本好きたちの夜会
夜、自室で本を読んでいると、四歳息子が来て本棚を物色し始める。まだ寝たくないときにとる行動。
「これ何の本?」
「それはニール・サイモンっていうお芝居のホンだよ」
「おもしろいの?」
「笑わせる話だからね」
「読んでみて」
いやいや。ここで二時間ホン読みするわけにはいかないし、読んだところで彼はまだ笑えないだろう。ただ無下に断って本嫌いにもしたくない。
「今読むと、眠れなくなっちゃう」
含んだ言い方で書棚にしまう。
と、今度は一番分厚い本(6cm)を抱えるように取り出した。
「これは?」
「『現代日本ラジオドラマ集成』。昔のシナリオ集だよ」
言ってるうちから落としそうになる。やめて貴重なんだから。
「読んで」
無理だ。音読したら二日はかかる。
と、寝室からしびれを切らしたママが叫ぶ。
「あと10で来ないと絵本なし!」
聞くや「はぁ……もう行かなくちゃ」と言って去っていく。
これはまたいつもの光景。
[今日の十七音]
春灯に部厚な本と小さい手
(しゅんとうにぶあつなほんとちいさいて)
【季語(春): 春灯、春の灯、春ともし】