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ジムでの運動再開に伴う「感染防止対策」と「身体活動強度」の留意点について

新型コロナウイルス感染症における緊急事態宣言が全面解除され、スポーツジムやパーソナルトレーニングジムも営業再開に向けた準備が進められています。

今回は利用する側の立場や施設を運営する側の両面で営業再開に伴う「感染防止対策と身体活動の留意点についてお話していきたいと思います。

1.ジム再開で気をつけるべきことは3つ

これから運動を再開して気をつけなければならないことは大きく3つあります。1つ目は「感染予防対策」、2つ目は「ケガの予防対策」、そして3つ目は「熱中症予防対策」です。

2.感染予防対策

まず1つ目の感染予防対策については、利用者側は自分が感染し周りに移さないようにするために感染予防を徹底すること。また、施設運営側はクラスターが発生しないように都道県や業界団体が示すガイドラインに準じて感染拡大を防止する取り組みを行うことが求められます。

下に示す図はFIA(一般社団法人 日本フィットネス産業協会)が示すフィットネス関連施設における新型コロナウイルス対応ガイドラインに基づいて作成した健康チェックシートです。

有栖川GYM営業再開についてのガイドライン

上記項目に該当する方は原則として施設を利用できないような対応を行う

施設内で留意すべき感染防止対策などが記載されていますので施設運営側の立場にある方は一度ご確認ください。詳しくは下記リンクを参照。

3.ケガの予防対策について

2つ目はケガの予防対策についてです。運動は副作用のない唯一の薬とも言われていますが、副作用がないからと言ってただ単に薬(運動)の量を増やすだけではいけないと考えています。

運動をすること=カラダにとっては良いことですが、一方で運動をすることは何もしないよりも傷害のリスクが高くなるという認識を持つことが重要です。

特にジム再開に伴い、多くの利用者が急激に身体活動量を増やしてしまうことでケガのリスクが高まることが予測されます。そこで、ACSM(アメリカスポーツ医学会)の運動実施前の健康スクリーニング・アルゴリズムに基づき、ジム再開に伴う健康スクリーニング・アルゴリズムを作成しました。

ジム再開に向けた運動前のスクリーニング

今回なぜ、ACSMからこのアルゴリズムを引用させていただいたかというと、新型コロナウイルスの感染者の重症化するリスクファクターと共通項があると考えたからです。

最近になって今回の新型ウイルスは心血管系に影響を及ぼすとの報告がされているようですが、適切な運動を行えば免疫力を高めることはもちろん、万が一感染してしまった場合でも重篤化するリスクも防げるかもしれません。

運動によるケガや事故を避けるために、また適切な身体活動に基づいて運動を行い、段階的に運動量を増やしながた運動を安全に行うためには、自らがリスク判定を行うことは非常に重要です。

一方、施設運営側や運動指導者は利用者のリスクを把握することで、適切な運動処方の提案をできることはもちろん、施設内に感染者が確認された場合、高リスクの利用者に対しての連絡、新型コロナウイルス感染症のPCR検査の実施などを保健所などに相談など迅速に対応を行うことができます。

4.健康スクリーニング・アルゴリズムで高リスク・中等度リスクの場合

健康スクリーニング・アルゴリズムによって「高リスク」または「中等度リスク」に該当された方は、運動を始める(または再開する)前にかかりつけ医に健康状態の医学的な確認(運動を行うことの許可)を得ることが推奨されています。

高齢者の場合、多くの方が「高リスク」や「中等度リスク」に該当すること予測されます。結果的に、医師に過剰な相談を生み出さないように、

(1)現在の活動レベル(自粛期間中も定期的な運動をしていたか)

(2)心血管系、代謝性、腎疾患およびそれを疑わせる症状や兆候の有無

(3)利用者が希望する運動強度(例えば中等度以上を希望する場合)

など、これらの項目を総合的に判断し、医学的な相談を勧めるか否かを運動指導者が判断することとしています。

5.運動強度について

運動強度については健康スクリーニング・アルゴリズムの結果に関わらず、段階的に活動量を増やしていくことが必要です。

NSCA(National Strength & Conditioning Asociation)はアスリートのための安全なトレーニング再開に関するガイドラインとして「50/30/20/10ルール」を提唱しています。このルールは活動休止前の運動負荷量を100%とした場合、1週目を50%減の負荷、2週目を30%減、3週目を20%減、4週目を10%減にして週のトレーニング量を均一しながら段階的に運動負荷量を増加させ無理なくパフォーマンスを向上させようとするものです。

こちらについてはストレングス&コンディショニング(S&C)コーチの池田克也さん(@WPC_ikeda)が作成した資料がとても分かりやすいので参照ください。

下の表は推定の1RM(正しいフォームで1回だけ挙げることができる最大重量のこと)の目安を示したものです。1RMに対して50%の負荷量を参考にするとすれば、1回30〜40回くらいできる挙上量ということになります。

また、目的に応じた運動強度(下の表を参照)に置き換えればストレッチやコンディショニングエクササイズなどもおおよそ50%の負荷量に相当することから、ジムで運動を再開される際はまずそのような軽運動からはじめてみることが良いのかもしれません。

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しかしながら、全ての利用者がジムでトレーニングをするとは限りません。パーソナルトレーニングなどでは負荷量を設定し段階的に運動強度を進めていくことができますが、スポーツジムなど不特定多数の利用する環境では一人ひとりに負荷設定を提案することは限界があります。

そこで、身体活動量を客観的に知る指標となるのが「心拍数を用いたトレーニング法」です。心拍数を目安に目標とする運動強度から逸脱することなく適切に運動を進めることができます。

6.心拍数を用いたトレーニング方法について

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上の表はACSMの運動処方の指針にある身体活動強度を基に作成したものになります。

本来ならば、持久力の指標としては最大酸素摂取量(VO2max)を測定することが望ましいですが、医療機関や研究機関等で専用の機器を用いて測定しなければ測定することは出来ないため現実的ではありません。

そこで、心拍数と酸素摂取量の関係を利用して心拍数によって目標とする運動強度の設定する方法がカルボーネン法を用いたものになります。

目標とする運動強度を計算する場合、予備心拍数:Heart Rate Reserve : HRRを求める必要があります。予備心拍数の求め方を以下に示します。

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予備心拍数が分かれば、次に目標とする運動強度を計算します。

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目標心拍数の求め方については以下の通りです。Excel で計算式を入れたデータを用意しました。ご自身の運動強度の設定やご利用者様の運動指導にご活用ください。

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ただし、β遮断薬や利尿薬などを服用している場合などは運動に対する心拍変動が抑制されたり、最大運動耐容能が増減し、正確な目標心拍数を指標にすることが出来ない可能性があります。

その場合、症状を確認しながらRPE(自覚的運動強度)を用いながら目標心拍数を決めることが必要です。

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年齢を重ねると最大心拍数は少なくなるため実際の推定強度は誤差がありますが概ね最大酸素摂取量に合わせて示しています。

いずれにしても主観的運動強度(RPE)で目標心拍数を把握する場合は軽度はかなり楽(RPE:9)〜楽(RPE:11)、中等度は楽(RPE:11)〜ややきつい(RPE:13)の範囲の運動を行いましょう。

7.熱中症予防対策について

3つめ目の熱中症対策については、新型コロナウイルスはまだ完全に収束した訳ではなく、政府は新しい生活様式(新型ウイルスと共に生活していくこと)を掲げています。

この新しい生活様式では、「身体的距離の確保」「マスクの着用」「手洗い」、そして「3密(密集、密接、密閉)」を避ける等の対策を取り入れた生活様式を実践することとしています。

当然、運動施設側も飛沫感染を防ぐために原則マスクを着用して運動を行うことを求められます。しかし、マスクを着用しての運動は温まった空気がこもって体の外に出せず、体に熱がこもりがちになります。そのため熱中症のリスクが高まることが予測されます。

よって、思っている以上に決して無理せず、運動負荷量を下げて運動を開始する。または、こまめに水分補給を行うように行うこと。人との距離を十分に取れる場合はマスクの着用を外せるような環境を作ることが必要です。

おわりに

以上、ジムでの運動再開に伴う「感染防止対策」と「身体活動強度」の留意点についてお話させていただきました。ここで伝えたいことは、感染拡大防止のために予防することは重要、しかし安全でケガなく運動を再開することも重要だということです。

そして感染者が仮に出てしまった際に、迅速な対応ができることかと思います。今回は、私自身もジム再開のためにお客様が安全に利用していただけるように自分のインプットやアウトプットを兼ねて記事にさせていただきました。

少しでもご参考になれば幸いです。最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

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澤渡 知宏|理学療法士
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