目先のことで頭が一杯になってはいませんか?
(写真はタイ南部のぶどう園:2015年6月撮影)
今日は何をしようかな、などと考えることもなく、いつもやらなければならない事は目の前に山積しているのではありませんか。
今やらなければならないことに集中して取り組むことは大切なことです。
しかし、目先のことばかりに取り組んでいるうちに、ビジョンや中・長期の目標を見失うことは避けなければなりません。
今回は、目の前の課題に取り組むうちに、ビジョンを見失わず、着実に前進するためのヒントを考えます。
思考の近視眼化
あなたの利き目はどちらですか?
近くを見るときの私の利き目は、左目です。ラップトップのスクリーンを見ながら仕事をする時に、左目に頼って仕事をしています。
顔面神経麻痺によって、左目の開閉が充分できないために、涙が普段より多く出る上、意識的に手を添えて閉じてあげないとよく見えなくなる状態がしばらく続いています。
普段は気にしていませんでしたが、左目に頼っていたことが分かります。
ここ2年ほどはラップトップのスクリーンタイムが以前よりも長くなっていますから、より左目に頼っていたのだと思います。
スクリーンと目との距離は40~50cmくらいでしょうか。左目に頼っているということは、左目がこの距離に焦点を合わせたままになっていると言うことです。
スクリーンから目を離す時には、右目に頼っているようです。
自覚はありませんでしたが、左目は完全に近視眼的になっていたのです。
これは肉眼のことですが、私たちの「思考の目」にも同じ事が起こってしまう様に思います。
目の前の事にだけ焦点を合わせていますと、遠くの事や広い範囲の事について「思考の目」の焦点が合わなくなってしまうのです。
ビジョンや中・長期のことに焦点を合わせにくくなると、思考、決断、そして行動までも、短期的かつ固定的になってしまいます。
そうなると「現状維持バイアス」もかかってきて、変化することにブレーキがかかり始めます。
近視眼の矯正
肉眼の近視眼と同じように、「思考の目」も矯正をしておくことが大切です。
私の左目の問題は、視力が悪化したわけではないので、眼鏡やコンタクトによる矯正は必要ありません。
スクリーンから離れて、どこか遠くを見るという調整・回復の時間をとることが必要です。
「思考の目」についても同じ事が言えます。
目の前のタスクを離れて、遠くのビジョンについて考える時間を作るのです。
「言うは易し行うは難し」
実際に片づけなければ、ならない事が沢山あるわけですから、目の前のタスクを離れるという事だけでも大変です。
それに大局的なことを考えると言っても、目の前のタスクに焦点を合わせることが「習慣化」していれば、広い視野で俯瞰的に物事を考えたりすることが困難になっていますから、そう簡単にできることでもありません。
どうすれば良いでしょう。
時間と空間をつくる
忙しい時でも、どうしても会いたい人とのアポは、何とかつくれるものです。
自分自身とのアポをとることを提案したいと思います。
すでに忙しいので、山積するタスクをやり終えてから、時間を作るのは難しいのです。
ですから、朝少しだけ早起きして、「朝飯前ミーティング」のアポを入れます。
そして、その日のタスクに焦点が合わさってしまう前に、時間を確保します。たとえたった10分しか早起きして時間をつくれないかもしれません。
それでも、何もしないより100倍良いのですから、時間を確保しましょう。
そして、意識的に焦点を将来のことに合わせて、思いを遠くに持って行きます。
その時にどの空間でその時間をとるかにも注意を払いたいと思います。
私の場合は、肉眼で普段見ているものが見えない場所が有効です。
ですので、外に行って遠くを眺めることのできる場所へ行きます。また、じっとしているより、歩いている時の方が助けになります。
自分の環境にいつもあるものが視界に一旦入ると、私の「思考の目」は目先のことに焦点をあわせて、あれをこうしなければ、このことについてはあれをしなければ、と近視眼になってしまうのです。
近視眼化が進んでいる時には、時間と空間を確保しても、なかなか大局的に考えることができません。考えようと思っても、直ぐに目先のことが気になってしまうのです。
そんな時には単純に自分の年齢を軸にして、10年後、5年後、3年後、2年後、1年後を想像してみましょう。
私は現在55歳ですから、65歳、60歳、58歳、57歳、56際と遠くから順にその年齢の自分を想像するのです。
自分の健康、人間関係、成長、経済、自由に思いの向くまま考えます。答えを出そうとか、目標への進捗状況を評価するとか、一切考えません。
それだけで、近視眼的になっていた「思考の目」が調整・回復されていきます。
たとえ毎週10分だけでも、くり返しこのような時間を持つことで、徐々に焦点を遠くに合わせたり、近くに合わせたりすることのできる、本来の「視力」が取り戻されます。
そして、焦点を自由に合わせる柔軟性さだけではなく、目の前のタスクの処理にも違いが出てくるはずです。
10分間、自分との「朝飯前ミーティング」してみて下さい。