100年の孤独/放哉に想う〈Vol.44〉
いまから30年近く前の話です。仲の良かった同僚が出張先で突然亡くなりました。脳幹出血でした。まだ40代半ばだったと思います。
彼が急死した夜、救急隊員は彼の携帯に登録された電話番号に電話しました。最初に架電した先は、わたしの携帯でした。数少ない登録番号の最初にわたしの番号があったからです。
その夜、わたしは夜遅くまで飲み歩いていました。だから、電話が鳴っていることにまったく気づきませんでした。
零時を過ぎたころ、繁華街を歩く群れの中にわたしはいました。最終電車に乗り遅れまいと駅へ向かっていました。
そのときです。突風が前後左右からわたしを吹き曝しました。それは足を止めるほどの風でした。
寒い季節ではなかったのです。でも、なぜか震えるような寒さを感じたのでした。
「まったく君は毎晩毎晩飲み歩いて何をやっているのですか。僕が亡くなってしまったこの夜も」。同僚は風になってわたしに伝えたかったにちがいありません。