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【読書】丸山真男『日本の思想』
ときどき小むずかしい本を衝動買いする癖があり、そのたびにやれ不経済だの、重みで家がつぶれるだのと、かみさんから小言を頂戴します。
その上、実はしばしば何年も読まずに放置したりしているなんて、口が裂けてもかみさんには言えません。バレないうちにきちんと読んで、買っただけの価値を示さなければならない。
この本は、2年前に新宿西口のブックファーストで衝動買いしたうちの一冊ですが、前半に論文体、後半に講演体で各2つ、計4つの文章が収められています。特に前半2つが難しくって、正しく読むにはもっと事前勉強が必要だったかなあと思うけど、著者ご本人が"あとがき"で言っている「戦争体験をくぐり抜けた一人の日本人の自己批判」という根本動機の存在は随所に感じることができました。
丸山眞男さんは戦後の民主主義思想を主導したと言われる東大名誉教授の大先生で、2014年にNHKで放送された「知の巨人たち」でも取り上げられています。
http://cgi2.nhk.or.jp/.../postwar/bangumi/movie.cgi...
戦時には、大卒者は志願すれば幹部候補生から将校になり得たのに「軍隊に加わったのは自己の意思ではない」と二等兵のまま戦地に赴いたそう。学者の気骨を感じるエピソードです。
本書の4つ目の文章『「である」ことと「する」こと』は高校の現代文の教科書にも採用されたようです。自分が高校生のころ読んだかどうかぜんぜん覚えていませんが、今回の抜粋はこの文章から。
── 本当に「おそれ」なければならないのは、議会否認の風潮ではなくて、議会政治がちょうどかつての日本の「國體」のように、否定論によってきたえられないで、頭から神聖触るるべからずとして、その信奉が強要されることなのです。およそタブーによって民主主義を「護持」しようとするほどこっけいな倒錯はありません。
制度に安住することなかれ。議論と省察から逃げない市民の姿勢こそが肝要。丸山さんの民主主義はタフで骨太だと思いました。
(2017/12/2 記、2024/12/28 改稿)
リンク先が古くなっていたようなので、訂正・再掲します。
(2024/12/28 記)
丸山真男『日本の思想』岩波書店(1961/11/20)
ISBN-10 9784004120391
ISBN-13 978-4004120391