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夜に咲く江戸桜
「ここって、競馬場なのよね?」
ウサギは入場ゲートに煌めくイルミネーションを見上げながら小さく首をかしげた。
「まるで夢の世界へ続く入口みたいだわ…」
「競馬場って、ギャンブルの場所って思われがちだけど、ウマ娘とのコラボがあったり、子どもが遊べるコーナーもあるんだよ」と、カメは静かに話した。
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「この競馬場は1周1600メートルあって、左右どちらからでも回れる、世界で唯一のコースなんだ」スタンドにたどり着いたカメは、前方をそっと指さした。
「1600メートルって、400メートルトラックの4倍よね? 大きすぎて実感が湧かないわ」カメの言葉に、ウサギは目をまるくした。
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地下へ続く階段を降りると、眩い光に包まれた「和のきらめきエリア」へと導かれた。そこには七色に輝く長いトンネルが横たわり、二人が一歩足を踏み入れた瞬間、まるで異世界に迷い込んだような、不思議な感覚に包まれた。
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「ねえ、どうして『江戸桜トンネル』っていう名前なのかしら。それだけが、どうしても分からないの」ウサギは首をかしげながら、そっとカメに問いかけた。
「ひとつひとつの電球をよく見てごらん」と、カメが優しく指さした。ウサギはその指先を追いかけ、じっと見つめると、「そういうことなのね!」と明るい声でつぶやいた。
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メガツリーの前に立つと、幻想的な馬が光の中を駆け抜けていた。
「競馬場ならではの演出ね」と、ウサギはそっとつぶやいた。
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「見て、真っ白なポニー。かわいいわ」
ウサギは放牧場に視線を向けて、嬉しそうに声をあげた。
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「なぜか、うさぎもいるんだけど」とカメがつぶやくと、ウサギは思わず振り向いた。
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「少し寒いわね」と、ウサギは肩を少しすぼめた。「ちょっと待ってて」そう言うと、カメが珍しく走り出していった。
「お待たせ」戻ってきたカメが、ウサギの手のひらにそっとチュロスを乗せた。
「ありがとう。一緒に食べようね」
煌めく光の木々が、二人の静かなひとときをそっと包み込むように見守っていた。
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