【読書】神奈川新聞社『宮ケ瀬ダム―湖底に沈んだ望郷の記録』
以前読んだ丹沢山地の起源に関する本のせいで、同地にある宮ヶ瀬の歴史とダム建設の経緯について、もう少し知りたくなりました。ダム建設の事業にどうやら亡き父が仕事で関わっていたらしいことも理由の一つですが。
この本は、市立図書館で見つけてきました。1978年から90年代にかけて神奈川新聞に掲載された記事の抜粋を中心に構成されています。
1969年に始まる建設省の大ダム計画。RCDという新工法を用いコンクリート重量式としては日本最大の堤体積となるダムサイト。相模、城山両ダムと連携した神奈川県の治水。そして、水没する宮ヶ瀬周辺のみならずダムサイト直下の愛川町半原や導水路の取水口となる津久井町青根の住民も巻き込んだ十数年にわたる補償交渉。
記事が断片的で一部時系列ではないのと、新聞特有の短い表現でちょっと読みづらくもありました。
けど、「長者屋敷」や「権現平」といった自分も知っている地名や「唐人河原」のようにもう地図上にない場所について、地元の人たちが郷愁をもって語るいくつかの逸話は、とても興味をそそるものでした。
丹沢山へのアプローチとしてぼくがしばしば使うルートの対岸に二十ケ沢(はたちがさわ)という地名があります。ここでは明治末年の山津波で二十歳の若者が二人犠牲になったとのこと。当時、仲間が一刻も早く助けを呼ぼうと川の対岸から里に向けて矢文を射ったそうです。
次に走りに行くときには、景色がちょっと違って見えるかもしれません。
(2017/4/30 記、2024/12/7 改稿)
神奈川新聞社『宮ケ瀬ダム―湖底に沈んだ望郷の記録』神奈川新聞社(2001/4/1)
ISBN-10 4876452970
ISBN-13 978-4876452972