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銀色に輝く 二枚の招待状
その日、カメが図書館の静謐な閲覧席でゆったりとページを繰っていると、いつもとは少し様子の違うウサギがやってきた。
「夢が、私を招いてくれたの…」
彼女はそっと囁くと、戸惑うカメの手を取った。
二人で中庭のテラス席に腰掛けると、ウサギはそっと手のひらを開いた。そこには、銀色に輝く小さなプレートがあった。
「それが、夢からの招待状なんだね…」
カメは、そのプレートがまるで遥かな宇宙から届けられたかのように、神秘的な光を湛えているのをじっと見つめた。
「この前、私たち、一緒にロケットを見に行ったでしょ? あの光景がずっと頭から離れないの。あれに乗れば、本当に宇宙へ行けるんだなって思うと、眠れなくなっちゃって…」
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「あの場所には宇宙服もあったね。生命維持装置がついていて、これを着れば月面を歩けるんだって思った」 カメは静かに言った。
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「宇宙ステーションもあったわ。いつの日か、あそこで暮らせる日が来るのかしらって、ドキドキしたの」 ウサギは夢見るように瞳を輝かせた。
「でもね、一番心に残ったのは、あの巨大な金属の塊。夢を運ぶロケットのエンジンだったのよね…」
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「それでね、昨夜、不思議な夢を見たの。自分の背中にエンジンがついていて、お月さまへ向かって飛んでいく夢だったわ」
「そして、朝の光の中で目を覚ましたら、この招待状があったんだね…」
カメは彼女の物語を引き取るように、静かに言葉を紡いだ。
「そう遠くない未来、人類は新たな星で暮らすようになる。でも、今はまだ夢でしかない。これはチャンスだと思うの」
「この招待状、二枚あるんだね…」
「だって、夢の中で月へ向かって飛んでいたのは、私だけじゃなかったもの…」
ウサギはカメを見つめると、言葉の続きを探すように、ふわりと微笑んだ。
「行ってみようか…」
カメはそっとウサギの手を取り、微笑んだ。 ふと見上げると、透き通る青空の彼方に、真昼の月が静かに輝き、まるで二人の旅立ちを優しく見守っているようだった。
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