うん…わかってる。
仕事おわり、半袖が肌寒く感じる小雨まじり。
日が暮れるのも早くなった。
車のワイパーがトクントクンと、雫を拭う。
どっさと、ふぃ〜っと、ソファーに座ると、どっかと疲れがやってきて。後をついてきた猫がすぐ隣でくるりんと丸くなり、モゾモゾしたあとちょっとだけ体重をもたせてくっついて眠る。
収まるべき所へ収まったようにしっくりと。
その丸くあったかい背中を、そっと撫でる。
血管の浮いた骨ばった手で。
そばにきてくれたんだよね。
そうやってさりげなく。
元気なさそうに見えた?
それとも、ただ眠たいだけ?
どっちでもいいけど、なんかありがたいよ。
このちょっとした体温が。
図々しいくらいに寄り添ってくれた方が。
うん、元気ないんだ、たぶん。
好きだった人の、
LINEのアイコンが変わったってだけで、
なんかいろいろ考えちゃってダメだ。
隣に寝転んで、薄手のタオルケットをひっぱりあげて、もふもふの背中に鼻を押し付ける。
パンみたいな匂い。
いつもなら迷惑そうにモソモソと体勢をかえてお尻をむけて尻尾でブルンと払ったりするけれど、今日はいいみたい。
うぅ…ちょっとこのままいさせて。
もう何年も前のことだ、友達だ。
特別な意味などきっとない。
連絡もなければ、
ずっとこのまま会わないかもしれない。
終わったこと。
ever fallen in love とハートのアイコンだったのが、何年かぶりに変わって、小さな泡だらけのかわいいひよこのアイコンに変わっただけ。
それだけ。
それだけのこと。
それなのに。
気にしなくたっていいのに、
気にすることでも、もう、ないのに。
ぺろぺろと毛繕いをしはじめる猫に、邪魔っけにされながらもそばにいてもらって、電気もつけずにソファーに丸くウジウジする。
なんもないのに、
なんもないからせめて、
もう少しだけ猫でいさせて。
真っ黒な猫は
毛並みを整えながら、
ちょっとだけ尻尾で触れてくれている。