問診から導く問題解決のための3つのステップ
皆さん、こんにちは。
理学療法士の澤渡です。
前回「初回介入時の対応と問題の捉え方」という有料記事を書きましたが、今回はその中で触れることができなかった問診から導く問題解決のための3つのステップについて話を進めていこうと思います。
以前もお話した通り、私はパーソナルトレーンングを主体としたコンディショニングジムで6年間勤め、現在は都内の整形外科で治療から予防まで一貫した理学療法サービスを提供する活動をしています。(運動指導歴は10年以上あります)
そんな自分自身の経験からコンディショニングジムで提供していた時も、現在、整形外科で行うリハビリや予防医学に基づいたトレーニング指導を提供する時も対象者の入り口は異なるかもしれませんが、提供するサービスの考え方は同じだと思っています。
そのサービスの根底にある考え方は「問題解決型」であるということです。
問題解決を行うためには、ただ単に問題点を挙げることや数多くの問題点を指摘することではなく、現状を把握し、理想とのギャップを埋めるために何が必要か、そのためにはどのような手段で対処していくことが必要なのかといったスキルを身に付けることだと考えています。
特に外来を中心とした整形外科でのリハビリテーションは1回1〜2単位(20分〜40分)の限られた時間の中で行うことが多いため、問題点を見つけるための評価スキルを磨くよりも問題点を絞り込みするための聞き出す問診力がとても大切だと考えています。(下図参照)
たくさんの評価を行えば、結果的に得られる問題点もたくさん出てくるはずです。しかし、沢山の問題点を挙げれば良いかと言えば、そうとも言い切れません。
大切なことは複雑な視点でたくさんの問題点を見つけていくことではなく、どれだけシンプルに的確な問題点に辿り着けるかだと思っています。
その問題点を特定するために必要なことが問題点の「絞り込み」です。
つまり、絞り込んだ問題点を細分化し、その細分化した問題点に対して着実な対処法(打ち手)を何度も繰り返し行うことが問題解決における最善の方法だと考えています。
そのために必要な問題解決における3つのステップについて解説していきます。
問題解決の手段は共通
問題解決の手段は仕事も臨床でも同じです。例えば、親しい友人や職場の同僚などから「具合が悪いんだけど、どうしたらいい?」と相談された場合、皆さんならどのように答えますか?
これについて明確な答えがある訳ではありませんが、回答方法には大きく4つに分類されます。(上表参照)
一般的に「大丈夫?」や「辛そうだね」または「無理しないで」という回答は相手の気持ちを汲み取り、理解するためには必要な質問ですが、具合が悪い理由に対する問題解決にはつながりません。
では、どのようにすれば問題解決を導けるのかを考えていきましょう。
問題解決のための3つのステップ
問題解決を導くためには① Where(原因の所在を特定する質問) ②Why(原因を深堀りする質問)、③ How(対策をアドバイスする質問)を組み合わせて問題点を特定していくことがポイントです。
問題点を特定していく順序としては①Where→②Why→③Howの順で行っていくことで問題点をより引き出すことができます。
よく臨床では「なぜ?」を繰り返すことが求められます。しかし、そもそも「なぜ?」を考えるときは症状の原因を追求するために行うではなく、絞り込んだ問題点と症状の関連性を裏付ける時に行うことが重要です。
つまり、「なぜ?」を繰り返す時は問題点を追求することではなく、問題点の深掘りで繰り返すことでその質問の効果が発揮されます。
01|問題点を絞り込む
次に問題解決のために必要な3つのステップを活用した一例について説明していきます。
例えば、「自転車に乗ると重くて前に進みづらい」という状況が起こっているとします。
3つのステップで一番最初にすべきことは「問題点の絞り込み」です。問題点の絞り込みについてはWhere(原因の所在を特定する質問)によってどこが問題なのかを考え、問題を絞り込んんでいきます。
この例で考えていくと、「サドルの位置」や「タイヤの故障」、「ブレーキの調整不良」や「自転車を漕ぐ人の問題」などが挙げられます。
このように大まかに「どの部分に問題があるか」を絞り込むことが最初のステップになります。問題に漫然と立ち向かわないようにしないために「ここが問題だ」という合意を取り付けることがポイントです。
02|絞り込んだ問題点を深掘りする
問題点を絞り込むことができれば、次は絞り込んだ問題点に対して「深掘り」をしていきます。深掘りする方法についてはWhy(原因を探る質問)を活用して行っていきます。 (下図参照)
例えば自転車に問題があり、その問題点が「タイヤのパンク」だと絞り込むことが出来た場合、そこからさらに「パンクをしてしまった原因」について深掘りし、現在起こっている問題点と照らし合わせていきます。(下図参照)
Whyを活用していく上で、注意しなければいけない点は「思い込みによる決めつけ」にならないようにすることです。
これは、絞り込んだ問題点に対して過去に起こった事例や成功体験などから「これが原因だ」と決めつけてしまうようなケースです。
このような場合、せっかく理論的に真の原因や問題点を抽出していく過程が無意味になってしまいます。
目の前にある情報から様々な可能性を広く探りながら、絞り込んだ問題点に対する理由やその原因を追求していくことが重要なポイントです。
03|原因に対する効果的な策を打つ
Whyで深く掘り下げた原因に対して、それを解決するための具体的な対策を打っていきます。
ここではHow(効果的な打ち手を打つ)を活用していきます。
起こっている問題点に対する原因を特定できれば、その原因に対しての対策を複数考えた上で、最も効果が高く、コストがかからず、時間的にも本人の労力的にも迅速に実行できるものなどを優先的に選ぶことがポイントです。
ここで気をつけるべきポイントは深く考えずに目先の対策に飛びついてしまう思考「How思考」に陥らないようにするということです。
問題解決で一番やってはいけないこと
How思考とは簡潔に説明すると「問題解決の手順に従わずに最短で問題に対する目先の対策に飛びつくこと」を指します。
つまり、起こっている問題の絞り込みや原因の深掘り行わずに経験則に基づいた解決策の打ち手を打つことを言います。
How思考に陥りやすいケースは解決に寄与しない無駄な対策を打ってしまう場合や問題が解決しなかったときの代替案が思いつかない場合に多く見られます。
How思考に陥らないようにするために、現状の問題点がどこなのか?またその理由や考えられる要因は何なのか?を冷静に立ち止まって考えていくことが大切なポイントです。
問題解決の手順を繰り返すことが問題解決の最善の方法
企業の問題を解決する仕事はコンサルタントですが、身体の問題を解決する仕事は理学療法士を含むセラピストやトレーナーだと思っています。
ここでは自転車を漕ぐ時、上手く前に進まないという事例を交えて問題解決の3つのステップについてお話していきましたが、人間の身体に置き換えても同じような視点で考えることが重要です。
▶ どこに問題があるのか?
▶ その問題はなぜ起こっているのか?
▶ そのために効果的な打ち手は何か?
この繰り返しを実践していくことが問題解決の最善の方法だと思いますし、このような考え方に沿って評価→治療介入→再評価を繰り返していくことが重要であると思っています。
病態に対する評価法や治療介入テクニックなどに目が行きがちですが、そもそもそのような評価法や治療介入テクニックを行うためにはその問題点に辿り着くことが前提となります。
今回このような記事を書いてみましたが、私自身もまだまだこの手順に基づいて実践出来ていない事もたくさんありますし、常に実践しながらスキルを磨いて目の前の患者さんに対する問題解決の精度を高めていきたいと思っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
いただいたサポートは読者の皆さまのお役に立てられるような形で使用させていただきます。この度はサポートいただき誠にありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。