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医療・介護の年末賞与が大幅カット!


1.医療・介護の年末賞与は対前年比▲19% 

 日本医療労働組合連合会(医労連、加入人員数約16万人)によると、全国の医療機関・介護施設での正規職員の年末ボーナスは、昨年の平均額の支給実績52万7047円に対し、今年は42万8164円で9万8884円減(▲18.76%)と「大幅なマイナスの状況となっている」とのこと。

 日本労働組合総連合会(連合)の「年末一時金(第1回)回答集計結果」(11月7日発表)によると、組合員の平均額は昨年同時期の79万3542円を上回る82万7478円(実額33,936円増、4.27%増)となっていますから、医療・介護職員の年末ボーナスは連合の組合員の約51.7%に過ぎないということになります。 
 医労連によれば、年末ボーナスの削減は、診療報酬と介護報酬が固定されている一方で物価が上昇し、その結果、医療機関や事業所の経営が赤字に陥っていることが原因だとされています。

2.財源財源と騒ぐな

 もっと、医療・福祉・介護に携わるエッセンシャルワーカーに手厚い待遇が保障すべきだと思います。このようなことを言えば、すぐ「財源はどうする?」という批判が返ってきます。
 軍事費増額やマイナンバー普及等の政府がご執心な者に対しては財源は問われません。
 軍事費(防衛費)は2023年度は対前年度より1兆4千億円の増額ですし、マイナンバーカード普及のためのマイナポイントに2兆8千億円(第一次1兆3千億円、第二次1兆5千億円)も税金を投入しています。

 あの超無駄だったアベノマスクにも約543億円も税を投入しているのです。

 なぜ、看護・介護等の社会保障の話になると財源、財源、財源とうるさく言うのでしょうか?政府はこの分野にあまりお金をかけたくないと思っているからでしょう。

3.なぜ看護・介護が低賃金なのか?

 そもそも、なぜ、看護・介護職員が低賃金なのでしょうか?
 上野千鶴子(社会学者)さんは、介護労働の低賃金の理由を次のように説明しています。

「(1)ケアが女の仕事と考えられており、(2)しかも女なら誰でもできる非熟練労働だと考えられており、(3)さらに供給源が無尽蔵だと考えられている、という三つの前提がある。」

引用及び参照:上野千鶴子 2011 『ケアの社会学』太田出版p157、158

 上野千鶴子さんは、介護労働が低賃金なのは介護が「女の仕事」と考えられてきたからだと指摘しています。これは非常に明快かつ納得できる理由です。
 要するに、介護は女の仕事、家庭内労働、つまり、再生産労働だから低賃金なのだということです。

 再生産労働者の賃金は市場に任せてはいけないのです。生産労働を支える再生産労働である医療、介護や保育は、社会の助け合いの仕組み、つまり、社会保障として位置づけられ、国家が税を投入すべき領域だと思います。

4.医療・介護労働者は声をあげよう

 日本の労働組合の組織率は約16.5%程度で組合員は1,000万人を切ってしまっており、集団的労使関係に守られていない労働者が増加しています。
 また、医療・介護業界の組合には日本医療労働組合連合会(医労連、加入人員数約16万人)やUAゼンセン 日本介護クラフトユニオン(組合員約8.7万人)があるものの、医療・福祉の組織率にいたっては5.8%、組合員数は50.3万人と他の産業に比べても非常に少ないのです。
(参照:厚生労働省の「2022年労働組合基礎調査」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/roushi/kiso/22/index.html )

 介護労働は低賃金で劣悪な労働環境であることが多いにもかかわらず、労働組合がない場合は、職場で何か自分に不利益なこと、不条理なことがあっても経営サイドに対して、たった一人で戦うしかないのです。

 労働組合は医療、福祉、介護の現場で働く労働者のために労働者の声を集約し、おおやけに訴える重要な役割を担うことができると思います。


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