【感想150】ノーヴィス
『セッション』とは一味違う、才に恵まれなかった人の狂気を堪能できるいい映画。これが監督自身の体験も織り交ぜられている、ていう情報抜きにしても、出来ないことを努力一本でトップに躍り出ようとする執着を見せ続ける映像はかなりの恐怖体験になった。
他人に勧めやすい ★★☆☆☆
個人的に好きか ★★★★☆
やっぱりイザベル・ファーマン演じるダルの内面をフィーチャーしている時間はずっとゾクゾクするし、面白い。
全編通して暗い景色・場所で展開されていたり、特に周囲の音が遠巻きになっている中で自身で反芻している用語だけはクリアに聞こえている状態であったり、とにかく自閉的な性格を序盤から強調していく。
しかも自身を追い込んでいるシーンは、かなりのハイペースでトレーニングの様子とオーバーワークやらで身体が限度を超えたシグナルを出している様子を交互に映し出すので、見ているこちらも心労が絶えない。ローイングだけでなく、大学の講義を含む勉強面でも徐々にエスカレートしていくのでお互いに心安らぐ瞬間はほとんど訪れない。
『セッション』でのニーマンとは真逆で、意図せずしてこの性分を形成されていってしまった、ていう部分はこの映画でもポイントになっていると思うし、徐々に破滅していく痛々しい様子も納得いく。
パーティに出たりパートナーを見つけたりと学生らしいことをしてはいるものの、ローイングの練習に意識が持っていかれることが多々ある。パートナーを持たないように心変わりしたりと、意識的に偉人たちに近づこうとしていたニーマンとは違って、アンコントローラブルな感情でストイックさを発揮して追い込んでいるのがわかる。
『がんばっていきまっしょい』と似て非なる作品が同時期公開にはなったけれど、それぞれが全く違うベクトルでいい映画なのでどっちも見てほしい。