連想とメタファーの構造(改訂版)
前置き
メタファーの機能は言語の構造と関係していると考えられる。そして、メタファーの機能は人間の人間の思考の元となるような類似が大きく作用しているといえる。類似していることが、反応の指標となり、何かを表す象徴となっていく過程は、人間の始原的な思考、あるいは植物や動物のような生物的な思考なのかもしれない。一方で、何かを定義し、その定義から問いを立て、その問われたことを明らかにすいく過程は、人間の論理的な思考、あるいは言語や記号のような論理的な思考といえるのかもしれない。このようにメタファーは無意識的なものと意識的なものを架橋したり、こうであるという意識の働きをくずして、こういうこともあるという無意識、あるいは身体に貯えられている潜在的なものを現働的に発生させたりすると考えられる。
また、メタファーには身体や空間的な位相を表したものが多く、間接的な表現であるため、暗示のように作用すると考えられる。一方、直接的な表現は具体的な指示が明示されているといえる。論理的な思考は原因と結果というような明らかな因果律を好み、象徴的な思考は物語のような含意のある因果律を好むといえる。メタファーには身体的な活動を喚起したり、空間的な位相を再構成する作用がるといえる。つまり、メタファーは象徴的な思考と論理的な思考を架橋したり、象徴的な思考を活性化させると考えられる。
※ 象徴的な思考は「類似・指標・象徴」が、論理的な思考は「名辞・命題・論証」が連動することで働いていると考えられる。また、身体や空間的な位相だけでなく、意味的な階層や関係、物語的なものを表すものもある。
構造Ⅰ ガラガラポンの構造 shake & have a secret
⇒瀬戸(1995)を参考に、メタファーを機能で分類し図示してみる(図1を参照)。メタファー(比喩)を中心に、アナロジー(類推)とアレゴリー(寓喩)による象徴性と物語性という縦軸を圧縮の働きとし、メトニミー(近接関係)とシネクドキ(包含関係)による現実世界と意味世界という横軸を置換の働きとしてみる。さまざまな種類のメタファーの働きにより意識がガラガラポンされることで連想が生まれる。何が出てくるかはやってみないとみないと分からない。
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構造Ⅱ 穴あきチーズと骨組みの構造 space / frame
⇒穴あきのメッセージを伝えることで、相手の無意識が埋める何かに任せる。または、観察されるものに類似した骨組みのメッセージを伝えることで、その骨組みから相手の無意識が何かを組み立てることに任せる。
構造Ⅲ とんちとなぞかけの構造 confusion & Surprise
⇒答えのない説明や、何をといている(問いている状態と解いている状態の両方を含む)のか、わからない質問をすることで意識を混乱させる。もしくは文脈に働きかけ意識の前提を解体することでデフレーミングさせる。このとき自らも少なからず混乱、健忘、解離の状態にある。
構造Ⅳ こうであるし、こういうこともあるの構造 double bind / oxymoron
⇒相手の意識を観察し視えてきたことを材料に意識のこうであるというセオリーを視る。そして、相手の無意識を診てこういうこともあるというセオリーを診る。視ることと診ることをくり返しながら、こうであるセオリーとこういうこともあるというセオリーのズレをアクネドート(逸話)というメッセージで伝える。意識に上がれば混乱し、無意識に下がれば没入していく。
※ こうであるし、こういうこともある構造には、compose(部分が全体を構成する)と、comprise(全体が部分を構成する)といった関係や、包含(implicate)や集合(A かつ B、A または B の混同)などの働きにもつながってくる
構造Ⅴ 散りばめとすべりこみの構造 embedded&interspersal
⇒会話のなかに散りばめられたメッセージ、もしくは無意識が開いたタイミングでメッセージがすべりこむ。こちらも、意識に上がれば混乱し、無意識に下がれば没入していく。
構造Ⅵ 逸話、象徴、擬音の構造 anecdote / symbols / onomatopoeia
⇒逸話・象徴・擬音や擬態は概念化される前の前概念であり、身体感覚と概念の間にある言葉である。概念化される前のものを、概念化せずに扱える。
構造の機能を以下の8つと考えてみる
①confusion & surprise(混乱・驚愕させて文脈を外す)
②shake & have a secret (かき混ぜて秘密をもつ)
③interspersal(滑り込み)
④embedded(散りばめ)
⑤space(穴あき)
⑥frame(骨組み)
⑦double bind(二重拘束)/ oxymoron(矛盾)⇒ compose(部分が全体を構成する) / comprise(全体が部分を構成する)⇒implicate(包含)…etc.
⑧anecdote(逸話) / symbols(象徴) / onomatopoeia(擬音語)
※ ①と②は相称的に、③と④は異質同型的に、⑤と⑥は相補的に関係性がある。そして、⑦は意識から無意識へ働きかけ、⑧は無意識から意識へ働きかける。
参考文献
瀬戸賢一(1995)メタファー思考.講談社.
パース(2001)連続性の哲学.岩波文庫.
デイビィッド・ゴードン(2014)NLPメタファーの技法.実務教育出版.
中島央(2018)やさしいトランス療法.遠見書房.