【BEST OF 映画紹介① 陽だまりの彼女】
第一回目のエンタメ作品紹介は2013年公開の映画「陽だまりの彼女」
公開当時小6だった私は上野樹里と松潤の共演という意外性に何となく興味を示しながらも、なかなか予定が合わずついにスクリーンで見ることなく終わってしまった。
そんな私がこの映画を観たのは、高校2年生の冬だった。
当時ほぼ全寮制の高校で生活していた私は、寮に貸出用で置いてあったDVDを見つけて自室のベッドでこの映画をみた。
以下、当時の心情も含めた感想
序盤の松潤のちょっぴりダサいキャラクター性と光が差してポカポカとした気持ちになれる演出に心地良さを感じながら、偶然再会した幼馴染の真緒と惹かれあっていくストーリーは優しくてドラマチックだ。
若き日の浩介と真緒を演じる北村匠と葵わかなの演技も思春期真っ盛りの葛藤と恥ずかしか、甘酸っぱさが混ざった感情を見事に表現している。高2の私にはむしろ彼らの姿の方が昨日の自分を見ているような感覚だった。
一番好きなのは、秋から冬に移り変わる季節に2人でデート?のように東京の街を散策するシーン。真緒が好きなThe Beach Boysの「Wouldn’t It Be Nice」がBGMで流れ、キラキラした街の風景と一緒に好きな人と一緒に時間を過ごせることの幸福感を演出させている。個人的には最初のイントロがとても好きで、真緒もハミングしながら口ずさんでいたが、イントロを聴いた瞬間に何となく人を好きになれるっていいなあ、と思わせてくれる。
中盤から終盤にかけてはネタバレ要素が増えてしまうため、詳しく語ることは避けるが
とにかく嗚咽していたのを覚えている。
ラストの方でも「Wouldn’t It Be Nice」が流れ、浩介が静かに涙を流すシーンがあるのだが、観ている側も幸せな気持ちと何とも言えない悲しい気持ちにさせられた。
人を好きになるって本当に幸せなはずのにいつも悲しさが付き纏っている。
当時、好きな人がいたわけでもなかったのに私はひたすら泣いた。
浩介と真緒みたいに、本気で惹かれ合うような恋がしたいと思ったし、無性に切なくなって、号泣しすぎた結果ルームメイトにめちゃくちゃ心配されてしまった。
小中時代、私には大好きな初恋の人がいた。長年の思いが実って彼と付き合うことになったが、受験期にすれ違い別れしまう。当時の私は運命を信じていたし、彼がその人であってほしいと心の底から思っていた。人生の半分以上を費やした恋が終わってしまった高校生の私は本気で人を好きになる感覚を失いつつあった。
運命を信じることが怖くなったし、自分が好きになった人は私を選んでくれないのだろう、とどこか絶望にも似た感情を抱いていた。
そんな私に人を本当に好きになることへの憧れを取り戻させてくれたのがこの作品だった。
思春期は「好き」と「恋人が欲しい」という感情の区別が難しくなる時期だ。
特に現代はSNSの発達で恋人の存在を自分のステータスにできてしまう時代。
でも、中学時代の真緒にはそんな感情は微塵もなくて、あるのは浩介と一緒にいたい、という無邪気な感情。
かといってそこにはメンヘラみもなく、ただただ一生懸命浩介の姿を追いかけている。
そう、「邪気」がないのだ。
一方の浩介はというと、真緒に付き纏われて嫌がりながらもだんだんと自分の中にある恋心に気づいていき、恥ずかしくなって逃げてしまう。
真緒と再会する前にはほのかに好意を寄せていた女性にアタックすることもなく玉砕するちょっと残念な男子として描かれている。
だけど、真緒と惹かれあっていくにつれ、過去の自分の感情と真正面から向き合い、真緒とも向き合っていく中で浩介は大人の男性として成長していっているようにも見受けられる。
終盤でなぜ真緒が浩介に惹かれたか、その秘密も明らかになるのだが、
そこには人が本来生まれ持っているその人にしかない「美しさ」がキラキラと光っており、真緒と浩介は純粋な時代に、魂と魂で惹かれあっていた、ということがよくわかる描写になっている。
今回この投稿をするにあたって、もう一度映画を見返したのだが、あの時のように涙は流れなかった。
高校生の私は浩介と真緒のような恋にただ憧れていたし、今の私はあの頃より少しだけ経験を積んでちょっとだけ大人になってしまったのだろう。
それでも、誰かの本当に好きになるってなんて幸せなんだろう、ともう一度思わせてくれた。
誰しもが持っている本来の純粋さを取り戻させてくれるこの作品。
鑑賞後はきっと温かくて幸せな気持ちになれるはず。