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ハービー・山口氏「良い写真とは?」を読んだら1年考えたことに自信が持てた

どうも、プロレスとか役者さんポートレートを撮っているたかはしです。

人を撮る上でのヒントが欲しくて、ハービー・山口氏の著書を読みました。

先日、1年間書いてきた記事から、自分にとってのいい写真について考えてみました。
今回はハービー氏のことばを借りて、色々考えを巡らせてみたいと思います。
前回の記事はこちら。

人格

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信じられる写真。人間には人格が備わっているように、写真にも人格や品があります。あの人は信用出来ない、あの人は信用出来る、などの人格が写真にもあるのだと思います。

ハービー・山口(2021) 良い写真とは? 撮る人が心に刻む108のことば p.22

モデルさんとの関係性については、『「技術への評価=人間性の評価」とは成りえないって』や『写真を撮るために対話する』、『ポートレートに必要な3つの”た”』などで書いてきました。

人に時間を頂いている以上、損だったと感じられるような技術力ではいけません。
しかし、必ずしもプロレベルである必要はないです。
最低限の技術があった上で求められるのは、信頼だと思っています。

データの受け渡しを必要以上に遅らせない、ポージングや構図の押し付けをしない、不快感を抱かせる言葉を避ける。
そんな基礎的なやりとりの積み重ねあってこそのポートレートだという考えで1年やってきたので、その姿勢が写真にも表れてたらなと。。。

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ポートレイトの場合、被写体と撮影者との関係性が見えてくる写真。つまりその撮影者にしか見せない表情をとらえた写真。言い替えれば、その撮影者にしか見えない表情をとらえた写真。

ハービー・山口(2021) 良い写真とは? 撮る人が心に刻む108のことば p.28

これには儚い憧れを抱いたエピソードがありまして。
大きなトラブルに見舞われて傷ついたメンタルを癒そうと箱根に行ったときの話。
登山電車で山道を登っていたところ、正面の席に男女が仲睦まじく会話していました。
すると男性が窓の外から景色を見始めまして、女性も同じようにしてるかな…と思いきや。
男性の顔をじーーーーっと見て恍惚の表情を浮かべているのです。
その時の表情と言ったら…私がモデルさんに望んでも出せるものではないと思わされると同時に、写真として収めたい瞬間でもありました。

さて。
その撮影者にしか見せない表情、というのは私が苦手としている分野。
撮影者の姿を想像させたくない、その世界に生きる登場人物を見てほしい、そんなスタンスですので、表情が克明に分かるショットが少ないです。

それでも『私は、見えた様にしか撮れないけど、関係性は写せる』で触れたように、相手との信頼関係があって成立する表情は求めたいと思っています。
例えば撮影で目いっぱい笑った上で撮るとか、好みの雰囲気に近しいショットをドンピシャしたりとか、そんな積み重ねで出る表情は私にしか撮れないのかな?と考えさせられました。

スタンス

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写真家のセンスとは、まず被写体にどれだけの物語性を見つけ感じとれるかだ。

ハービー・山口(2021) 良い写真とは? 撮る人が心に刻む108のことば p.85

もうこれは『「風景に人物を足す」というポートレートの考え方』で述べたように、私がポートレートで目指したいスタンスそのもの。
しかし「センス」と表現されていて…私は自分のセンスのなさを今現在嘆いている状態でして、なかなか痛い言葉と受け取ってしましました。

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街で見かける素敵な被写体は、みんな優れた出演者だ。撮影とは演劇で言えば、被写体を舞台のどこに配置し、どんな照明を当て、どう観客に見せるのかということだ。写真家は優れた舞台演出家と似ている。

ハービー・山口(2021) 良い写真とは? 撮る人が心に刻む108のことば p.138

これも自分の考えと一致したものです。
「演劇の撮影マヂむずい」と思ったこと3つ』で、演劇のブロマイドに関して

事前に台本をもらって読み込んだ上で、その役者さんが持つキャラクター像・演出家さんが付けた演出を引き出して、1枚画で見る人にイメージが伝わるような写真にしなきゃならないわけです。
演出家さんが演劇に対して演出を付けるのならば、カメラマンは写真の上で演出を付ける役回りが必要になります。

拙著 「演劇の撮影マヂむずい」と思ったこと3つ|6時間ぶっ続け撮影術(力技)

と述べました。
ブロマイドは購入者の手元に行くわけで、ブロマイドには「物語の世界、キャラクターの像を伝える」という機能が求められます。
そうなると、被写体の振る舞いや環境をコントロールし表現するのは、演出家と同じ役割だと思っています。

気持ち

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この写真を見たら生きる力が湧いてきたなんて評価されたら、それは最高じゃないですか!

ハービー・山口(2021) 良い写真とは? 撮る人が心に刻む108のことば p.96

私は都合上、撮られなれていない人を撮ることが多いです。
表情も、ポージングも、いろいろ不慣れな状態からスタートします。

だもんで初めての体験を多くしていただくわけですが、モデルさんに「撮ってもらうようになって変わった」と言ってもらう機会に何度か恵まれました。
「自分の見せ方を知れた」「表現の幅が広がった」「新しい表現に出会えた」などなど。
そんな言葉が貰えるときというのは、私の薄っぺらな自尊心を救ってもらえる瞬間であり、撮っててよかったなと思える瞬間なのです。

被写体には喜んでもらっていると思っていますが、いざ写真を見た人に生きる力を沸かせるような力があるかというと疑問符なのです。
ひたすら壁打ちしているようで…
いつか感想をもらえるような写真を撮りたいのです。

読み終えて

今回は特に共感できたものを取り上げました。
一冊読んでみた感想としては、共感できるものと、ハービー氏の体験談から写真の抽象化を進めるもの、とで認識しました。

ものすごくハッとさせられる言葉に出会えなかったなと思ったのですが、ある意味自分のスタンスが確立されてきた、もしくは凝り固まったなと。
悩んでいろいろインプットをしてきましたが、その分「どこかで見たな」が増えてきているので、情報に対しての掘り下げで新しい発見をしないとダメかなと思わされました。

読み終えたうえで写真展にも足を運んで、その言葉が表現された世界も見てきました。
写真から言葉を紡いで、言葉を写真に閉じ込めて。
そんな循環を回せるからこそ切り取れる人物写真というものがあるなと。
私もそんな風に感じてもらえる写真を撮れるように。。。
そしてそんな写真がいい写真と言えるな、と。

もし本に興味を持っていただけたらお買い求めいただければと思います。

それでは。

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たかはしあさぎ
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