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研修講師である私なりの研修・セミナー企画立案、プログラム開発の方法

こんにちは。研修講師の渡辺整です。

研修事業会社に属していた時から、社内の関係者からも
「どうやっているの?」
と訊かれることが多かった、研修プログラムの作り方について、
今日は書いてみようと思います。

※ちなみに先日、動画も撮ってみたので、リンクを貼っておきます。

さて、私は会社員時代も含めて、これまで色んな研修を企画し、
プログラム・カリキュラムを創案し、テキスト資料を作成してきました。

例えば、一例として、こんなテーマで研修を企画してきました。

・ビジネスマナー
・コミュニケーション・プレゼンテーション
・マネジメント(部下指導・後輩育成・コーチング)
・接遇・接客・CS・クレーム対応
・風通しのよい職場づくり
・ハラスメント防止
・ダイバーシティ推進(女性活躍・LGBT・アンコンシャス・バイアス)

これが対象者が変わってくると…例えば、
・外資系向け
・ベンチャー企業向け
・サービス業向け
・管理職向け または 若手向け
 
みたいな感じで、対象企業や対象者によって、
研修の伝え方や切り口、内容が変わります。

■前提としての私のスタンス(本は読まない、SNS投稿は参考にする)

他の、研修企画やプログラム・カリキュラム考案をする方が、
どのようにそれをしているかは分かりませんが、
私は、まず、本を読むことはありません。

世間にはマネジメントやビジネススキルに関する出版物が沢山ありますが、
それらを私は、基本、読みませんし、読んだことも、ほぼありません(笑)

特に研修を企画する際に、他者の教えをインプットしてしまうと、
自分なりのオリジナリティがなくなってしまうリスクがあるのと、
やはり著作権侵害の危険性もあるのと…
ともっともらしいことを述べますが、
純粋に、本を読むのが得意ではない、というのも理由のひとつです。
(小説やエッセイ本は大好きです)

ただ、代わりに、インターネット記事を参考にすることはあります。
例えば、LGBT研修を作る時には、性的マイノリティの方々の
ブログやSNS投稿に目を通すことはあります。
Z世代や外国人の考え方や価値観を知るために、
該当する方々の発信する記事や投稿を読むこともあります。

この時に、誰か一人の記事を鵜呑みにするのは危険なので、
複数の方の意見をバーッと眺め読みして、
情報…というよりも、世界観をインプットしていきます。

役者さんが役作りをしていく感覚に近いかもしれません。

■研修の内容に活用する学びは、観察から体得・習得するものがほとんど

私が、何よりも大事にしているのは、日常の観察から得る学びです。

例えば、身の周りにいる仕事ができる人、残念な人を観察します。
部下に慕われる上司、部下をつぶしてしまう上司を観察します。
あるいは、皆が生き生き働く職場、皆が下を向いている職場を
比較観察します。

この時、そういった人や職場を形成する具体的な行動や要素、
パターンなんかを見つけ出すことができれば、
それは、そのまま研修の中に潜ませる要素・レッスン内容になります。

前提として、これが私のスタンス・スタイルです。

■研修企画・研修制作の依頼があった際にまずするのは、現状と理想を描くこと

クライアントや関係者から、研修企画・研修制作のオファーがあったら、
まずは「現状」と「理想」を整理して洗い出すようにします。

この2つを見て、どんな研修(教育)が必要かを、
リアルに考える必要があるからです。

現状と理想を比較して、どんな「教育」が必要かを考える

依頼主から「組織の課題」を提示された場合には、
「現状はどうなっているのか?」をヒアリングするとともに、
「理想はどういう状況なのか?」をヒアリングします。

理想について依頼主が描けていない場合には、私にて妄想し、
「こういう世界を見たくないですか?」と提案をします。

「若手が生き生きと働いて、意見を言い合う職場を作るのはどうでしょう」「管理職がハラスメントに怯えず、指導ができる世界を作りましょう」
…例えば、こんな感じです。

テーマやキーワードだけを告げられる場合もあります。

「アンコンシャス・バイアスについて知りたい」
「心理的安全性について教えてほしい」

そんな時でも、「何故それを学びたい(学ばせたい)のか」を確認します。

そこから、また、クライアントや受講者の
「現状」と「理想」を頭の中に描いていきます。

■現状と理想に「橋」をかけるのが教育

さて、現状を洗い出し、理想を描いたら、そのギャップを埋めていきます。

現状として、よくあるのが、「〇〇がない」という状況。
知識がない、スキルがない、よって実績がなく、自信がない。

理想の状態は、これに反して、
知識がある、スキルがある、実績がある、自信がある…そんな状態。

「ない」から「ある」へ

だからこそ、研修の中で、どんな知識をインプットして、
どんなスキルを体得してもらって、
どんな経験を積んでもらい、どう自信をつけてもらうかを考えます。

ここはもう、ひたすらに妄想で、研修に与えられた時間の中で、
何をどのように仕組んでいけるかを考えます。

ただ、あれもこれもと詰め込み過ぎると、かえって逆効果。
研修を受けた受講者がお腹いっぱいで、動けなくなってしまっては、
元も子もないので、要注意です。

細かい気づきやレッスン(Tips)は沢山あれど、
それらを大きく3つの要素に仕立てると、
自然な研修プログラムになります。

「時間管理に必要なもの3つは何か?」
「後輩を育て上げるために必要な3つの要素は何か?」
「ハラスメントにならない接し方の留意点3点は何か?」
といった具合に、要素を洗い出し、その順序を考えていくと、

いよいよ研修プログラムの大枠が見えてきます。

■受講者心理を考えて、ティーチングとコーチングを使い分けていく

さて、研修に詰め込む要素が見えてきたら、
その要素をどのように受講者に伝えるか、そのスタイルを考えます。

僕は小さい頃から『世界ふしぎ発見!』が大好きなのですが、
あの番組の構成と同じようなことを研修企画の時にも意識します。

すなわち、「情報をインプットする時間・枠」と、
「クイズ形式で考えてもらってから、正解を言い伝える時間・枠」とを
うまく融合させることで、双方向の研修プログラムができます。

講師が講義・解説をして、情報を得てもらうのは、講義形式です。
ただ、人は、他人の話を一方的に聞き続けると、苦痛を味わいます。
一方的な演説は、相当な話術があっても、なかなかしんどい。

だからこそ、定期的に、クイズを挟み込むような構成にして、
「さて、ここで重要なことは何でしょう?」と考える時間を挿入します。

そうすると受講者は「何だろう?」と脳を働かせて考える。
この時に、学習や気づきを自ら得ることができるので、
実は、このワーク・グループディスカッションの機会が、とても重要です。

これは実は、指導における「ティーチング」「コーチング」の活用、
と言うこともできるのですが、
教え込んでいくのが講義(ティーチング)ならば、
考えさせるのがワーク・ディスカッション・クイズ(コーチング)です。

「私が年上部下に接する時に留意することが3点ありますが、
 さて、それは何でしょう? 2分差し上げます、考えてみてください」

こんな感じでカジュアルに質問を挟み込むと、
受講者は「何だろう? 1つは〇〇かな?」なんて考えてくださり、
この受講者が自らの脳の活性化タイムが、
研修を活性化させるのにも必要不可欠なんです。

■受講者心理を考えて、時間割を決めていく

もう1つ、私が意識しているのが、時間の使い方・進め方です。

多くの受講者にとって、研修は苦痛です。
「明日は研修だー、楽しみだー」という人は結構稀で、
ほとんどの人が「本業が忙しいのに」とか、
「先生の話を聞きに行くのは苦痛だ」とか、そんな先入観を抱いています。

だからこそ、研修開始のその瞬間から、少しでもそのイメージを
覆せるように仕掛けていきます。

いい意味で、期待を裏切りたい

例えば、講師の自己紹介。
冒頭に「私のキャリアは…」と自己紹介をする講師がいますが、
私はそれはあまり推奨していません。

受講者にとって、よほどの有名人でない限り、講師の経歴には興味がない。それなのに、冒頭15分も自己紹介をしてしまうと、受講者はこの時点で、
睡魔との闘いに巻き込まれてしまいます。

ならば逆に——。
開始後5分以内に受講者自身が自己紹介ができるような時間を設けます。「え? 今日は自分も喋るの?」と驚きながらも、
参加せざるを得ないようなアイスブレイクを入れていきます。

この時、アイスブレイクで話すネタも仕掛けます。
冒頭からネガティブな話をするのはストレスがかかるし、
ネガティブな話を聞くのも辛いもの。

だからこそ、あまり深く考えずに、フラットな姿勢で臨めて、
なおかつ、ほんの少しだけ自己開示ができるネタを用意します。

「最近、感動したことは?」とか、「最近、嬉しかったことは?」とか、
そういったネタを振ることもあれば、
「研修テーマの〇〇について、普段、工夫していることがあれば教えて?」と促すこともあります。

これはケースバイケースで、色々な策を講じます。

全員に参加意欲を高めてもらうことが大事です

1時間に1度は必ず休憩をはさむようにしたり、
昼休憩の後は睡魔との闘いが待っているので、
ワークやディスカッションの時間を多めにしたり、
受講者の心理を考えながら、時間割を作っていきます。

特に大事なのが最後の1時間です。
最後の1時間の枠を使って、何をどうまとめ上げていくかを工夫します。

この時間帯には、緊張感も解け、研修は安定飛行に入っています。
でも、だからこそ、ここにちょっとしたスパイスや
緊張感を与える要素を仕掛けておくと、
最後の最後まで研修がライブ感のあるものになります。

それを狙って、“どんでん返し”を仕組むこともあります。
1日の研修で学んでいただいたことを、まるで全否定するかのような
内容を入れ込むこともあります。

受講者は「はっ! 教わったことを鵜呑みにしちゃいけないんだ!」と
新たな視点や視座を得ることもあります。

舞台や映画を見ていて、最後の最後で、衝撃の事実が発覚するように、
研修も最後の最後までスリリングなものだと、
受講者にとって飽きの来ないプログラム、ということになります。
(毎回毎回、それができるわけではないですが、
 それでも仕掛けたくなるのが、私の性分です)

■研修の中で伝えるメッセージを探る

さて、研修プログラムや時間割を作ったら、いよいよ当日はそれを基に、
ライブ感のある研修を実施していきます。
私自身が講師を務めるならば、台本に沿って役を演じるのが、
私の当日の仕事です。

研修開始時の受講者の様子を見ながら、最後の研修企画の仕事を
内密に進めます。

それは、受講者が一番聞きたい言葉を探す仕事です。

「皆さん、おはようございます」と挨拶をしてから、ずっと、
私は前日までに企画を練ったプラン通りに司会進行を務めながら、
また別の脳を使って、受講者を観察し、
受講者が求めているメッセージを探っていきます。

そして、そのメッセージを伝えるのに、
一番適切なタイミングを模索します。

「管理職の皆さんは、勿論、部下のことを考えることも大事だけど…、
 ご自身のことも大切に考えてくださいね」とか、
「リーダーの皆さんは、孤独と闘っていることと思います」とか、
「皆さん、不安をいっぱい抱えていると思いますが、大丈夫!」とか、
そんなメッセージを探ります。

本当は、組織やチームでともに働く人に言ってもらえたらいいのだけど、
近い存在だからこそ聞けない言葉がある——。
だからこそ、研修講師として時間を共有する中で、メッセンジャーとして、
第三者の立場で伝えた方が良いであろうメッセージがあります。

それを伝えることで、研修の気づきや学びを深くしてもらえたら嬉しいな…
と思って、私はいつも当日に、この“メッセージ”を考え続けます。

研修開始時にはムスッと怖い顔をしていた管理職のおじさんも、
開始時には不安そうだった新社会人も、
うまくメッセージが伝わると、顔を真っ赤にして笑ったり、
なんとも言えない泣き笑顔で、大粒の涙を零したり、
受講者の心(感情)が動く瞬間があります。

「明日から、頑張ります」

とその一言が聞けると、その時に、「あぁ、1つ仕事が終わった!」と
私は達成感を覚えます。

100%、いつもいつもそれが実現できるわけではないけれど、
私はそんな瞬間を目指し、考え、妄想し、脳を使いながら、
日々、研修を企画・実施しています。

長くなってしまいましたが、これが私なりの研修の企画立案の方法、
研修プログラム・カリキュラムを考案する際にしていることです。

以上、研修講師の渡辺整でした。


















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