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パーカーポイントがワインを劇的に変えた。

枕になるほど分厚いハードカバーだけど、ワイン史もつかめる良質なノンフィクション。酒を単なるアルコールではなく、未来へ紡ぐ文化遺産と考える人達なら、絶対読んだ方がいい。時間はかかるけど、費やす時間が自分の血肉になる。そんな本は珍しい。ということで知り合いには勧めてるw

パーカーポイント≒ワイン産業の通信簿

100点満点の評価というのは、テストを経験してきた人間にとっては本能的な反応で、誰もが理解できる。でもこれには当然、是非がある。

パーカー以前のフランスワインは、味だけではなく、歴史や畑といった要素をブレンドして、ワインを歴史文化遺産として評価していた。でもパーカーは純粋に「味」のみを評価する。

そして彼のワイン評価書である「ワイン・アドヴォケイト」は広告を一切掲載しない。醸造家と鑑定家が密室的なパトロン関係にあった時代で、これはとても革新的なこと。

彼の評価にワイン市場は翻弄される。1人の人間がマーケットを支配する異常な世界。世界中のワイン産業がパーカーの気を引くことに躍起になる。パーカー好みのワインが世界標準となる。

色濃く、アルコールが高く、凝縮感のあるワインがおのずと高得点となる。このトレンドのため、ナパバレーのワインのアルコール度数は12.5%から14.5%に上がっている。パーカーは世界のワインの嗜好を変えたのだ。

ちなみに、パーカーは1998年来日時に、日本酒225種類をテイスティングして、52種類が87~92点を獲得している。ワインと違うアルコールの高さに試飲は難航を極め、死んでしまうのではないか、という話があったが、彼は極東の醸造酒を気に入ってくれたらしい。

日本酒をパーカーポイントで評価した本を読んだけど、結果的には便利辞典の域を超えず、
心躍るものはなかった。酒は数値で計ることはできないと僕は思う。

でも、これを真っ向から否定することもできないし、一つの指標になるのは間違いない。もしこの数値が日本酒業界に席巻したとしたら、どうなるのだろうか。日本酒の多様な価値観が劇的に変わってしまう怖さがある。

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