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認知症のわたしから、10代のあなたへ(本の紹介)

最近は、認知症の人の体験談も多く出版されています。今回、読んでみたのはさとうみきさんの著書です。さとうみきさんは、43歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断されました。

みきさんは、大学病院や電気メーカーで秘書として働いた後、結婚し出産し、専業主婦として生活していました。2018年に認知症を扱ったテレビドラマがきっかけで認知症を疑い、専門医を受診し、診断を受けました。現在は、夫と息子、2匹の犬とともに暮らし、認知症当事者同士のサポート活動や講演活動に取り組んでいます​​。

みきさんは、楽しい時に感じる悲しみや、楽しさと不安のギャップで心のバランスを保つことが苦しいと感じています。また、徐々に進行する認知症の苦しみは、本人にしか理解できないと述べています。失敗すると落ち込み、認知症の現実を改めて実感しています​​​​。
みきさんは、39歳で若年性認知症と診断された丹野智文さんとの出会いが、彼女にとって明るい道を示してくれたと述べています。この出会いが、彼女に認知症当事者としての思いを語る機会を与えたとされています​​。
これらの体験は、若年性認知症と診断された後のみきさんの日々の挑戦と感情の複雑さ、そして他の当事者との交流の重要性を示しています。

引用文献:

「若年性認知症「楽しいと死んでしまいたい時も」~私たちを知ってください(下)」, なかまぁる, https://nakamaaru.asahi.com/article/13739054, 確認日: 2023年11月25日.

これまでの経験を一冊の本にしました。

認知症のわたしから、10代のあなたへ (岩波ジュニアスタートブックス)

この中には、なかまぁるの記事の背景の詳しい状況について、診断を受ける前後のこと、そして、診断後の生活、発達障害を持つお子さんとのきずなや関わりについても述べられています。
この方は、コミュニケーション能力が非常に高い方だと思いました。そう思ったのは、このような認知症という病気について近所の人へのカミングアウトについての記載部分です。だれにでもカミングアウトしているわけではなく慎重に進めているとのこと。でも、自分の信頼のおける人には、自分の特性や発達障害をお持ちのご家族の特性についても伝えておられます。
この本は、認知症と診断された方、家族に認知症の方がいらっしゃって、近所の人にどのように伝えたらよいか迷っている人は、ぜひ読んでいただくとよいと思います。ご近所との関係性の維持の仕方などヒントになることがたくさんあると思います。

みきさんは、最後にこのように言います。

大切なことは、
「いまを生きる」
「自分らしく生きる」
「わたしはわたし」
周囲のひとと比べたり、足並みをそろえなくても大丈夫。
簡単なことのようですが、認知症である私にとっても、今でも課題であり、大切にしている言葉です。

認知症のわたしから、10代のあなたへ さとうみき 岩波ジュニアスタートブックス


わたしはわたし、と思っていても、簡単ではありません。これは認知症があってもなくても同じだと思います。先に認知症になったみきさんからの言葉は、私たちを勇気づけてくれます。認知症という病気になった体験談という枠組みで考えるよりも、自分たちがそれぞれ持っている生きづらさにどのように向き合って行ったらよいのかを指南してくれていると感じました。

「愛」の反対は、「無関心」であるという方もいます。マイペースで生活をしていく中でも、周囲のひととの関係性が維持されることは、このオンラインの社会においても、私たちが求め続けているものかもしれません。
このノートを記載している自分も、まだ見ぬだれかとのつながりを求めているのかもしれないとふと思いました。
読んでいて温かい気持ちになりました。読後感の良い本でした。






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石原哲郎|脳と心の石原クリニック院長
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