排外感情を蔓延させる改正入管法 ー永住在留資格の剥奪法案
今国会では育成就労制度と永住資格の取消を抱き合わせた改正入管難民法を審議中です。
国際的に人身売買だとして非難されている技能実習制度の看板を掛け替えた育成就労制度の導入と、故意に税金や社会保険料を滞納した外国人の永住者在留資格を取り上げる、過酷な罰則制度を導入するとのことです。
外国人永住資格者は89万人程度で在留外国人の27%を占めています。
そもそも、「故意」をどのように判定するのでしょうか?
ネット上では・・・
「永住権剥奪は当たり前!」
「日本は永住権剥奪とか強制送還とかもっと迅速にやっていいよ!」
「義務を果たさない外国人が許可を取り消されるのは当たり前」等々、勇ましい言葉も飛び交っていますが・・・
毎日新聞と時事通信の2社が5月8日、国会での入管庁の答弁を受けて永住者の税などの「未納は1割」との見出しで報じました。
「永住者、税金など未納は1割 厳格化めぐり国が初公表」(毎日新聞)「永住者、税など未納は1割 入管庁」(時事通信)
これを受けて、ネット上では・・・
「それみたことか!」「日本から出て行け!」「社会保障をタダ乗りする外国人は出て行け!」等々
法案に賛成する声が強くなってしまったように思われます。
でも、この入管の発表した「未納1割」については、しっかりと検証しておくことが必要です。この「未納1割」問題については以下の記事がとても参考になります。
この入管庁の国会で報告した「未納1割」(5月8日)はサンプル調査にもなっていませんし、厚労省年金局長によると、国民年金の保険料の未納(国籍を問わない)は加入者全体の「2割弱」だと言いますから、外国人の「未納1割」は日本人より少ないことになります。
ハッキリ言ってこの悪法は立法事実(法律を整備する正当な理由)さえ怪しいのですが、5月17日の衆院法務委員会で可決され、税金や社会保険料の滞納などを理由に外国人の永住資格を取り消せるようにする制度が現実味を帯びてきています。
私は、この法案は日本の将来に大きな禍根を残すことになると心配しています。
芥川賞作家の李琴峰さんは永住資格者として、この法案に向き合い、ご自身の見解を発表しております。
以下に紹介します彼女へのインタビュー記事は多くの方々に読んでもらいたいものです。
一部、記事を転記しておきますが、是非、全文お読みいただきたいと思います。
私はこの記事で、特に「もともとくすぶっている日本人の排外感情」が事の核心を突いているように思います。
今回の永住者在留資格を取り上げる過酷な罰則制度の導入は日本人がもともと持っている排外「感情」から来ているのだと思います。
竹田青嗣さん(哲学者、早稲田大学名誉教授)はスピノザ (Baruch De Spinozaオランダの哲学者)の能動的感情と受動的感情の区別について紹介していますが、私は日本人の排外感情というのは受動的感情だと思っています。
喜びの感情は自分の本性(例えば、日本人であることの誇りとか?)から来るものですが、怒りや恨み嫉妬は相手の影響下(外国人は無責任だぁ!とか?)にあり、自分の本性から切り離されていて自己を失っています。
排外主義的感情、受動的感情を理性の力で能動的感情へと転換し、能動的感情を育てる能力が日本人に残っていることを願っています。