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読書感想【債務、さもなくば悪魔】

ヘリコプターマネーに少し興味を持ったため,購入して読んでみた.

さっそくだが,この本は日本語のタイトル(副題)にヘリマネとあるものの,ヘリマネの本ではない.

金融や信用に関する正統派経済学の過度の楽観論,金融の肥大化への批判を主題としている本である.

民間信用性悪説を唱えており,民間信用創造が完璧であるという認識を改め,不換通貨による信用創造(政府による信用創造)も選択肢として排除(タブー視)してはならないと指摘する.

著者はマネタリーファイナンスの活用を検討すべきとして,財政赤字の穴埋めや公的債務の償却を挙げている.

政治側が乱用しないように,ヘリコプターマネーや政府による債務償却を承認するかどうか,中央銀行の金融政策委員会に権限を付与したら良いという提案は興味深い.

ただ,安倍元首相がアベノミクスと題して,金融政策に政治が介入してきたこともあり,本当に金融政策委員会で制御できるのか不安は残る.


もう一つの不安要素として,公的債務の償却方法がある.本の中では,無利子の永久債に変換することを提案しているものの,私は問題があると思う.

なぜなら無利子の永久債は,保有者に一円の元利金も もたらさないからだ.

今の金融政策は,国債を市場に売却することで出口に向かえる.永久債が一円の金にならないなら,民間の金融機関は購入しないだろう.結果として,日本銀行は出口に行けないという事態となる.

永久債を導入するなら,日銀から排出時に無利子を有利子,または永久を期限付きに変化できるようにする(「停止条件付変動金利永久国債の日銀引受について」,岩村充)というような工夫が必要だと思う.

(そもそも永久債を発行できるのか,また,無利子の永久債で負担は減りますと宣言して,国民は安心するのかという疑問はある.まぁ,それは置いておこう.)


民間信用性悪説に基づけば,こういう本になるのは納得だと思う.異端の書と言われるだけあるなと感じた.

私はヘリコプターマネーの本だと思って読み進めたため,「もしかして,ヘリマネの本ではない…?」と気づいたときに,少しガックリきた.ヘリマネは最後に出てくるものの,これから読む方は気をつけよう.


以上.


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