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【読書】吉本ばなな『キッチン』
── 家族という、確かにあったものが年月の中でひとりひとり減っていって、自分がひとりここにいるのだと、ふと思い出すと目の前にあるものがすべて、うそに見えてくる。生まれ育った部屋で、こんなにちゃんと時間が過ぎて、私だけがいるなんて、驚きだ。(吉本ばなな『キッチン』)
考えてみれば、誰にも起こりえるわけで、なんだか少し怖くなりました。
福武文庫。代表作『キッチン』を含む短編三作品を収録。単行本は88年の刊行で、妻によると、気鋭の若手女流作家ということで当時話題になったそうです。世評にうといぼくはぜんぜん知らなかった。88年というと大学二年生のころかな。アルバイトと単車のことしか考えてなかったかも。
三作品とも近しい人の死に向き合うという重いテーマですが、くだけた文体と前向きな結末に救われます。
本当は、もうすぐ中学生になる娘に、春休みの間に何か読むことを勧めようと思って探してきたのですが、本人は『僕等がいた』という恋愛小説を所望。コミックの映画脚本を小説化したものらしいです。とにかく読むのならと思って買い与えましたが、感想は「面白かった」のひとことだけでした。二日で読み終えてたからホントに面白かったのでしょう。
(2012/3/24 記、2023/12/24 改稿)
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吉本ばなな『キッチン』福武書店(1991/10/1)
ISBN-10 482883222X
ISBN-13 978-4828832227