
スワンボートを漕ぎ出そう
頭から、赤いチューブがはみ出していた。
身体から、細く透明なゴムチューブが複雑に繋がって、むき出しを片手で持ちながら、病院内を歩いていた。どうやらそれは、私の体の血管で、血液検査の待ち時間に、体外へ取り出しておいたところだった。
いつもの内科で検査は簡単に終わったのに、なんだか気だるく、フワフワすると思ったら、複雑に繋いだチューブの一箇所が外れて、トポトポと血が漏れて。金魚のエアポンプの繋ぎ目のように、自分で繋ごうとするものの、どこをどう繋ぐかわかないほどパーツはバラバラになっていた。
フラフラになりながら、コールを押す──
んんっ!
と、もがくように目が覚める。
手が痺れ、息は苦しく、悪い目覚めだった。
疲れているのはわかっている。
大したことなどしていないのに、私には、普通に生きるだけで、人並みの生活をするだけで、ずいぶん疲れてしまうことがある。
それはまるで、子どもが親戚の集まりに、きちんと挨拶をして、お行儀よく座って、ご飯を残さずに食べて「学校楽しい?」に「楽しい!」と無邪気に答える、くらいのストレス。
やろうと思えばできるけど「つっかれた〜!」ってなっちゃうくらいのストレス。
いい大人なのに「疲れ」てしまう。
スケボーでガーッと駐車場を走ったり、水風船をぶん投げたり、ゴムぞうりを飛ばしたり、アスファルトに寝転んだりしなくっちゃ。
「おりこうに」してるのは疲れる。
「大人」だから仕方ないのだけれど。
むき出しのゴムチューブみたいな、
ふざけた生命線で、私は生きている。
仕方ないから
風呂上がりにウッドデッキに寝そべっている。
✩.*🦢✩.*˚
ミルキーウェイにスワンボートを漕ぎ出そう
「一緒に行かない?ちょっとそこまで」
年に一度とか
今は何も考えないことにして