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ばあちゃん

今月の朔日餅は「ヨモギ餅」だった。
見た目は緑の玉。

ヨモギだ。
一口齧るとものすごいヨモギが押し寄せてくる。ヨモギたちがどっとに押し寄せてくるのだ。
「くせぇ。ヨモギくせぇな。」とよろしくない感想が出そうになった。別にヨモギ餅が嫌いなわけではない。
思い出すのだ。幼き頃、野山を駆け回っていたときを。
ヨモギの匂いに、当時の思い出まで蘇ってくる。何なら土の匂いまで思い出せる。



ヨモギは腐るほど生えている。
時期になれば、ばあちゃんがむしってくる。

「草餅できたよ」と持ってくることがあれば、「取りこい」と留守電が入っていたり。
“もうそんな時期になったか感”を味わわせてくれるのがヨモギ餅だ。うちのばあちゃんは草餅と呼んでいたが。




そろそろばあちゃんもヨモギをむしりに行くのだろうか。草餅作る準備をするのだろうか。それともまだヨモギが見つからなくて、草餅に思いを馳せてるのだろうか。



ばあちゃん。
元気かな。


最後に会った時、「ばいばい、また休みになったら帰ってくるからね。」と伝えたら泣いていたっけな。
「一生の別れみたいじゃんか」と父にツッコまれてたけど、ばあちゃんにとっては毎度毎度一生の別れみたいなのかな。元気かな。川っぺりを散歩してるのかな。息抜き程度にパチンコ行ってるのかな。


帰るたびに出してくる、やたらにデカいごぼうが気になって仕方ない“きんぴらごぼう”が食べたいな。木の枝みたいだけど、そのビジュアルが、なんともばあちゃんのきんぴらごぼうって感じなんだ。それも好きだけど、一番は“いかにんじん”かな。あれ、日本酒と合うんだよ。永遠に食べれるよ。いかにんじんフォーエバーだよ。


ずっと松前漬けのザコ版だと思っててごめんね。私いかにんじんの方が好きだよ。
今度帰ったとき作り方教えてもらおう。嫁入り道具の一つに“いかにんじんのレシピ”も入れとくね。ついでに木の枝みたいなごぼうのレシピも持っていこうかな。


ヨモギ餅は草餅で、草餅は“ばあちゃん”なんだ。


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