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夏だからこそ読みたくなる愛の物語

夏になると聞きたくなる曲があるように、夏になると読みたくなる漫画がある。
そんな話題です。

普段あまり話題にしない、愛に関連するお話から敢えて選び、3冊ほど紹介します。



海辺のエトランゼ

【あらすじ】
3年前、2人は沖縄の離島の海辺で出会った。小説家の卵でゲイの橋本駿は、物憂げに過ごす高校生・知花実央が気になりナンパめいた声をかける。日に日に距離を縮めた2人だったが、実央は島を離れることに。そして3年後、島に戻ってきた実央は「3年考えた。男でも駿が好き」と駿に迫る。しかし駿はいざ実央と恋人同士に、となると1歩を踏み出せなくて──。

好きになった相手と抱き合えたら。そんなこと絶対叶わないと思ってた──。

『海辺のエトランゼ』単行本裏表紙・帯の文章より抜粋


沖縄を舞台に紡がれる、真夏の夕方の爽やかな暑さと自然の音が感じられるような独特の雰囲気と台詞のテンポ感が特徴の漫画。
ジャンルは男性同士の恋愛もの。アニメ映画化もされた有名作品です。

メインとなるキャラクターは主人公の2人ですが、その周囲の人物たちも魅力的で、家族愛も含めた複数の愛、それぞれの関係性、様々な想い等、人と人が関わらないと芽生えない多種多様な感情が丁寧に描かれています。
男性同士の恋愛ものとしては(恐らく)珍しく、登場人物の女性率が高めな印象。女性同士のカップルや、女性から男性への恋愛感情も描かれます。

とにかく登場人物の精神描写が細やかで繊細で、全キャラクターの心の動きをすっと受け入れることが出来ます。
キャッチコピーにもあるように、まさに「心が洗われるような」漫画。

この作者様特有のものなのだろうな、と思える空気感が作中に終始漂っていて、浸りたくなる心地良さがある。

紀伊カンナ先生の作品はどれも、環境音をBGMに読みたくなるような漫画です。
海辺のエトランゼに関しては、映画公式サイトでも流れているように、波音をBGMに読みたくなります。

これに関してはもう実際に紀伊カンナ先生の作品を1冊でも読まないと伝わりにくいかなと思います。
是非沢山の方に読んで頂きたい。

因みに続編として『春風のエトランゼ』という作品もあり、こちらは更にメイン二人の関係性に家族愛をはじめとした周囲の関係性、両方が掘り下げられつつ、独特の魅力を損なわない面白さを保ったまま、深呼吸をしたくなるような澄みわたった空気を味わうことが出来る漫画でした。

同作者様の作品だと、『魔法が使えなくても』という1冊完結のオムニバス形式の漫画もとても好きです。

以下は映画公式サイト。




ラストサマー・バケーション

【あらすじ】
クラスのあの子の「誰にも見られたくない姿」を見てしまった―― 明るくてかわいくて、クラスの人気者の美月。病気の母を献身的に介護する彼女はどこから見ても完璧な「良い子」だった。そんな彼女の、決して見てはいけない姿を見てしまった海野は……? 現実から逃げた果てに辿り着くのは――? 切ない少女たちのロード・ムービー。

『ラストサマー・バケーション』紹介文より抜粋

以前も記事に書いたことがあるし、SNSでも呟いたことがある、大好きすぎる作品です。
ジャンルは女性マンガ……とのことですが、殺傷事件とそれに伴う逃亡劇、虐待を受けた少女達の描写が中心となっており、ヒューマンドラマ、若干ヒューマンホラーな雰囲気があります。
百合というタグも公式でついていましたので、そのような面も意識していらっしゃる作品になります。
メインの2人の関係性は、友愛とも恋愛とも表現し難い感じになっているかなという印象です。独特の関係性ですね。

こちらもまた環境音をBGMに読みたくなるような独特の空気感を纏った作品です。
タイトルにもあるように、夏休みの時期を舞台に繰り広げられるということも大きいですが、それを表現できるのはやはり作者様の作風、そして力量によるものなのでしょう。

だからこそ、特定の季節に読みたくなる。
この作品なら、蝉の鳴き声とかかな。

上下巻で完結し入りやすいので、是非真夏の休日、うだるような暑さの日の夕方などに両方購入して一気に読んでみてください。
私はいつもラストシーンでぐっときます。

犯罪行為や倫理的に問題のある描写がいくつかあるので、その点だけ、気になる方はご注意ください(それがこの作品特有の雰囲気を作り出すのに重要なのですが、念のため)。



蛍火の杜へ

【あらすじ】
夏休みに、祖父の家に遊びに来ていた少女・蛍は、妖怪たちが住むといわれる“山神の森”へ迷い込んでしまう。
途方に暮れ、泣き出した蛍の前に現れたのは、狐の面を被った少年・ギン。
ギンに助けられた蛍は、毎年夏になると、ギンのもとを訪れるようになる。
そして、ふたりはいつしか惹かれあってゆく。
だがギンは、人でも妖怪でもない、触れると消えてしまうという不思議な存在だった。

『蛍火の杜へ』アニメオフィシャルサイトより抜粋

人ならざる少年と人間の少女の交流を描いた傑作。
愛蔵版単行本には、表題作とその特別編、別タイトルの読み切りが2作品掲載されており、いずれも恋の物語です。

上記の2作品も含め、今回取り上げた作品には私が個人的に感じているある共通点があります。

それは「その作品独特の空気感がある」こと。

他の作品で同じような味わいを得ることは難しいだろうという、作者様特有の雰囲気が描写されていること。

これを大前提として、且つ夏だから読みたくなるという部分を重視して選びました。

かの有名作品『夏目友人帳』をご覧になったことがある方も多いかと思いますが、夏目友人帳からも伝わる、緑川ゆき先生の作品だからこその雰囲気がこの漫画にもあります。

透明で清涼で、少し寂寥で。
そんな、夏の夜中と秋の夕方の狭間の様な空気感。
これは風鈴の音やひぐらしの鳴き声をBGMに読みたくなる漫画でした。主観ですが。

終盤の某シーン、何よりも先にあの表情と台詞がギンから出てくることに心を打たれます。
多くは語るまい。短編ということもあり、これ以上私が語ると野暮になってしまいます。

是非、漫画本編で味わってください。

海辺のエトランゼ同様、映画もございます。





今回選ばせて頂いた漫画は、いずれも真夏の暑さの裏にある、夜中の静かさだったりとか、青っぽい自然の香りだったりとか、べたつきながらもそこでしか味わえない奥深さのある潮風だったりとか、そんなものを感じることが可能な美しい作品です。

暑い夏をもっと熱くする作品や、夏の暑さを吹き飛ばしてくれる作品もありますが、今回は敢えてこのような方針でいってみました。
ですが勿論、夏は熱い作品やホラーな作品も読みたくなりますよね。

暑さは苦手ですが、夏という季節独特の雰囲気は、私は嫌いじゃありません。




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