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アンダンテな午後。


天気の良い日曜日の昼下がりに、三女と近くのドラッグストアへ歩いて買い物へいきました。

ポケットには、スマホと小銭入れとカナビラでつないだコンパクトなマイバック(パーマン*の変身セットみたいに小さくなるやつ)。

手の甲と首に日焼け止めを塗り、三女はUVカットのメガネをかけて、脇の林道をおりていく。

「歩くときさー、こうやって手ぇ振るじゃん、それを“兵隊かっ”てツッコまれる〜」

「こんなん?」

「手と足一緒や!それ、卒業式やん 笑笑」

「カクーンて角まがるやつ 笑笑」

ふざけ合いながら、足元の落ち葉をシャリシャリと踏む。いつの間にこんなに落ちてたんだろ。

普段、車で通る道の歩道を、二人並んで歩く。
歩道の幅が広ければ並んで、狭くなれば三女を前に一列に並んで。

「はい、一列になって〜」

小学校のころの集団登校で、6年生のリーダーが言うセリフをマネしてあそぶ。

「まえ、つめてぇー 笑笑」

春にはしだれ桜が綺麗なお家のお庭には、枯れ枝がしだれていて、脇には小さな柿もなっていた。
柿色はオレンジ色とは少しちがうな、と当たり前みたいなことを思う。

ドラッグストアに着く頃には、ホカホカとしていて、店内の涼しさが心地よくて。Cicaのシートパックやら、アホ毛おさえやらを買うついでに、私はキリンレモンを買った。


プシュー

ごくごく。


「飲む?」

三女は歩きながらペットボトルとか飲むの下手くそな人で、いちいち立ち止まる。

「へたくそかっ 笑」

そうツッコみながらも、私だってごくごくするときには飛び出し坊や**くらいの姿勢になって、

「結局止まってるやんっ笑」

と、まっとうなツッコミをうける。

来た道を帰るのだけれど、帰り道はずっと登りで。三女がブラブラと買い物袋を提げ、私は片手にキリンレモンで、まつぼっくりの歌をうたった。

「今度、家庭科で保育の授業があって、まつぼっくりがあったとさ〜って歌うんやって」

「ひとりで?」

「うん、班でひとりずつ歌あそびしてくやつ」

♪まつぼっくりが〜あったとさ〜
   たーかいおやまにあったとさ〜
   ころころころころ あったとさ〜
  おさるがひろってたべたとさ〜 ♪

「さる、食べるんや」

「食べるとこなくね?」

「ホントや 笑」

そうこうしていると、向こうからストライダーに跨った少年と、ペダルのある自転車に跨ったも少し大きい少年と、ミントグリーンのヘルメットを被ったカゴ付きサイクルを押したもう少し大きな少女が来た。その先には公園がある。きっと彼らはそこへ向かう途中。

ストライダー少年は得意げに見てくる。

私たちは、狭い歩道ですれ違うよりも、車通りのない道を横断して、反対側の歩道へと避けた。

ストライダー少年と、ペダル自転車少年と、そしてヘルメット少女が、道を挟んでめっちゃ見てきた。にこやかで、思わず知り合いか?と思うほど友好的な笑顔だったけれど、たぶん全然知らない。おそらくは、こういう天気のよい昼下がりに、散歩人と自転車がすれ違う穏やかさなり、平和さなりが、そうさせたのだと思う。

散歩には、そういう時間の流れかたがある。すれ違いざまに「どぉも〜」と言えてしまう長閑さが。

丘の上にある団地への帰り道には、100段近い階段が待っている。

「足元だけを見ていれば意外とイけるよ?」

と三女からのアドバイスを素直にうけ、ただただ目の前の一段をひたすらに登っていく。
太ももに張りを感じながら、はぁはぁと息がきれはじめ、あぁもう少しというころには、

「っあぁ〜!」

と声を漏らしたけれど、ちょうど登りきったときに、スゥーッと気持ちよく風がふいて

「いい風ーっ!!」

カラカラカラカラ…とイチイの葉がころがって、それを足で蹴りあげながら、息を整えて歩いた。

暖かな秋の日。

家に着くと、日向ぼっこをしていた猫と、窓越しに目が合った。

「ただいまー」

起きぬけに後ろ足で首をかく、猫の鈴の音がチリチリチリっと鳴って、二階のソファーからはのんびりとしたあくびまじりの声がした。

「おかえりー」


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パーマン*
パーマンの変身グッズ、マスクとマントとバッジはマスクにまるめると耳の穴の中に収まるほど小さくなるのだ。幼いころ、耳から出したその小さなものをモミモミして変身グッズが出てくるのにめっちゃくちゃ憧れた。


飛び出し坊や**

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