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『名作ミステリで学ぶ英文読解』刊行

『名作ミステリで学ぶ英文読解』が刊行されました。早川書房がハヤカワ新書を創刊するにあたって、最初のラインナップ5作のひとつとして(しかも、その001番として)選んでもらえたことをうれしく思います。
 この本は、海外ミステリの名作を題材として、6つの作品から6か所ずつの英文を選び、訳文や注釈とともに5問前後の設問と解説をつけたものです。
 題材としたのは以下の6作品です。

『Yの悲劇』
『エジプト十字架の秘密』
『災厄の町』(以上、エラリイ・クイーン)
『アクロイド殺し』
『パディントン発4時50分』(以上、アガサ・クリスティー)
『恐怖の谷』(コナン・ドイル)

 目次の一部をお見せします。

 上の画像を見ていただければわかるとおり、各章の最後の問題([6])はネタバレの個所を扱っています。ミステリ作品は精緻な読解力をつける題材として最適ですが、そのためにはどうしても重大な真相に言及せざるをえないので、このような構成にしました。逆に、それぞれの作品を未読の人が、これを機に作品をまず読んでみようという気になっていただけるのなら、海外ミステリの翻訳者として何よりうれしいことだと思っています。
 英文の解説だけでは堅苦しいので、随所に作品や作者にまつわる「こぼれ話」を入れてあります。英語があまり得意ではないけれど海外ミステリに興味がある人などは、「こぼれ話」を読んでもらうだけでもじゅうぶん楽しめます(一部はネタバレのゾーンにあります)。
 わたしは長くエラリイ(エラリー)・クイーンの翻訳を手がけてきたので、クイーン関係については書く題材に事足りませんでしたが、クリスティーとドイルについてはそれほどでもなかったので、そこを補強してもらうために、クリスティーについては書評家の大矢博子さんに、ドイルについては翻訳家の駒月雅子さんにお願いして、それぞれの作家についての特別コラムを書いてもらいました。どちらも読み応えのあるすばらしい文章です。
 クイーンについては、これまでの訳出作業で飯城勇三さんにアドバイスをいただいたことが数えきれないほどあり、今回の本にも隅々までそれが反映されています。まずはそのお三方と、ネタバレゾーンを分けるという特殊な構成の本を作ってくださった早川書房のみなさんにこの場を借りてお礼を申しあげます。

 この『名作ミステリで学ぶ英文読解』は、通常版とNFT電子書籍付版の両方が同時刊行されました。NFT電子書籍付版のほうが400円余り高いのですが、これは通常の紙の本に加えて、同内容の電子版を読むことができ、さらに今回の特典として、飯城勇三さんとの特別対談「エラリイ・クイーン 翻訳の極意」を読むことができます。これまでの新訳で突きあたったさまざまな問題や、それをどう切り抜けてきたかなどを、飯城さんがていねいに洗い出してくださいました。紙で言えば30ページ程度に相当する充実した対談です。よかったらNFT電子書籍付版の購入もご検討ください。
 ハヤカワ新書が出版業界ではじめて導入するNFT電子書籍付版の仕組みについては、早川書房の note 記事と、そこにある Fantop の動画解説を参考になさってください。

【未知への扉をひらく】早川書房の新レーベル「ハヤカワ新書」創刊ラインナップ全5作品の「NFT電子書籍付」を同時発売!【世界初】

 ほかにも、早川書房の note には『名作ミステリで学ぶ英文読解』に関する記事が多くあります。ぜひそちらも読んでください。

新書創刊の舞台裏:英語学習の近道はミステリ小説の中にある?『名作ミステリで学ぶ英文読解』担当編集者が語る

【明日発売!】ハヤカワ新書6月刊のラインナップを再度ご紹介&著者メッセージ【ハヤカワ新書創刊】

 この本の刊行を記念して、翻訳家の河野万里子さんをゲストにお招きしたトークイベントが6月30日の夜にあります。ぜひご参加ください。詳細については以下をご覧ください。

ハヤカワ新書創刊記念 越前敏弥さん「名作ミステリで学ぶ英文読解」トークイベント@ジュンク堂池袋本店+オンライン【6月30日(金)開催】

 このほか、まだ詳細は非公開ですが、7月29日(土)の午後にもトークイベントを予定しています。


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