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吹奏楽部で鬱になりかけた話【大学生のつぶやき】
こんにちは、たばちいです。
1年以上ぶりにダーツをやってみたら、全然うまく投げられなくなってた。友達にたくさんアドバイスしてもらって、いやー本当にありがたい。
そんなことをしていたら、高校3年の夏の吹奏楽コンクールの練習を思い出した。私のこれまでの人生の中でいちばんのどん底。私の中のいちばんいちばん暗くてつらくて嫌な記憶。
今一度、しっかり書き残しておきたい。
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私は中学、高校と吹奏楽部に入っていた。
吹奏楽に対して元々モチベーションがあった訳ではなく、ただなんとなく入部した。ま、リコーダーも上手いしなんとかなるかな〜と思っていた。
中学の間は、そのくらいの軽いモチベーションでも結構楽しく部活をすることができた。
そのままのテンションで、私は高校でも吹奏楽部に入った。ただ、私の高校では演奏のクオリティは高く、練習もハードだった。
とはいえ、練習がハードなこと自体は別に問題ではない。そんなものはとっくに慣れてる。
夏のコンクールでは、春ごろにオーディションが毎年行われ、オーディションに受かった人しかコンクール(正確にはAの部)に出場できなかった。正直、私は楽器の演奏が特別上手ではなかったから、高校1, 2年はオーディション不合格だった。
ちなみにだけど、この時の記憶があるから"オーディション"という言葉が今でも苦手だし、体が震えるし、とにかく怖い。怖すぎる。嫌だ。これまでできていたものが、オーディションで一人で吹くとなぜこんな上手くいかないのだろうか。いや、そもそも演奏できてもいないのだろう。あの時の緊張感と指の震えはもう思い出したくない。
高校3年のオーディションでは、そもそも人数が足りなかったから、確実に合格することが保証されていた。ついに、初めてのコンクール(Aの部)だ。
コンクールの練習は、今まで味わったことのない厳しさだった。というより、求められる演奏レベルが明らかに高くなった。
申し訳ないけど私には、みんなの求める音楽が分からなかった。理解できなかった。良い演奏と悪い演奏の違いが私には何も分からない。
違いが分からないのだから、結局私はどのように吹けばいいのか分からない。ただ分かるのは、今の演奏がダメだということ。自分が下手なのは分かる、分かるのだけれど。
なんかこれ書いて思ったけど、当時の私の様子は心理学の実験神経症みたいな症状だなと思った。
良い演奏と悪い演奏を聞き分けるとして、明らかに二つの演奏に違いがあれば、どっちが悪くてどっちが良いか分かるから、演奏の修正をしようと思える。でも、だんだんと音楽のレベルが上がって、悪い演奏の悪い程度が小さくなると、どっちが良くてどっちが悪いのか識別できなくなる。すると、混乱を生じて、発狂したり無気力になったりする。うん、これが当てはまってる気がする。
という感じで、私の自己肯定感はだだ下がりになり、練習もしんどくなりはじめた。だって、演奏したら毎回ダメ出しされて、でもなぜこれが悪い演奏だったのか理解できない。それじゃ、どうしようもないじゃないか。たまに演奏を褒められたとしても(いや、褒められないけど)、本当に良い演奏をしたのか、本当に褒めてるのか信じられなくなる。どうせ私は下手だしって思ってた。
そんな練習生活が一気に暗くなる出来事があった。それは実は、人間関係のことだったりする。
当時、同じ吹奏楽部に、私が気になってた異性がいた。コンクール前とかは一緒にライブ行ったりテスト勉強したりした仲ではあったけど、彼には私よりずっと仲の良い女の子が何人かいた。
私が彼と話そうとしても、彼は別の女の子とずっと喋ってる。ずっと。ずっと。んーなんでだ。
その彼と別の女の子が、二人で仲良く喋るのを毎日見て、ああどうせ彼はあの子が好きなんだ、どうせ私なんか、って思ってた。あとあと聞いたら、やっぱ彼はその子が気になってたみたい。女の勘は本当に当たるよね、悔しいくらいに。
もうひとつ話すことがある。吹奏楽部は7月ごろに野球部の応援演奏に毎年行っている。その演奏の席順で、その彼と隣で吹けることになった。その時だけが、彼と仲の良い女の子に邪魔されず、彼と話せるほぼ唯一の機会だった。
ただ、野球応援当日は、けっこう席順が適当だった。当日も彼の隣で吹けると思ったのにそれは叶わず、彼はまた別の女の子とずっと喋りながら吹いていた。くそ、結局別の女の子のとこ行くのかよって思った。
その年は野球部がめちゃくちゃ強くて、結局県大会で4回戦まで進出することができた。最初2回は、彼は別の女の子の隣で吹いていた。隣で吹かないと、私は一生後悔すると思って、3回戦の前日、彼に連絡を入れた。「明日の野球応援、隣で吹きたいんだけど、いい?」。
3回戦はちゃんと彼の隣で吹くことができた。本当に楽しかった。連絡入れて本当に良かった。
ただ、4回戦は例の別の女の子の隣で吹いてた。でも、一回でも隣で吹くことができて良かった。
当時の私は、先生にダメ出しされてばかりだし、楽器の演奏も上手くいかないし、ただただ暗くてしんどい日々だっけど、その彼と喋ったり隣で演奏したりすることだけが、唯一の楽しいことだったし、救いでもあった。
それが、野球応援も終わって彼の近くで吹くこともなくなり、彼はその仲の良い女の子とずっと話してる。ああ、なんにも良いこと無くなった。
コンクール練習の強いストレスが毎日かかる中、その無気力さや悲しみや寂しさが、かなり悪い方向にいってしまった。嫉妬と言うのかなんと言うのか、急に彼のことが嫌いになった。顔も見たくない、指図もされたくない。変に気を遣われると余計にイラつく。こっちを見ないでくれ。
彼は演奏がとても上手いから、私に演奏を教える立場だったのだけど、彼の仕切る練習が、この世でいちばん嫌いになった。すぐイラついて反抗して、私は終始不機嫌だった。
私が100%悪いのはもちろん分かってる。申し訳ないと本当に思ってる。彼も私のnoteを見てくれているらしいから、ここにも書いておきます。
迷惑かけて本当にごめんなさい。
彼の仕切る練習にイラつく毎日が続いた。練習中に頭痛が起こるようになり、私の心と体が蝕まれていくのを感じた。
これは後から彼本人から聞いた話だが、当時なぜか不機嫌そうに練習する私を見て、演奏がなかなか上手くいっていないだけかと思っていたとのこと。あまり声をかけても嫌がるだろうから、変に刺激させないようにあえて私のことを避けていたらしい。ああ、なんて逆効果!!!私は彼がずっと別の女の子と喋っているのを見て不機嫌になって、それを見た彼は私のことをあえて避けていく。最悪の悪循環だ。彼は、まさか自分のせいで私が不機嫌になっているとは夢にも思っていなかった、と言っていた。ここが上手く噛み合っていたら、状況は悪化しなかったのかもと思うけど、今考えたとてもう仕方ない。
精神的苦痛が続く中、ひとつ大きな出来事が起きた。定期的に外部コーチがやってきて演奏指導をしてくださるのだが、アンブシュア(演奏時の口の形)をこだわると良いと教えてくださり、正しいアンブシュアを指導なさってくれた。その時のレッスンでは、音がより良くなったのを感じた。
次の日、合奏があったので、昨日教えてもらったアンブシュアでより良い演奏しようと張り切ったのだが、なぜだか上手く音が出ない。なぜ。
一人ずつ音を出していくのだが、何度吹いても音が出ない。なんで、なんで。涙がボロボロ溢れ出てきて、腕も体も震え始める。なんで、なんでできない。すべて合ってるはずなのに、なんで。
学生指揮者の子が色々アドバイスしてくれるのに、音が出ない。昨日頑張って身につけたはずなのに。体も震え、口の筋肉も崩れ始め、状況は悪化していくばかり。なんで、なんで。
あまりにも酷い状況を見かねた学生指揮者の子は、私以外の人に一旦個人練習をするように伝えて、隣の部屋で学生指揮者の子が私につきっきりで吹き方を教えてくれた。
昨日言われたことは全部忘れて、今までの通りに、唇を丸めて、楽器を構えて、口を閉じて…。
私の震える肩をさすりながら、優しく教えてくれた。昨日言われた全てを忘れたら、いつものように音が出るようになった。そう、それでいいんだよ、良い音が出てるじゃん。そう言ってくれた。
その時、音が出た喜びよりも、私以外の全員に迷惑をかけたこと、結局正しい演奏法が分からなくなったこと、改めて私は演奏が下手なことを強く実感した。もう私には何も分からない。もう練習を辞めたい。もうこんなのは嫌だ。嫌だ。
後日の別の合奏だったと思う。私はいきなり合奏中に過呼吸を起こした。なぜか急に息が上がる。のどの半分以上が詰まってるみたいで、呼吸ができない。肩を動かして必死に呼吸する。もちろんそんな状態で楽器が演奏できるはずもない。
でも、私にはそんな体調不良で合奏を休む選択肢など無いと思った。私は演奏が下手なんだ。合奏を休んだらもっとみんなに置いていかれる。私には合奏を休む権利などない。吹くんだ。吹き続けるんだ。私にはそうすることしかできないんだ。かなり本気でそう思っていた。
合奏の休憩時間で必死に呼吸を整える。やたらと体が熱い。熱が出ているのだろうか。涙もボロボロ流れ出てくる。耐えろ、耐えろ、私。
その後、呼吸も落ち着いて、最後まで合奏に参加することができた。正直、その合奏は休まなくて良かった。たくさん学びのある合奏だった。
大事をとって、次の日の朝に呼吸器科の病院に行って診察をしてもらった。あの過呼吸は部活によるストレスから来るものだから、部活以外の時間ではもちろん症状は起こらない。
結局、診察では何も異常は見つからず、とりあえずの薬を処方されて、そのまま部活へ行った。
学校へ行くと、彼が「お、来たんだね。大丈夫?」と声をかけてくれた。適当に返事をしつつ、余計なお世話だなぁと酷いことを思いながら、楽器を準備した。その日が、彼の仕切る最後の練習だった。なぜか私の心は晴れていた。
その時には県大会1週間前。なぜかラスト1週間は心が振り切れ、最後の大会に全力を費やすことができた。西関東大会こそ出られなかったけれど、かれこれ6年間の吹奏楽人生を悔いなく締めることができた。
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今振り返ってみると、もし彼の仕切る練習があと1週間でも長くなってたら、私は多分うつ病レベルで心が荒んでいたと思う。ギリギリのところでなんとか耐えた。本当、ギリギリの瀬戸際だった。
過呼吸の起こる直前は、本当につらかった。心がいちばん不健康になった瞬間だった。本当に苦しい記憶だし、二度と味わいたくない。
私は部活で心をボロボロにしてしまったし、私と同じ人をこれ以上増やしたくない。
部活って友達と力を合わせて、一つのことに取り組んで、厳しくとも楽しく行うものだと思う。そんな部活で心をボロボロにするなんて、本当にもったいないことだと思う。
だから、まず私自身、今いるバンドサークルでは、のんびり楽しくやることをモットーにしているし、しんどい思いはしたくない。
そして、この自分の経験を通じて、楽しく有意義であるはずの部活でしんどい思いをして心を痛める人を少しでも減らしたいという一心で、私は大学で心理学を学ぶと決めた。
心理学の学べる大学・学部を探して受験をし、念願の心理学を学ぶ生活をしている。とはいえ、目の前の課題に追われる毎日だけど、ね。
まだ誰かを救える立場ではないけれど、より多くの人が部活を楽しんでくれたらと願っている。