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もうこっちは焼き鳥の口になってんねん
先週町でばったり近所に住む友達と出会った。年明け会うのは初めてかな、くらいの感じだったので立ち話だったが話が弾んで、来週いつものとこ飲み行こうよという展開になった。家の近くに僕らが好きな美味しい焼き鳥屋があるのだ。
今日はその焼き鳥屋の日。
多少の出費が想定されたので、昨日からは贅沢を謹んで質素なご飯にして過ごし、今日は今日で仕事の都合上昼ごはんを取るのが16時くらいになってしまったのだが、焼き鳥に備えてお腹空いてたけど量を少しに抑えるなど自分なりに焼き鳥を楽しむために調整をしていた。
18時、もうちょっとがんばれば焼き鳥が食べれる。
18時半、定時、仕事が終わる。
携帯には、お店ではなく一旦家でまだ作業しているからこっちに向かって欲しいと連絡が入っていた。
19時、友達の家に到着。
あたりは真っ暗な中、そこだけ玄関先が電球の装飾で明かりがつき、なにやら人が多くいて賑わっている。
ここで場所合ってたかなと不安になりながらも近づいていくと「○○くん、ヤッホー」と名前を呼びかけられた。
よかった、合っている。名前を呼んでくれたのは別の近くに住む知人だった。
「君も来ていたんだ」と会話を交わしながら他の方にも「こんばんわ」と挨拶をしたが、全く知らない人が5人ほどいてくつろいでいた。当の家主はなにやら忙しなく作業をしながらこちらの到着に気づき、遅れて挨拶を交わす。
どうやら夕方から近所の人を招いて作業をしていたようで、そのままの流れでご飯を振舞っているようだった。
とりあえず軽く食べて行きなよ、と皆が座っている駐車場のコンクリート上に敷かれた大きな絨毯の上へと誘導される。
いや、焼き鳥食べるんじゃなかったの
そう言いたかったが、まだ状況を掴みきれていない上に初めましての人もおり角が立つ気がしたので、その疑問は喉元でギリギリ押さえ込み、とりあえず別の近所の知人と会話を再び交わして様子を見ることにした。
家主が作ってくれていたのは鶏肉の照り焼きのようなものとご飯・味噌汁みたいだったが、全く気分になれないし、まずこの状況がよくわからないし、とにかく早く焼き鳥屋に移動したかった。
絨毯に腰掛けて5分くらいは様子を伺っていたが、すぐお開きにならなそうな雰囲気を察知して
そそくさと家主のところへ行き、この後の動きを確認してみると、どうやら焼き鳥屋へは行けなそうなスケジュールだった。
焼き鳥屋に行けないならここに用はない。
申し訳ないがそう思った。
だって俺はもう焼き鳥の口になってしまっているのだ。
なので適当な理由をつけて、その場を去った。
車の中では憤慨していた。
人の時間をなんだと思ってんだてめえは。
こっちは仕事終わりで、今日の焼き鳥をエネルギーに明日の仕事もがんばろうと楽しみにしてたんだ、お前の土曜休みと同じにすんな。
てか前から今日は焼き鳥食べるって決めてたじゃねえか、何勝手に許可もなく予定変えてんだ、とにかく焼き鳥が食べたいんだ俺は馬鹿野郎。
そんな罵倒を1人ぶつぶつ言いながら家へ帰るがこのまま帰るのも違う。
だって焼き鳥を食べていないから。それに仕事終わりのビールだって飲みたかった。
だから代わりに道中のファミマで焼き鳥5本とビールを買って帰宅した。
この怒りは数日残るだろう。
俺は結構根に持つタイプだからな。