怒鳴らないのは自分のため部下のため
サトウは怒っていた
会議15分前になっても部下のスズキが来ない
早めに来るように言っておいたのに
社内プレゼンの日
サトウがリーダーのチームから新しいシステムについて、部長、課長、チームリーダーたちに発表プレゼンすることになっていた。発表者はスズキ。
とはいえ、今回のプレゼンは入社2年目のスズキのデビュー意味合いが大きい。
サトウの勤めるA社では、入社2年目の後半に初めてひとりで社内プレゼンをすることが慣例になっている。3年目からは一人前のA社の社員として扱われる前の通過儀礼だ。スズキのためにお膳立てした発表会のようなもの。
それなのに、まだ来ない。
ぼちぼち出席者が集まりだしている。
14分前、チームリーダーが揃った
13分前、小走りにスズキがやってきた
「おそい···」
サトウが怒鳴ろうとしたとき
「怒鳴るのは三文の損 リクエストは三文の得」
え?
サトウはふと我に返り
「スズキさん、練習どおりにやれば大丈夫だ」
そう言ってスズキの肩をポンポン叩いた。
スズキのプレゼンは無事成功した。
部長と課長は5分前の着席だった。
サトウはスズキの労いつつ
「早めに、なんてわかりにくい言い方をしちゃったね。
これから自分が発表するときは30分前
参加するときは15分前に着席するのが慣例なんです。
これからはそうしてください。」
それにしてもさっきの変な声は誰だったんだろう。
危うく怒鳴り散らすところだった。
先週社内でパワハラ研修を受けたばかりなのに。
研修で講師が言っていたな。
人前で部下を怒鳴るのはパワハラ
二人のときに静かに具体的にリクエストしましょうって。
あのメンバーの前でパワハラしたら自分の評価が下がるし
スズキは萎縮してうまくできなかっただろうな
変な声の主、フリーの守護天使ろくおは、怒り出しそうな人の背後から6秒間話しかけるのが仕事です。
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