【感想67】クライムズ・オブ・ザ・フューチャー

見る前に見ていた「プラスチックの摂食」や「臓器摘出を隠すことなく描写する」シーンでかなりショッキングな描写を惜しみなく出してくるタイプなんだと思ってたけど、いざ見に行ったら余裕で最後まで見きれる程度で安心したのもあったしかなり個人的なツボを押さえられてて後味が良い1日になった。

他人に勧めやすい ★★☆☆☆
個人的に好きか  ★★★★★

人間から痛覚や感染症の恐れがなくなった時代で手術による自傷行為が数少ない娯楽として広まっている世界が舞台になっている。
衛生の概念が不要になっているおかげで常にハエが集っている音があり手術自体が消毒等の必要がないおかげで身体に外傷を加えることにがラフに行われている。不定期で体内に臓器が生成される主人公のソールと、パートナーのカプリーヌによる臓器摘出の手術が大道芸に近い消費のされ方をしているのもこの背景があるからだろう。でも本人含めアートの一環としてこれは捉えている。

話の核心としては人間の進化や環境問題に根付いている。
プラスチックをはじめとした有機化合物を食料代わりにできる改造を施した人間から生まれた、生まれたときからプラスチックを食料として生きている子供が出てくる。この子は冒頭に登場して間もなく出番を終えるけれど、この身体機能が後の展開を大きく左右する存在になっている。

自然発生した新人類をもって、自分たちの道が正しいことを示したい改造人間。ただ序盤から念入りに描写されているように政府としては現実での人間と同じ機能を固辞していく姿勢を見せているので、この2つの対立構造が大きく括った時の話の本筋になると思う。

というのも男女での二項対立を促すような立ち位置の分け方が散見されたり、荒廃したディストピアチックな世界で繰り広げられる芸術性についてのぶつけ合いだったりと、複数の要素が絡んだうえでの群像劇のようなつくりなのでひとによって向ける視点が違えば捉えてくるものも大きく変わってくると思う。


かなりフワッとした話の進み方なのでわかりづらいところが多いけれど、100分程度とかなり作家性が強いタイプの作品にしてはまとまっている方だし映像は終始魅力的な絵を映し続けているので時間いっぱい飽きることなく集中して見れた。
特にこの映画はパンフレット買ってよかったなって思う。各インタビューに加えて3つの作品レビューが載っているので、気に入ったなと思ったら買っておくのがおすすめです。

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