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惚れる。

「上質な文章」というのはまるで、香ばしく。その言葉一つ一つが、芳醇に、ちょうどぴったりに選びぬかれて据わる。

色も質感も、その温度や賑やかさすら、ちょうどぴったりな言葉で描いていく。

その表現は、見たままをままの描写ではなく、自身の中にストックされていた「色」「手触り」「香り」「ざわめき」など五感の経験に呼応しながら描く。

そして、その場で初めて経験したものには、細かな心の動き、ささいな光の入り方、音の聴こえ方、思い出せる限りの言葉をあてる。必要なタイミングで、その言葉でもって描写を紡いでゆく。

「上質な文章」を読んだ。

こっくりと深い、熟成された文章。
さらりと馴染む気易さはあれど、
誠実に礼儀を保つ上品さ。

巧みで豊富な語彙。

一つ一つを丁寧に面取りした、しっとりちょうどの薄味に煮付けた、大根のように。柚子の皮がそっとあしらい、箸先でスっと柔らかにほどけるように。ふくよかな味わい。

あれよと釘付けになり、息を潜め大切に、それでも一気に読み、ほぅ…と思わず溜息を。

恋に落ちる。惚れてしまう。
溜息がこぼれる。

これは「上質な文章」だ。

薄紙で包み、化粧箱に入れるものだ。
包装紙でくるみ、リボンをかけてもいい。

そういう、丁寧で、芳醇な文章を、
香ばしく味わい深く、
スックと自立する文章を。

いつか私も書けるといい。



https://note.com/anderu/n/nee8a2077182f


「泣きたくなるほど旨かったのだ。」

「たかをくくっていたのだ。」

「森のような寂しさを抱えていた。」

「琥珀の香りを吸い込む」

随所に、その心情や場面にしっくりぴったりくる言葉たちに、「からだにいいもの」を取り込んだような気になる。

※勝手ながら、ご紹介させていただきます。

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