表現の自由研究「色」
どうも、プロレスとか役者さんポートレートを撮っているたかはしです。
青葉若葉の候、みなさまにおかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
私は家計が赤字でおりまして、しかし仕事が溜まり顔面蒼白。
だがしかしこの目が黒いうちは倒れまいと、そして黄色い嘴を笑われぬよう、精いっぱい生きております。
…と、無理やり色が入った慣用句でご挨拶をしたところで。
今回の大人の自由研究テーマは「色」です。
冒頭からではありますが、今回のテーマは勉強を放棄しました。
なぜなら大学の頃に専門分野の一部として関わっており、その広大な未知の領域について分かっているからです。
ちなみに私の専門は認知科学ですので、神経細胞の働きから色の知覚まで、あとは研究室のメンバーが取り組んでいたユニバーサルカラーの分野についての知識はありますが1本の記事ではまとまり切らないので以下省略。
そして5月中に多忙をきわめており、文献の量を確保できなかったこともあり。
なので今回はさらっと知識をベースに、写真における色とその表現について書いてみようと思います。
前回記事はこちら。
ハブ記事はこちら。
1.色の知覚と色の3要素
みなさんは色をどうやって認識していますか?
説明出来たらすごいです。ヤバい。
ほんとうっっっすいレベルでお話ししますと。
まず可視光線が瞳から入り、網膜に到達します。
網膜上にある錐体細胞と呼ばれる3種類の細胞が、
それぞれ対応した周波数帯の可視光を受光し、電気信号へと変換します。
その後、視覚野と呼ばれる神経系のうち視覚情報を処理する神経、
その中のV1と呼ばれる視覚野で「明るさの対比」「補色の対比」を、
全体のぼんやりとした認識から一部の詳細な認識まで多層的に行います。
…(以下略)
はい。
まだこれでも眼球から一歩踏み出しただけです。
視覚野はV5までありますからね。
興味ある方はWikipediaで見てみるといいかと思います。
また過去に「ヒトはどこに視線を向けるのか」というタイトルで視覚野V1での処理について書いたので、参考までに。
難しい話はしても仕方ないので、すごく分かりやすいモデルでお話しします。
色を説明するとき、「顕色系」と「混色系」とで大別できます。
顕色系は色見本。
混色系は数値で混ぜる。
そんなイメージ。
中でも、個人的に分かりやすいと思っているのが、混色系の「HSV色空間」です。
Hue(色相)、Saturation(彩度)、Value(明度)の3つのパラメータで表されます。
色相は「どんな色味か」を表します。赤とか青とか。
彩度は説明が難しい…けど、無彩色(白)か鮮やか(その色)かの指標です。
明度はまんま明るさで、暗いか明るいか。暗いと黒に近づくし、明るいと白に近づきます。
何が言いたいかというと、色は3つの要素で説明できます。
色相、彩度、明度。
何よりHSV色空間は人間の知覚に近いので、すごくイメージしやすい。
RGBよりも「そのパラメータを変更したらどう変わるか」が分かりやすい。
2.色の表現:日本の色と好きな色
色をどう説明しようかと悩んでいたのですが、素敵なサイトに巡り合ったのでご紹介。
このサイト、無限に時間が溶けます。
日本では黒、白、赤、青しか区別が無いという話がありますが、これは色そのものを指す言葉がないだけです。
古来より、自然界のものの名前を借りて、色を命名してきたのです。
先ほどは混色系で話をしましたが、ここでは顕色系でのお話を。
私自身、写真だったり文章だったりで色の表現をする人間ですので、こういった伝統ある表現ができたらなと。
ここでは私の好きな色をラインナップ。
〇薄浅葱
浅葱色よりも薄く、水色よりも緑が混ざっているような。
どこか複雑な内面を投影している感じがして好き。
〇縹色
藍色よりも薄い青。
空の色、とくに心象的な空を映したいときは縹色を目指します。
〇翠色
鮮やかな緑。
ちょっとワザとらしくなりはしますが、木々を翠にすると映えるのです。
〇若草色
奈良にある若草山の色が好きという単純なイメージ。
新しい、初々しい、わくわくするといった印象を持つのでよく使います。
〇菜の花色
春の黄色と言って真っ先に思い浮かべるのが菜の花。
主張が強いので扱いが難しかったりしますが、空との調和がとれると心地よいです。
〇乙女色
乙女椿の色が好きで。というより椿全般が好き。
赤系でありながらやさしく、ふくよかなイメージを出せるのがいい。
〇紅葉色
紅葉シーズンが一番わくわくする暑がりさんなので。
〇深紅
椿や薔薇のイメージ。
もしくは口紅がこの色だと撮りたい欲2倍になる、単なる好み。
〇京紫
主張しすぎず、それでいて強かな。
妖艶でありながら落ち着きがある、みたいな二面性が好きです。
〇紅桔梗
桔梗の色に惹かれるヒューマンです。
赤が好きなので、青紫より赤紫派。
私の暖色好きが露呈しますね。
どの色も美しいですし、その命名の由来なんかを知ることで、より深みをもって表現できるのかもしれないと思っています。
そして実は。
私が撮っている方々に関連する色をチョイスしております。
3.イメージカラーと写真
ここからは表現の話。
役者さんの中には、イメージカラーをお持ちの方がいます。
あとは私が一方的に思っているイメージカラーもあったり。
例えば。
色には、色そのものを指す語もあれば、物から名前を借りたものもあります。
いずれにしても、色という抽象的な対象を具体化させるための手法でした。
一方のイメージカラーはその逆です。
容姿やプロフィールといった具体的な本人の情報を、色という概念に抽象化させています。
どういうことかといえば、同じイメージカラーの人であれば、だいたい同系統のキャラクターであると想像できる。
戦隊ヒーローが最たる例でしょうか。
写真に落とし込むことを考えると、抽象化する単語が多いことはいいことです。
写実的であると同時に、時系列や音声が削ぎ落された、いわば抽象的な表現なので。
イメージカラーがあることで、「このロケーションならこの人」みたいな想像をしながらロケハンができますし。
そして私はロケーションだけではなく、光の取り入れ方や、レタッチの仕上げ方まで、すべての工程においてイメージカラーを意識します。
そうすることで、モデルさんにも仕上がりのイメージを抱いてもらいやすいですし、相手への理解を示すことにも繋がります。
4.より抽象的に:印象派
現在、次月執筆予定の「絵画」に向けた参考文献を読んでおります。
なかでも印象派に焦点を当てようと思い、いろいろ見ています。
写真撮りとして私が気になっている絵が、モネの「散歩、日傘をさす女」。
浅はかなイメージではありますが、印象派の絵画は色で心象を表現しようという試みに思っています。
中でもこの1枚は、私が撮りたい画角と色使い、光の捉え方をしています。
影の付き方というか、光の回り方によって人物像を描いている様も好きです。
印象派ならではの筆遣いは写真で表現できない領域です。
一方、空のグラデーションや足元の花から季節感を味わえる、そんな色使いは写真でもできることです。
何より絵画全体から、その人物像を推し量れるというか、妻を愛しているモネの心象まで読み取れるような、深みがあるところがいい。。。
あまり語りすぎると次回書くことが無くなるので、このへんで。
絵画の歴史の一部には色の歴史もあるので、取り入れるべき点は豊富にあります。
そんな話を次回に。
5.感想
意図的にボヤっとしたテーマを設定したので、とりとめのない話ばかりになってしまいました。
しかし予備知識はそれなりにあるので、話すトピックスは散逸している状態。
逆に”何を書かないか”で頭を悩ませた回でした。
何より参考文献が軒並み高額…
欲しかった本は1万円を超えておりまして。
なので専門知識をひけらかすというよりは、「こんな色を表現したい」といった軸で構成を組みました。
特に縹色や浅葱色は、現在どう写真に落とし込もうか検討を進めている段階です。
顕色系なので具体的な数値を定められているわけですが、無理やりその色に変えても違和感が残ってしまうので…難しい。
そしてこの記事を書いていると、色見本が欲しいなと思えてきました。
モデルさんが出したいと思っている色と、自分がレタッチで仕上げる色とで意見を一致させられるツールとして。
うまいこと伝統力のいろはさんを使い倒したいものだなと。
さて、次回は「絵画」です。
カメラの歴史をたどる上で、絵画の歴史を紐解かない訳にはいきません。
なぜなら地続きだから。
その辺をじっくり掘って行けたらなと思います。
6.参考文献
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