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20代の私がなぜレコードで聴くのか。

若者にとってレコードとは「新しいメディア」

昨今、レコードブームと言われて久しい。私も、例にもれず、音楽を聴くときの主な音源はレコード(Vinyl)である。レコードを買い始めたのは、数年前の高校時代。レコード・ディガーとしては、まだまだ新参者だ。
私の育った家庭では、子供の頃には既にレコードなんか存在しなかった。あったのは、CDとMDとデジタル機器のみ。レコードは、祖母の家の押し入れの中に放置されていた。だから、自分で初めてレコードを買った時に、初めてレコードというメディアに触れた。

私にとってレコードは「新しいメディア」だった。
レコード自体は、数十年前に実用化され、長年音楽ソースとして一時代を築いてきた。しかし、私の世代の一般家庭には、もう既に影もなかった。つまり、私はレコードを、これまで触れたことの無い「初めて」の「新しい」モノとして接したのだ。そう考えると、私とって、そして同世代の多くは「新しいメディア」として、レコードに触れたのだ。
今思えば、私の世代の子供の頃は、テレビはブラウン管だったし、ビデオデッキはVHSだったし、ビデオカメラはHi8だった。朝起きて、居間に行くと、独特のキーンというモスキート音が聞こえた。そんな頃もあったのだ。いつの間にか、テレビは薄くなり、ビデオも巻き戻す必要がなくなった。ゲーム機も、カセットからデータになった。音楽も、CD・MD・mp3からストリーミングになった。そんな移ろいを見てきたのが、今の20代なのだ。

なぜ私はレコードで聴くのか=禁断の問い?

先述したように、時代が変わっていくにつれて、沢山の新技術が生まれ、より少ないコストで音楽を楽しめるようになった。ストリーミングサービスは、だいたいランチ代程度でサービスを受けられる。
しかし、私は、それでも主な音楽ソースをレコードにしている。好きな音楽ほど、レコードで聴くようにしている。
レコード・CD・テープ・データ(DSDやハイレゾも含む)など、現代は選択肢はたくさんある。もちろん、それぞれにマニアの方々がいらっしゃる。それはとても素晴らしいことだと思う。でも私は、レコードが好きだ。

おそらく、”レコードで聴かない”人間にとっては、「なんで今更レコード?」という共通の根底意識があるのだろう。確かに、その気持ちは分からなくもない。私も過去にはハイレゾやヘッドフォン・オーディオに凝ったこともあった。
そんな私だが、もう既に自分の中での着地点がある。20代の若者ごときがバカバカしいと言われるかもしれないが、何も考えないよりかはマシだと思う。どんなことであれ、「拘ること」って素敵だと思のネ。

その着地点とは、「体験としての質」である。
私は、己のレコード趣味の根本的な価値は、そこに見出した。音楽は、今の時代は、如何様にも楽しむことができる。だから、「音楽好きならばレコードで聴かなくてはならない」という圧力は、不当なものだ。
私は、いろいろと試した上で、レコードというメディアでの音楽の消費が最も自分にとって「質」の高い「体験」を得ることができると確信した。だから、私は自信をもって「レコードが好き」だと言うことができる。
だから、人によっては「体験としての質」を考慮した結果、ストリーミングが孤高であるいう人もいるだろう。それについて私があれこれ口出しすることは、「体験としての質」の議論以前に、私の「人間としての質」が問われる。とにかく、人それぞれであるが、「自分は~」という視点でしっかり吟味して音楽を楽しむべきだと思う。それは、音楽にしっかりと向き合うということであり、金銭的コストの他にも労力や経験・知識が求められることだ。流れ来たものをただ聞いているというのは、私にとっては、「音楽を聴くこと」ではなく、「音楽を聴くフリをして自己陶酔に浸っていること」である。ひとことで表すならば、「音楽を聴くことは案外脳ミソを使うよ」ですかネ。
時々、「まぁ人それぞれ好みがあるから」のように諭されることがあるが、それはどうかと思う。「好み」に関係に無く、物事にはある程度の「質」という概念が纏わりついてくると思う。(どう考え、何を以って客観的であると判断するかは、私も良く分からないが。笑)

近年の「レコード化」の波

こちらをお読みの皆さまでしたら、すぐに頷いていただけるかと思いますが、近年は本当に「レコード化」の波が押し寄せています。(波はいずれ引きます。)
「レコード化」というのは、元々はCDやデータで販売されていたものを、レコードとして販売するというものです。(アナログ・レコードという表現は避けています。デジタル・CDとは言いませんからね。)
そもそも円盤化されていないモノさえも、片っ端からレコードにしていく勢いです。見方によれば少々無理やりなとも言いうるその波に、私は違和感を感じます。”最新リマスターでのリイシュー”とかいう売り文句が多いです。今は、「リマスター」しとけばそれなりに商品としてはやっていける=買う人がいるから、そのようなものを企画するのでしょう。私は、「リマスター」が最高とは考えません。良い結果をもたらす場合もあれば、悪い結果をもたらす場合もあるからです。そもそも、「リマスター」というのは、オリジナルに手を加える行為です。つまり、「リマスター盤」とは、オリジナル・ホンモノの音を得ることができない盤です。そこをどう考えるかは、消費者一人一人の価値観に依存するところでしょう。私は、先述の通り「体験としての質」を優先し、「本物」に触れたい、所有したいので、できるだけ「オリジナル盤」を買うようにしています。ですが、貧乏大学生が片っ端からオリジナル盤を集めるなんて、結構キビしい話です。でも、今のうちから、少しずつではありますがオリジナル盤収集に勤しんでいます。

ここで2枚ほど、「レコード化」の波でレコードになったアルバムをご紹介。

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1.あっぷるぱい『あっぷるぱい』(2014)

こちらは、2012年にCDで出ましたが、2014年にLPになり、2018年に7インチでシングルも出ました。このアルバムは、デジタル音源とレコード音源で全曲ミックスが違うそうで、個人的にはレコード盤の方が生々しさがある音だと感じます。
「2010年代にシュガーベイブかぁ」と舌を巻いて楽しませていただきました。
ギター弾きとしても、始終ニヤニヤして聴いていました。なにせ、コンプ大好き人間にとって天国の様なサウンドですから。Rolland AS-1やBOSS CS-1当たりの音じゃないかと推測します。(いわゆるオプトコンプ)
このアルバムのレコード化は、良い企画だと思います。製作陣のセンスに脱帽です。

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2.microstar『She Got The Blues』(2017)

こちらは、microstarの2016年のセカンド・アルバムをレコード化したもの。VIVID SOUNDのレコードは、いつも面白い。脇田もなりさんとか星野みちるさんとか、シングル何枚も買いました。このアルバムも、VIVID SOUNDから出ました。至る所に、元ネタへのリスペクトがある素晴らしい作品。友人と試聴会をやっていると、microstarの評判はすごく良いです。友人と私の共通の見解として、「ファーストよりセカンドの方が良い」と珍しく意見が合致しましたネ。

おわりに

今回は、「20代の私がなぜレコードで聴くのか。」というモヤモヤについて考えてみました。
レコードは扱いも癖があるし、ノイズも気になる。でも、それは私のちょっとした工夫で、何の問題もない程度になります。なんだかんだ言って、やっぱり「好きだから」でいいのかな?(結局そこか?笑)

今回もお付き合いありがとうございました。
またよろしくお願いします。

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