大さじ1
煎りごま 適量
お湯orおでんつゆ 適量
続きまして、作り方です( ˘ω˘ )。
◇作り方
1.鰹だしを引く
今回はせっかくなので、僕がいつもやっている鰹だしの取り方をご紹介します。ここで書いてる分量は「基本の比率」のほうですが、実際は900mlでやってます。
➀水600mlを沸騰させる。
➁沸騰したら火を止めて落ち着かせる=泡が出なくなるまで待つ。
③鰹節を入れて2分放置する。
④ざるにキッチンペーパーかさらしをかませて…っていうのはなんか大がかりなので、目の細かい天かす取りで鰹節を取り出し、ある程度取ったら漉す。
⑤沸騰や鰹節が水を吸うことで600mlより減るので、その分は水を足して600mlにする。
※これが正しいのかは正直分かりません。ただ、同じ分量でやったときに取れた出汁の量が、例えば500mlと400mlだった場合、明らかに出汁の濃さが違います。それを調整するために、水を足して600mlにしています。こっちのほうが再現性が高いと思うんですが、どうなんでしょうかね。
⑥塩3gを加えて混ぜる。人が美味しいと感じる塩分濃度は0.8%らしいんですが、あとで入れる醤油にも塩分が含まれているので、0.5%にしています。
※ちなみになんですが、これはあくまで煮物・めんつゆ用の出汁の配合です。これをそのまま味噌汁に使うと塩辛いし旨味が強すぎます。味噌汁は二番出汁をとるか、この出汁を2倍に薄めるといいです。
⑦冷まして完成。冷ましている間に、野菜の準備をしておきましょう。
⑧出汁がらは、耐熱皿に入れて電子レンジでからっからになるまで熱したのち、冷まして砕いて鰹節粉にするといいです。目安は600wで6分半。やりすぎると焦げます。
これはポテトサラダやごぼうサラダに混ぜるのがおすすめです。お好み焼きや魚介系のカップラーメンにいれてもいいんじゃないでしょうか。
1.5.自分で引く出汁と顆粒出汁の違い
今回は鰹出汁の引き方をご紹介しましたが、どうでしょうか。僕は初めて家でやったとき、意外と簡単だなと思いましたが、それは料理好きの意見ですからね。手間や道具なども含め、そりゃあ顆粒出汁のほうが圧倒的にお手軽です。
ここまでくると、どっちが良いかというわけではなく、好みや料理にかけられるコストの話になってきます。なので個人的にはそんな論争は不毛でしかないんですよ。ちなみに僕も市販のめんつゆ(創味の減塩タイプが超おすすめです!)を使うときはありますし、味噌汁は昆布茶を使うことが多いです。
とはいえ、実際につくる際には顆粒出汁と自分で引く出汁には決定的に違うところがあります。それは「糖類の有無」です。上記のように、自分で引く場合は、鰹節と塩と水のみを使います。一方、顆粒出汁の原材料を見てみましょう。個人的によく見るし、実際に使っていた「味の素 ほんだし」と「シマヤ 出汁の素」を取り上げます。
「味の素 ほんだし」
「シマヤ 出汁の素」
このように、それが悪いというわけではなく、単純に顆粒出汁で出汁をつくるとじゃっかん甘いんですよ(昆布茶も同様)。そのため、味付けの際はそれを考慮しておくといいと思います。メーカーが出しているレシピは考慮されてると思いますけどね。
そしてもちろん、顆粒出汁にはすでに塩が入っています。計算してみたら、味噌汁用の分量で約2.5%ぐらいですかね(ちなみに僕も味噌汁なら2.5%にしてます)。そのため、塩分だけ減らすということはできませんし、出汁の旨味だけ増幅させることもできません。とはいえ、そこまでやろうとするのは趣味や仕事で料理をしている人ぐらいだと思いますけどね。ともかく、顆粒出汁はすでに味が決まっているので、それをどうこうすることはできません。一方、自分で出汁を引くなら、出汁自体の味わいを変えられる自由度が高くなります。
あと違いと言えば、やはり顆粒出汁は粉末なので、多少舌触りが粉っぽいことはあります。他には、うま味調味料(アミノ酸)や酵母エキスが入ってます。これはたしかに出汁ではないですが、主な成分としては出汁の主成分と同じくアミノ酸なので気にしなくていいです。発狂する人は無視しましょう。
このように、実際にやって比べてみるとたしかに違う部分があります。細かいことではありますが、意識してやってみると料理の腕が少し上がる…かもしれませんし、そうでもないかもしれません(笑)。以上、小話でした(笑)。
2.野菜を切る。
好きな具材を用意してください。
春のおでんという感じでやってますが、実は芽キャベツは冬野菜なんですよね…。あと、人参も冬のほうが美味しいです。3月は冬と春の間ですので、こんなラインナップになります。
一方、これからが旬な野菜もあります。
まずは新玉ねぎ。このように、半分くらいまで十字に切り込みを入れると、箸が通りやすくなります。
続いてたけのこ。農産物直売場で3月はじめ~半ばに出るこれぐらいの小さいやつはあく抜きが要らず、そのまま使えます。スーパーのやつは知らないので注意してください。(そもそもあんまり生タケノコ売ってないか。)
糠を使って茹でる必要がないので、たけのこ本来の香りと甘味をそのまま楽しめるので、めちゃくちゃ美味しいです。これが出ると春の近づきを感じますね。
最後はアスパラガス。この時期から太くて美味しそうなのが出てきますね。使い方ですが、下3分の1の皮が硬いので、包丁かピーラーで剥いておきましょう。あとは食べやすい大きさに切ってください。
3.冷めた出汁に醤油・料理用の清酒・みりんを入れてつゆを作り、野菜を入れて中火にかける。
4.煮立ってきたら弱火にし、30分煮る。アクが出たら取る。
泡や湯気が立ってきたらそろそろです。
やっぱりキッチンタイマーは買っておくべし。目が離せるからです。
5. 30分経ったら、練り物やがんもなどを入れる。
練り物やがんもはすでに火が入っていますし、長時間煮ると旨味が抜けてしまいます。そのため、あっためるだけぐらいの感じで入れましょう。
今回は(というかいつも)三重県熊野市の「熊野かまぼこの店 新兵衛屋」さんのごぼう天を使っています。これ美味しいんですよね~。
オンラインショップもやっているみたいなので、ぜひご購入ください。僕は近くにあるJAの直売場に売ってるので、そこで買ってます。
熊野かまぼこの店 新兵衛屋 公式ホームページ&オンラインショップ
6.味噌だれを作る
混ぜるだけなんですが、お湯orおでんつゆは少しずつ入れましょう。おでんの場合は硬めに、味噌カツの場合は緩めに延ばすといいと思います。好みの緩さになったら、最後に煎りごまを入れて完成です。
7.盛り付けて完成
みそだれは好みでつけてください。
◯今回のお酒とペアリング考察
今回は、「青雲 颯 純米 超辛口」を合わせていきます。
<蔵元情報>
後藤酒造場(三重県 桑名市)
公式ホームページ:
◇お酒の基本情報とコメント
「青雲 颯 純米 超辛口」(後藤酒造場)
区分:純米
米:国産米 精米歩合60%
度数:17度
公式商品紹介ページ:なし。
筆者のコメント:
<香り>
グレープフルーツやライムなどの柑橘を思わせる香り
+
わずかにメロンのような果実香
そこに炊いた米の香り
ローリエのような青いハーブ感
香りの余韻もグレープフルーツのようで、シャキッとするような爽やかさを生み出している。もちろん、純米らしい米由来のふくよかさもある。とはいえ全体の香りの強度としては穏やかで、食事の邪魔にならない。
<味わい>
辛口な印象。
最初にわずかに甘みがあるものの、すぐにキレのある酸味と力強い米の旨味をしっかりと感じる。
後半にかけては少し強めに苦みも感じ、余韻にはその苦みと旨味が残る。
昔ながらの味わいに近いが、芯は太くありつつも、酸味によって輪郭はシャープになっており、しつこさ・くどさを感じない。
むしろ、後味は先述の旨味・苦みが続きながらも、すっきりとした爽やかさもあるため、いわば相反しそうな「淡麗」と「旨口」を両立させたような味わいになっている。
<総評>
ホームページの蔵元紹介によると、後藤酒造場さんは「米の持つ豊かな旨み」を重視しているそうで、このお酒はそれが見事に体現されていると感じる。米を炊くのではなく、発酵させるからこそ引き出される旨味。それを存分に味わっていただけるような1本。辛口好きの方にはぜひおすすめしたい。
また、冷えていると甘味を感じる度合いが下がって苦みを感じやすくなってしまうため、飲むときは冷や(常温)か熱燗がおすすめ。燗をつけると甘味が増すことで苦みが抑えられ、より穏やかで一体感のある味わいになる。
◇今回の料理との合わせ方
日本酒に合わせる料理と言えば、刺身や焼き魚などの魚料理とともに、出汁を使った煮物などがイメージされるかと思います。今回のおでんも、春野菜や練り物もさることながら、やはり出汁を味わうということが大きなテーマになってきます。
いわば「日本酒と言えばこれ」みたいな定番の組み合わせなわけですが、実は近年の主流となっている「フルーティーで綺麗な日本酒」は意外にも出汁と合わせづらかったりします。本企画の第1回『【簡単】野菜の豚バラ巻き 韓国風レンジ蒸し×「作 雅乃智 中取り&恵乃智」~日本酒ペアリング研究会 報告書No.1~ 』でも書いたんですけどね。それはともかく、今回のような出汁がメインの料理には、やはり昔ながらの味わいや香りを受け継ぐ日本酒のほうが合います。
理由は大きく2つあると思っています。1つ目は、昔ながらのお酒は香りが穏やかであるということ。特に鰹出汁は鰹節由来の香りが強く、それを楽しむこともまた大きな核となります。このことから、鰹出汁がメインとなる料理では、できるだけその出汁本来の香りを殺したくないわけです。仮に出汁とお酒の香りのどちらかが消えてしまったり、喧嘩していい香りと感じられなくなってしまったらペアリングとしては完全な失敗です。それを考えると、最初から豊かな出汁の香りを邪魔しないお酒のほうが合わせやすくなります。
2つ目は、昔ながらのお酒は米の旨味がよく感じられるものが多いということ。これは地域にもよるのかもしれませんけどね。というのも、例えば新潟の「淡麗辛口」や近年のフルーティーで綺麗な日本酒は、明治時代以降に開発された様々な醸造技術が、戦後さらに発展・浸透したことによって実現したものだからです。具体的には、速醸酛や竪型精米機、軟水に合わせた低温長期醪の開発、優良酵母(きょうかい酵母)の分離、冷蔵技術の発展による低温下での四季醸造の実現などが挙げられます。「淡麗辛口」は酒米の「五百万石」が開発されたことも大きいです。逆に言えば、昔は綺麗な日本酒をつくるにも技術的な限界があり、どうしても旨口のお酒になりやすかったということです。
ちょっと話が逸れましたが、ここで大事なのは「出汁の旨味と酒の旨味の相乗効果」です。鰹出汁ならイノシン酸、昆布出汁ならグルタミン酸など、出汁はうま味成分となるアミノ酸が多く含まれているのはご存じのとおりです。取り方によってその度合いは変わりますが、おでんの出汁は基本的に濃い目かなと思いますし、その旨味をまっすぐに感じることができます。そこに米を発酵させることで生まれる旨味(同じくアミノ酸)を合わせることで、互いの旨味がより増幅されます。ここでも、綺麗な味わいややたら甘口の日本酒だと酒の味が消えたり、旨味が混ざることによって全体的なまとまりが崩れたりします。そうなるとペアリングとしては失敗です。そのためお酒のほうも、よりまっすぐに米の旨味を感じられるものが合わせやすいです。
こんな感じで、出汁を感じられる料理には、今回のような旨口のお酒を合わせていただくとよいかと思います。そのなかでも、「青雲 颯 純米 超辛口」は旨味を軸にした味わいがかなり洗練されており、非常によく合います。昔ながらの日本酒にありがちな炭っぽい香りがあまりないのも大きなポイントです。
ぜひ試してみてくださいね~( ˘ω˘ )。
ちなみに、味噌だれのほうに重きを置いてペアリングするなら、前回の「古色蒼然」のような熟成古酒もありです。そちらもぜひお試しを!。
※前回記事↓
〇終わりに
今回は、「春のちょっと変わり種おでん」に「青雲 颯 純米 超辛口」を合わせてみました。これから春本番を迎えようとしているわけですが、昼間の気温が上がっても夜はまだじゃっかん寒かったりするので、そんな日はこんな組み合わせもいかがでしょうか。具材を変えればいろんな季節でも楽しめますし、それぞれの季節に合わせたおでんというのもいいかもしれません。
そして今回の「青雲 颯 純米 超辛口」ですが、個人的にはおでんにはこれ一択です。おでんのためにあるんじゃないかとも思うぐらいよく合います。正直、昔ながらの雰囲気がありますし、単体で飲むと苦みも強く感じるので、特に若い人には受けづらいお酒なのかなとは思います。しかし、そういうお酒でも、適切な料理と合わせるとまた違った感覚を生み出し、美味しくなることがあります。むしろ、昔ながらの日本酒の真価はそこにあるのかなとも思っています。
このように、日本酒は単体で飲むことがすべてではありません。むしろ、様々な地域において、その地の食材や郷土料理に合わせて発展してきたものでもあります。ですので、ぜひいろんな日本酒をいろんな料理に合わせて、自分なりの組み合わせを見つけていただけたらと思います。この「日本酒ペアリング研究会」という企画が、小さくともそのヒントになればとても嬉しいです( ˘ω˘ )。
それでは、また次回お会いしましょう。
素敵な日本酒ライフを~( ˘ω˘ )。
「日本酒ペアリング研究会 報告書」のまとめを作りました。
他のメニューとペアリングもあわせてお読みいただけると嬉しいです( ˘ω˘ )。
本企画とは別でやっているエッセイ企画「淡い雲をとどめて」のまとめです。ぼちぼち書いていきますので、こちらもぜひに。