二百も合点。
「面白い女なんだ」
横柄な声の大きな男、髪をカチッと固め身なりの整った彼女の夫は愉快そうに目を細め、そんな言葉で自分の妻を褒めていた。
「面白い女」
言われなくても知っている。百も承知だ。
彼女ほど、頭のきれる、会話の愉しい女性を私は知らない。控えめで大人しそうな見た目とは裏腹に、話せば話題は豊富でテンポは心地よく下世話ではなくて、いつでもあっという間に時間が過ぎてしまうのだ。
当の彼女はそんな夫の言葉を聞いてか聞かずか、夫の支度をテキパキと整えている。
熱にうかされ、咳の合間にとろとろと眠り
見ていた夢の切れ端
知っているのだ
彼女が「面白い女」なのも
男が大きな声で言わなくたって
彼女が愛されていることも
甲斐甲斐しく男の世話を焼いている姿も
わかっている
自分の想いとて、百も承知だ
二百も合点
夢の中までどうしようもない
弱った時くらい
二人きりにさせてくれたらいいものを
夢くらい
夢くらい
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?