「スピード」ではなく、「速度」を意識しているだろうか?
(沖縄南城市のカフェから見下ろす東シナ海方面:2022年9月撮影)
たとえそれが出張であっても、「旅」をすると様々な出会いがあります。
新しい何かとの「出会い」。
景色、町並み、音、香り、味....草木、花々、鳥。
人、見方、感じ方、考え方...
そんな出会いの中に「ことば」もあります。
沖縄に仕事で初めて関わるようになったのは2001年。それから何回、訪れたのでしょうか。
それでも、毎回、何か新しい出会いがあるのです。
「よんな〜よんな〜」
そんな中で出会った沖縄の方言です。
「よんな〜」=ゆっくり
という意味の言葉です。
うちなーのnoteクリエーター玉城久美子さんがエッセイの中で紹介してくださっています。
東京生まれの東京育ちの私には、言葉の意味を豊かな文化も含めて肌感覚でこの言葉を捉えることができるとは思えません。
でも出会った「よんな〜よんな〜」という言葉を起点として、「速度」について考えましょう。
そもそも「速度」って?
「速度」のことを、普段「スピード(Speed)」って言ってませんか?
間違いではありませんが、物理学用語の「速度」を英語では「Speed」とは言いません。
「速度」は「Velocity」と言います。
「単位時間あたりの物体の位置の変化量」です。
「な〜んだ、同じ事じゃない!」って声が聞こえてきそうです。
確かにそうなのですが、英語でスピードといってしまうと、何かが速く動いているイメージだけが先行してしまうように思うのです。
ちなみに「スピード(Speed)」は、の日本語では「速さ」ですから、やはり違うのです。
何が違うのでしょう?
「スピード」とは「速度」の「大きさ」だけを表すのですが、「速度」は「大きさ」を表すだけではないのです。
「物体の位置」という部分に注目しましょう。物理学用語としての「速度」には、「どこ(位置)からどこ(位置)へ」動く速さ、つまり「方向」が要素として含まれるのです。
例えば、「速さ(スピード)」は時速40kmと表現しますが、「速度」だと時速40kmだけでは不十分なのです。南を正とした場合に、北向き(負、マイナス)に1時間かけて40km進んだ場合、「北向きに(−)時速40km」と表すわけです。
つまり、位置が変化している「方向」と変化している「速さ」の両方を含む概念です。
ビジネスにおける「速度」
冷戦が終わって軍事的な戦略が一筋縄ではいかなくなったことを、4つの状態を表す英語の頭文字を取って作られた軍事用語が、ビジネスでも使われるようになりました。
Volatility(変動性)
Uncertainty(不確実性)
Complexity(複雑性)
Ambiguity(曖昧性)
VUCAです。
テクノロジーの進化により変化は急速に進んで、その「スピード」は衰えるどころか、パンデミックによる人間の活動が停滞したのにも関わらず、変化の「スピード」は増しています。
VUCAは「スピード」を増している変化が「どの方向」に向かっているのかを私たちに教えてくれません。
予測不可能といわれる所以です。
そのようなビジネス環境の中でどこに向かったら良いのか。
情報収集をしてあれこれと頭の中でグルグルと考えてしまいます。
しかし、頭の中でグルグルと一生懸命に考えても、度重なる会議で熟議をくり返しても、ビジネスにおける「速度」は一向に出力されません。
どこに向かうのか?「正」はどこに置くのか?
いつの時代でも「未来」は予測できないのです。
そこで、ドラッカーは二つの事を勧めています。
「自ら未来を創る」こと
「既に起こっている未来」の結末を見て行動に結びつけること
の二つです。
つまり、行動を起こして失敗することも予測して、次々と「望む未来」に向かう「スピード」を上げていく訳です。
「望む未来」に向けて未来を創りあげるための「行動」を「スピード」を持って実行すること、これがビジネスにおける「速度」です。
つまり、10の選択肢があってその一つが正解だったとしましょう。
注意深く考えて1つの正解を選ぶのではなく、素早く10の選択肢を潰していく「速度」がビジネスにおいて問われているのです。
ところで「よんな〜よんな〜」は?
冒頭に紹介した沖縄の方言「よんな〜よんな〜」は一体何だったのでしょう?
「ゆっくり、のんびり、自分のペースで」というのは、ビジネスにおいては存在しないのでしょうか?
そんなことはありません。
「速度」とこれまで言ってきたのは、「平均速度」を想定してのことです。
マラソンを走ることを考えてみましょう。
42.195kmを走る際に一般的には一定の速度で走ることはないでしょう。
自分のトップスピードでマラソンのような長距離を走ることは人間にはできません。
ものすごいスピードでスタートダッシュして、バテてしまって走ることができなくなってゴールまでたどり着かなくなってしまいます。
ビジネスにおける「速度」も生活における「速度」も、メリハリのある「速度」が必要です。
活動と休みがくり返されることで「速度」が高まるのです。
急げば良いというわけでもありません。どこに向かっているのでしょう?「速度」には「方向」が含まれています。
事業の「望む未来」は明確に定められているでしょうか?
人生の「望む未来」はどうでしょうか?
そしてそこに到達するように失敗と思われることも含めて「速度」を持って未来を創っているでしょうか?
今この瞬間から人類の誰もが遭遇したことのない未来は始まっています。
つまり「止まらない」「やめない」事こそが、最善の「速度」とも言えるのです。
「よんな〜よんな〜」で未来を創り続けましょう。
最後までお付き合いありがとうございます。