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さようならドラえもん

大掃除が始まった。
特に五歳息子が遊んできたおもちゃ。
最近は押し入れから溢れリビングをも支配していた。
処分して、そこに新たな誕生日プレゼント=ソファを置くという本気。

――思い出たちは捨てられないよ。
昨年は私の一言に泣いてしまい、捨てるに捨てられなくなった。
今年は妻から「立ち会い禁止」を命じられる。
息子も自分一人で「いる、いらない」を判断するらしい。

廊下にゴミ袋が置いてある。
中に縁日で買ってやったドラえもんのお面が入っていた。
……確か700円もしたはず。
妻の目を盗み息子に声を掛けた。
――のび太君、僕どこに行くの?
のぶ代になってしまうのはご愛敬。
気が付いた息子が「それはもう捨てるんだよ」と言い、「全然使ってないから」とぴしゃり。
――バイバイ、のび太くん。

妻が顔を出しキィと怖い顔をする。
小声で「結構高かったんだよ」と言うと、
「ばあばが買ってくれたやつでしょう」と記憶を訂正され、
私もいよいよだなと思った。


押入れの空間ひろく冬灯

(おしいれのくうかんひろくふゆともし)

季語(三冬): 冬の灯、冬灯、寒灯


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