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商業カメラマンに最適な趣味(言い訳)

中村です。
カメラマンに体力は必要かどうかというお話しです。年に2~30日ほど撮影が無い日があるので、その日を休みとしています。


カメラマンに体力は必要だ

自分の好きな被写体を撮るというスタイルなら、その被写体に合わせた体力があれば良いのですが、私の場合のようななんでも撮りますという商業カメラマン的スタイルはそれはもう相当な体力を必要とします。大げさではありません。

カメラを持って撮影をする人で撮影料金をいただくとプロカメラマンと言う認識になるかと思いますが、カメラだけでなく複数のレンズを多用する人もいれば、レフ板を使う人やストロボを使う人、撮影小物を用意したり、定常光を使う人やティザー用にPC機材一式を持ち込むなど、撮影に付随する荷物はそれこそ千差万別かと思います。

一番コンパクトですと標準ズームとカメラ1台だけならせいぜい2kgまでのカメラを持っての撮影ですから大した体力は必要ありません。

一番負荷がかかる場合ですと、カメラ2台にレンズを数本、定常光を3本+ボックスも3本、スタンドも3本に、急遽移動撮影がある場合のストロポセット、背景紙複数セット、ティザー用のモニター一式、撮影小物複数の場合になると相当な重量になります。

体力が必要な撮影の参考例

参考程度に各種撮影時の機材を

お寺で古い写真をスキャン撮影する機材
物撮りの最小限構成
機動性重視の動画セット
定常光撮影
物撮り最大構成
メニュー撮影のセット、テーブル以外は自前

プロフィール、人物撮影
ドローンは体力的には非常に楽
婚礼動画はこれ一式+レンズ数本
撮り直しができない花火は複数台レリーズで
こちらも花火をレリーズで
証明写真的セットのバック紙はもちろん自前
配信系は抑えとメインと
動き回る最小構成
工場撮影はヘルメット必須
婚礼動画はカメラとは別にフルタワーPC2セット

時間と費用がかかるから追加料金、とはしたくない

そういった最大荷重の撮影現場で、機材が増えて時間がかかるからと追加料金を頂くのもひとつの方法ではあります。ただ、私の場合は一人で搬入から設営を行い、お客様を待たせること無く所定の時間から撮影を行う準備ができて、なおかつ撮影後もすみやかに片付けを行い、お客様の貴重な時間をこちらの段取りの悪さで伸ばすことの無いように動けることがお客様にとっては良いカメラマンになれる(はずだ)と思っていますので、準備が遅くて疲れていてはお客様も気持ちよくない楽しくないし、機材が多いからとアシスタントを連れていくために増える人件費を上乗せしたり、時間が伸びて延長料を請求するのは、自分の体力、現場の機敏性の悪さをお客様に負担させているに等しいと感じるので、日々の体力づくりは私主観のカメラマンにとってはマストな必須作業です。

カメラマンに最適な運動

では、カメラマンに取ってはどんな運動が良いのでしょう。ウォーキングか、ランニングか、筋トレなのか、シーズンものだとスキー、スノーボード、サーフィン、オフロードバイクから自転車ロードバイクにマウンテンバイク、はたまたゴルフか。

そのどれもをやってきましたが結果的に仕事に役立つ体力作りと言う意味においてはしっくりこなくてやめてしまいました。

婚礼現場においては8時間程度立ち続ける事と、1万歩~2万歩ほど歩き回れる足腰が必要です。婚礼で1万歩も歩かないような撮影は足を使えていないと感じます。歩数が少ないといわゆる主観の「決めショット」が多くなり、カメラマンのセンスという言い訳の自己都合だけの写真になる傾向にあるように感じます。もちろん動き回って邪魔にならないよう、テーブルの合間を練り歩くことはせず、会場導線の最外周を動き回るのでおのずと歩数も増えます。

商品、物撮りにおいては機材およそ60kgほどを運搬し、すみやかに準備撮影、片付けができる腕力が必要です。

そしてなにより、どんな撮影場面に置いても瞬時に判断してその時々のベストの撮影方法を編み出す判断力が必要です。

足、腰、腕、頭。私の場合のカメラマンはほぼ肉体の全部が必要な仕事です。

ウォーキング

ウォーキングではカメラマンの体力作りとしては筋肉もつかず、有酸素にもならず心肺すら鍛えることができませんので意味がありません。毎日犬の散歩で10kmほど歩いていますが、これが撮影の仕事に役立つことはありません。ただし健康維持という面においては役に立っています。

ランニング

一時期フルマラソンも何度かエントリーするほどはまりましたが、ほぼ有酸素運動で無駄な贅肉も落ち、体は軽くなり、心拍数を上げて走れば心肺機能も強くなります。ただ、荷物を運ぶ筋肉面は全く付きません。4年ほどは真面目に走って大会にエントリーしたりもしましたが、重い荷物を運ぶ事のしんどさは続いたので走らなくなりました。

シーズンもののスポーツ

スキーやスノーボード、サーフィンなどは下半身の強化になり、楽しいスポーツです。エンジョイスポーツなイメージがあるかと思います。持久力はあまり付きませんが真面目にやれば体力は付きそうです。ただ、自分の意思に反したところで事故が起こってしまう可能性もあり仕事に支障が出るのも不安がありましたので辞めました。また、イメージとしてこうした運動は「ファンスポーツ」的な楽しい遊び要素も感じます。未納品の仕事があるときに休んで楽しく遊ぶ事ができない性分で、客観的に見た時に楽しんでるなあと思われる事はやらないようになりました。

自転車(ロード・マウンテン)

ロードバイクは頑張れば1日で200kmほど走れるのでちょっとした旅気分で楽しめます。しかしながら体の筋肉は腰から下半身を中心としては付きますが上半身の筋肉がおろそかになるので、駆動系カメラマンの趣味としてはいまいちに感じて、こちらも4年ほどで辞めました。マウンテンバイクは野山、林道を駆け抜けるのが楽しかったですが、怪我の危険もあったのでこちらも辞めました。

ゴルフ

20代~30代後半にかけて続けていました。自分との戦いでスコアもメンタルトレーニングのようなものですので楽しくラウンドできましたが、カートに乗らずに自分の足で歩いても1ラウンドで10kmほどのウォーキングで、筋肉的には何も意味の無い運動です。加えてゴルフもシーズンスポーツと同じく、ある意味楽しい優雅なイメージもあるかと思うので、40代に入ってからはお誘い以外では行かなくなりました。

最適解

そして今、カメラマンに最適なトレーニングとして残ったのは山登り(クライミング)です。登山と言うとテクテク歩くというイメージでしょうか。クライミングは岩をよじ登るものになりますが、私が特に好きなのはアルパインクライミングというジャンルです。

1泊ないし数泊分の食料、水、テントやシュラフと、クライミングをするための登攀具を持って登山をしつつ登山道から外れて岩場のバリエーションルートを見つけ出して攀じ登るスタイルです。

泊まり荷物に装備含めた荷物は夏場で20kg前後、冬には30kg前後になります。それを担いで山の中を登り下りを続けると、1日中足はスクワット、腰から背中には荷重の負荷がかかり、肩にも重い荷重、両腕はクライミング中に筋肉を存分に使い、登山道では無い道を探して見つける脳みその思考と、全身の能力と筋肉を使う運動です。

まさに、足腰が鍛わり、腕の力は付き、状況判断をする脳を鍛える事ができる、カメラマンにとって最適な休日の余暇です。そして客観的にはかなりの確率で怖そう、寒そう、しんどそう危なそうと言われる運動なので、楽しみ要素も感じられることもなく、仕事のための体作りという言い訳もできます(実際も楽しいどころかしんどいツライが勝ちますが、日常で味わえない達成感があります)

仕事以上に歩き動き荷物を持って考える休日を過ごすと、撮影の仕事が非常にスムーズに進みます。なによりしんどい思いをして登ってもう嫌だと感じたピークで見る景色は何ものにも代えがたく、疲れ果ててヘタをすると死にかけ寸前で下山をしたあとは、外界で起きる様々な仕事の難題もなんてことなく感じてしまうので、日常の撮影業務が楽しくて仕方ありません(遭難したことも救助要請したこともありません念の為)

山の魅力のフォトグラフィー

八ヶ岳、冬のテン泊。
槍ヶ岳、小槍の登攀
阿弥陀岳から眺める横岳、硫黄岳
阿弥陀岳北稜への取り付き
5月の富士山は人もおらず快適
北穂高岳の東稜(通称ゴジラの背)
雪稜を登る
能郷白山の冬の白さ
錫杖岳のクライミング
地元、御在所岳中尾根バットレスの登攀
立山室堂から竜王岳東稜
厳冬期涸沢岳西尾根
涸沢岳のテン泊装備(30kg)
西穂高岳を西尾根から
地元滋賀の金糞岳の新雪と霧氷
後立山連峰、白馬岳主稜へ
白馬岳主稜の全貌


南アルプス、北岳バットレスの登攀

こうして色々な山の尾根に取り付いて、道なき道を探しながら、ヒーヒー登るのは、非日常の極みで日々の色々な感情などが気持ちよくリセットできます。そしておのずと体力は付き、状況判断の能力に磨きがかかり、ピンチにおいても心のゆとりを持った行動ができるようになるので、日々の撮影業務において無駄になることがひとつもないという、まさにカメラマンにとって理想的な運動です。

少なくとも、撮影もデスクワークも落ち着いた日に、ゆっくり布団で寝るということはここ10年以上したことがありません。家でまるまる寝る一日、なんてもう数十年したことがありません。休める日こそ仕事の何倍も体を動かして、撮影日には余裕のある肉体で挑みたいものです。

山登り、だけでは足腰だけなのでだめなんです。
クライミング、だけでは腕っぷしだけなのでだめなんです。

みなさんも山の魅力、取り憑かれてみませんか。

山に登りたい言い訳でした。

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