豚熱最新情報――2023シーズンの猟野に立つ前におさらいしておこう!
野生イノシシの豚熱の現状と、ハンターができる対策と防除
豚熱はまだ拡散し続けている
2018(平成30)年9月に岐阜県の養豚場で発生した豚熱(ぶたねつ/CSF=Classical Swine Fever)は、ブタの仲間にだけ罹患するウイルス疾患のこと。2020年から家畜ブタにはワクチン接種ができるようになったため危機的状況は免れているが、ワクチンが接種されるようになった現状においても養豚場で豚熱が発生し、発生農場において全頭殺処分されている。
野生のイノシシに関しても豚熱は収束にいたっていない。そこでワクチンが入った餌を生息地の山に散布して免疫を獲得させ、感染地域内における感染抑制、感染地域拡大の抑制をしているが、残念ながら感染確認されている地域は広がっている。
農林水産省の「豚熱感染野生イノシシ発見地点」の最新情報を見ると、北は岩手県中西部や秋田県の南部、本州の西側は山口県まで、四国では高知県、徳島県や香川県にも豚熱陽性イノシシが発見された。緯度・経度情報がないものについては地図にプロットしていないので、実際にはこれよりも多いことがわかる。
拡散させないために・・・
豚熱が発生した直後にはイノシシの姿が皆無になっていた地域では、ここ最近イノシシが再び戻ってきたという声も聞く。だが、油断は禁物で、豚熱ウイルスを他地域に移動させないことは山を歩く者の責務といえる。ここであらためて消毒の方法をおさらいしておきたい。
まず、豚熱のウイルスはイノシシの唾液や排泄物などに含まれていて、それらが混じっている土にも含まれている可能性がある。もちろん肉眼では見ることができないので、豚熱の可能性がある地域の山を歩いた際には消毒を徹底する。消毒には入手しやすいアルコールや消石灰を使うといいだろう。山から下りたら、まずは靴に付いた泥などをブラシで落とし、消毒薬を散布する。クルマのタイヤにも散布して土などをブラシでこすり落としてから移動しよう。
消毒を徹底することで、イノシシや家畜ブタが豚熱に感染することを防げる。ハンターにとって獲物がいなくなってしまうことが一番悲しいことだ。面倒くさがらずに、猟場を移動する際には消毒を徹底するように心掛けたい。
アフリカ豚熱及び豚熱の交差汚染防止 ダイジェスト版 - YouTube
山中でイノシシの死骸や様子がおかしい個体がいたら・・・
野生動物の死骸はめったに見られない。たいていは同じ山に棲む肉食動物や腐食動物などにすぐに発見されて、食べられて、それほど時間がたたないうちに分解されてしまうからだ。もし山中でイノシシの斃死体やおかしな挙動をする個体を見た場合は、管轄する自治体へ必ず一報を入れよう。それによって、豚熱の陽性かどうかを調べ、周囲にも注意喚起をすることができるからだ。侵入経路を知っておくことが大事なので、山に入るハンターは面倒くさがらずに協力をしてほしい。
そして前述のように、下山したら移動する前の消毒も忘れずに。
詳細な情報は農水省のホームページを要参照。
野生イノシシにおける豚熱対策:農林水産省 (maff.go.jp)
※当記事は『狩猟生活』2022VOL.12「豚熱最新情報 野生イノシシの豚熱の現状と、ハンターができる対策と防除」の一部内容を修正・加筆して転載しています。データは2023年9月20日現在のものです