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抗コリン剤をやめると認知症の人の認知機能は上がるか?

このレビュー「Anticholinergic deprescribing interventions for reducing risk of cognitive decline or dementia in older adults with and without prior cognitive impairment」は、高齢者における認知機能の低下や認知症のリスクを軽減するための抗コリン薬の処方削減介入の効果を評価することを目的としています。このレビューは、2023年12月8日に公開されました。

  • 背景: 抗コリン薬はアセチルコリンの作用をブロックする薬剤で、高齢者に一般的に処方されます。抗コリン負荷が高いと、認知的に健康な人でも認知障害を引き起こすことがあります。抗コリン負荷を減らすための処方削減介入は、認知障害の発症を防ぐか、その進行を遅らせる可能性があります。

  • 目的: 認知的に健康な高齢者および既存の認知問題を持つ高齢者における、抗コリン薬の削減介入の有効性と安全性を評価すること。

  • 主な結果: 合計299人の参加者を含む3つの試験が含まれました。これらの試験は、認知的に健康な人と認知症を持つ人を混合した集団で実施されました。介入後の1~3ヶ月でアウトカムが評価されました。2つの試験で、介入グループにおいて抗コリン負荷が成功裏に減少しましたが、そのうちの1つでは介入群と対照群の間に認知テストのスコアに有意な差はありませんでした。もう1つの試験では、抗コリン負荷を減らすことで作業記憶のテストのパフォーマンスが向上することを示唆しましたが、他の認知測定においては効果が報告されませんでした。GRADE基準での結果の確実性は非常に低いとされています。

  • 著者の結論: 高齢者における抗コリン負荷削減介入の効果について結論を出すための証拠は不十分です。RCTからの証拠は非常に不確かであり、抗コリン特性を持つ薬剤の処方を積極的に減らすことが高齢者の認知結果を改善するかどうかを支持または反駁することはできません。また、抗コリン負荷削減介入が死亡率、生活の質、臨床的全体印象、身体機能、施設入所、転倒、心血管疾患、または神経行動結果などの他の臨床的結果を改善するというRCTからの証拠はありません。長期的なアウトカムを調査する大規模なRCTが必要です。


石原のコメント

抗コリン薬を使っている人で、せん妄などが起きやすいことはよく知られています。しかしながら、こういった研究では、環境が一人ひとり異なったり、薬剤の状況だけではない、改善、増悪因子が多数あるため、研究になりにくい部分もあります。
ただ、他の研究でも5種類以上の服薬を行っている人は、転倒する傾向が増えるという研究はありますので、引き続き新しい情報に目を向けていきたいと思います。


このレビューの詳細については、Cochrane Databaseのページをご覧ください。




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本日の写真は
guruguru8さんからお借りしました。ありがとうございます。

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石原哲郎|脳と心の石原クリニック院長
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