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【植物と短歌】ナツメの魔法

ナツメ。クロウメモドキ科の双子葉植物で、初夏に花を咲かせる。
今はもう花の時期を過ぎてしまっていて写真を撮ることはできなかった。

ナツメの実
熟している茶色い方が甘くて美味しい


ところで、ナツメの葉は不思議な力を持っている。
どのようなものだろうか。


ナツメの葉

答えを言おう。
ナツメの葉を食べた後甘い物を食べると甘みを感じなくなるのだ。
ナツメの葉には舌の甘味受容体のはたらきを阻害する「ジジフィン」という成分が含まれているそうだ。

自分でも色々試してみたのだが、本当に甘さを感じなくなった。
中でも溶けかけのピーナッツチョコが一番最悪だった。
チョコはいついかなる時も美味しいはずなのに…悲しい気持ちになった。
ダイエットしたいときに食べるといいかもしれない。

そしてふとこの効果を詠んだ和歌はないのだろうかと思った。
「わざわざナツメの葉を食べるようなことをしなくても、私とあなたの間に甘さはまったくありませんよ」、みたいな望みのない恋を詠んだ歌。

あったら面白い。探してみた。

しかし残念ながら、ナツメの葉に注目した和歌を見つけることはできなかった。

どうもナツメを詠んだ和歌自体あまり多くないようだ。

「なつめ」は近代短歌においては郷愁をさそう木として比較的よくよまれているが、古典和歌の世界では、枕草子の一部の伝本で「歌の題は」の項に取り上げたほどには実際にはうたわれていない。

平田喜信, 身﨑壽. 和歌植物表現辞典. 東京堂出版, 1994, 236p

だが、

果実はすでに万葉、王朝の時代には果物として食用にされ、そして木は庭園樹として植栽されていた。

近藤浩文. 王朝の植物. 保育社, 1995, 84p

とあるように、宮中にはナツメが植えられていたことが分かる。
葉に関する歌はともかく、ナツメ自体があまり詠まれていないのは不思議だ。

以下にナツメが登場する歌をいくつか紹介する。

玉帚刈り来鎌麻呂むろの木と棗が本とかき掃かむため

「万葉集」長意吉麻呂

梨棗黍に粟つぎ延ふ葛の後も逢はむと葵花咲く

「万葉集」よみ人知らず

子供らがつかまるによき棗の樹幹すべらかに年ふりにけり

三ケ島葭子

おそ夏の空に青実をこもらせて棗の高木さびしくゆるる

前川佐美雄
ナツメの木

今回、ナツメの葉の効果を詠み込んだ歌を見つけられず残念だった。

でもないなら私が作ればいいのかもしれない。いつか私が今回抱いた疑問と同じ疑問を抱く人のために。



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