【感想69】さよならの朝に約束の花をかざろう
前も再上映だった時に惹かれなかったからパスしたけれど、『アリスとテレスのまぼろし工場』は見に行こうと思ってたしちょうどいいから行ってみるかって気持ちで行ってきた。
正直岡本麿里の脚本で真っ当に好きなのは『とらドラ』(ギリ原作の内容のおかげでってのが大きい)と『心が叫びたがってるんだ。』ぐらいしかないけれど、だからと言って見ないのも昨今のアニメ映画ムーブに乗り切れないのは悔しいから見ちゃうんだよね。
他人に勧めやすい ★★★☆☆
個人的に好きか ☆☆☆☆☆
岡本麿里脚本って時点で賛否がハッキリわかれるけれど、個人的にはそういうのを抜きにして杜撰さのせいでダメな映画だなって思った。
この映画をスッキリした言い方をしちゃえば「お互い一人ぼっちになってしまったマキアとエリアルが疑似親子として過ごす中で育んだ愛情と、イオルフと人間という寿命が全く異なる故の結末で泣いてください」、ていう丁寧な説明書を提示したうえで物語が進んでいくし、軸としてはこれが据えられているんだと思う。
見ている側もクライマックスに向けて正しい道筋で気持ちを作ってエンドロール後もボロボロと泣いてしまう超感動作として機能するにはいい作り方なので、賛否あれどこれは間違っていないやり方なんだと思う。実際、前後にいたお姉ちゃん2人はアホほど泣いてた。
ただ個人的に気になったのが、その道筋を辿るうえでノイズが目立ちすぎるなっていうところ。
中高生ぐらいの姿からほとんど変わらないマキアと、徐々に成長していき母親との接し方も変化していくエリアルの関係を描いているだけで全然いいはずなんだけれど、プラスで入ってくるさまざまな要素が2時間弱の映画にしては滅茶苦茶多い。
例えば序盤で仲良くしている3人組のイオルフが三者三様に悩んでいる描写が差し込まれるけど、蛇足っぽさが勝る。
血のつながりはなくとも親子として順調に行きつつも時には子育てに悩むマキアと対比させるよう、レイリアはお腹を痛めて生んだ実の子と親子としての時間を全く過ごせないまま幽閉され孤独な時間を過ごすという残酷な境遇が与えられてるのに、マキアの物語には特に影響を与えないのが惜しすぎる。
レイリアを救う一心で生きてきたクリムは(イオルフの中では比較的)幸福な生活をしてきたマキアや自身の子を優先したレイリアを見て自分だけ時が止まっていた事を悟って息絶えるけれど、クリム自身のエピソードに歯抜け部分が多すぎて感情移入ができないのが正直なところ。
そんな感じで、サブエピソードのような要素が大量に絡んでくるわりには本筋であるマキアとエリアルの疑似親子の最期を彩る要素としては弱い部分がちょくちょく出てきて、それがノイズとして残っていたのがマイナスポイントだった。
感動系の話の割には全体的な展開のテンポが速めだったり、詰め込まれ過ぎなわりには明らかに描写が必要な部分が明示されなかったりと(俺が感動してオイオイと泣く準備をするには)不親切な感じが強かった。
ので岡田麿里あるあるの露悪さがダメというよりもお話の根本的なところで乗り切れないから駄目だなって感想に着地した。
そういう意味では、ちゃんと贅肉をダイジェスト化って形で切り落として詳しいの知りたかったら原作読んでくれって構成だった『ブレイブ・ストーリー』みたいなやり方は一番無難なんだなって思った。ちなみに映画公開から17年経つらしいですよ、『ブレイブ・ストーリー』。
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