命を絶つ役目を持つ、生産者は何を想うのか。
※鶏をしめる描写があります。苦手な方は読むことをやめてください※
書き手:田丸さくら(編集長)
写真:おかゆーせい
私たちはたくさんの命を食べて生きている。けれど、そこに向き合う機会は多くない。
私は常に、命をいただくことに「食べたい」気持ちと「命を奪う罪悪感」のような、相反する複雑な感情を持っている。
7年前、19歳の時に足を踏み入れた「生産者の世界」。その現場には、自分が命をいただいてでも生きている意味に”何か”の答えが欲しくて向かう時がある。
命を絶つ役目を持つことがある、生産者たちが何を想うのかが知りたかったから。
そこから何か、生きるヒントが欲しかったから。
2024年3月7日。私は初めて、生きている生き物の命を、自分の手でいただいた。
茨城県石岡市で養鶏を営む、田中啓之(たなか・ひろゆき)さんが開催する命の学習会での体験。
農園についてすぐ、平飼いでのびのびと育っている鶏たちと目があった。
肩に乗るほど人懐っこく育っているのは、田中さんの愛情と、そこからくる誠意溢れる行動があるからだとわかった。
私の肩にも、鶏を乗せてくれた。未知のものには恐怖も覚えるが、大人しく付き合ってくれる姿に愛着が湧いた。
けどこの子は、今から私がしめる鶏だった。
恐怖や痛みを感じないような頭の持ち方を教わり、ナイフを握る。
田中さんは、命の尊さを知っているからこそ、鶏が最後まで嫌な思いをしないことを徹底していた。
驚くほど静かで、逃げようともしなかった。きっとこの子たちには、人間が嫌なことをするという意識がないし、死ぬという概念も私たちほどはないのだと思う。
瞬間、言葉が追いつかない、「怖さ」が体に駆け巡った。手が震えて、涙が出てきそうになるのを悟られたくなくて、表情に出さないことに必死だった。
料理の延長のように考えたら良かったのかもしれない。けれど、バチっと目が合った時に、その光る瞳が綺麗すぎて、命があることの強さに、それを奪うことへのためらいが出た。
ずっと押さえつけていることもできない。
意を決して。
いざ、頸動脈にナイフをかざす。
思考を無にできた瞬間を狙って、刃を入れる。が、羽でナイフが滑って切れない。
2回目の挑戦。目を見ると静かで、私に身を委ねてくれているかのようだった。
次は強くナイフを入れる。
だけど、失敗。身を委ねてくれていることに応えられなかった悔しさや、痛みを与えている怖さ、申し訳なさ。
たくさんの感情が湧いてきた。
最後、田中さんは「大体の人はできないから」とこれ以上鶏に苦しみや恐怖を与えないように、ナイフと鶏を引き取ってくれた。
そこから、丁寧に血を抜き、羽をむしり、解体をして、その子の全てをいただいた。
肉や内臓は鍋、骨は出汁、油は鶏油……とさかも炒めて、言葉の通り無駄なく全てを食した。
「環境を破壊しない生活をすると決めて養鶏を始めようと決めた時から、命の学習会もやっている」
田中さんは自分の生き方の一部を伝えることで、自然や動物の大切さ、自然の摂理のなかで生きることに向き合う機会をたくさんの人に提供しているんだ、と思った。
生産者も、私たちと同じ「人」。命をいただくこと、自分で手をかけることには同じように、ためらいや苦しさ、辛さを感じている。
今、この記事を書いている時にも、初めて鶏の命をいただくことに向き合った感情は薄れている。
慣れず、忘れず。自分なりの生き方に、今日の気持ちを重ねていきたい。
田中さんの卵の購入申し込み・イベント情報・お問い合わせ先
TEL:0299-42-4270
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田中さんの取材記事
前編 https://note.com/taberutimes/n/n9800eb964233
後編 https://note.com/taberutimes/n/n53d0d1dc69e3
あとがき:やっぱり新鮮な鶏は美味しかった
命を奪う体験をした時、私はヴィーガンといった肉食を辞めることを選ぶのかも、と思っていた。トラウマになってお肉を食べたくなくなるのではないか、とも。
けれど、田中さんの命への敬意と食べることへの理解に触れながら進む、命の学習会に参加した私は、トラウマもなく抵抗もなく、むしろ「生きていく、食べていくことへの覚悟」が芽生えて、自分がしめた鶏を美味しく味わうことができた。
肉はお鍋に、内臓は煮物に、油は鶏油に、骨は出汁に……と言葉の通り余すことなく、そして「美味しく味わって」いただくことを、命を託してくれた鶏への敬意としたい。
実際、みんなでしめて作った鶏鍋や煮物、田中さんの奥様が作ってくださった卵焼きなどは本当に美味しかった。
もちろん、お肉を食べない選択肢をとる人もいるし、他のところで経験したという同行者は1週間ほど鶏肉が食べられなくなったそうだ。個人差があることなので、あくまで一意見として。
ぜひ皆さんも、次回の命の学習会に参加してこの味を味わって欲しいです。
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