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夢色の風に乗って

その日、ウサギはカメとの待ち合わせより少し早く立川駅に着いた。デッキの上に出ると、北からの冷たい風に押されるように、人波の中へふわりと紛れていった。

気まぐれに歩いていると、不思議なものが目に留まり、ウサギの心はたちまち奪われた。その姿を見つめるうちに、いつの間にか未来を思い描いていた。

「これから先、私はどんな道を歩いていくのかな。でも、進む道なんて、誰にも指図されないんだから! だって、これは私の人生だもんっ!」

「もちろん、いつもスイスイ~♪って進めるわけじゃないよね。思いどおりにならない日だってきっとあるわ」

「まるで車がバキーンッ!て真っ二つになっちゃったみたいに、どうにもこうにも動けなくなる時だってあるかも…」

「も〜、なんでこんなに絡まっちゃうの!?って、知恵の輪みたいな問題にぶつかることもあるかもしれない…」

「もしかしたら、進んでた道を引き返さなきゃいけないことがあるかも…。まるで途中で切れちゃった階段みたいに、先に進めなくなることだって、あるかもしれないわ」

「でもね、そんな時こそ、大きなバッグを持ってお出かけするの!夢をいっぱい拾い集めなきゃでしょ♪」

「どーんと大きな山が目の前に立ちはだかっても、へっちゃら!信じて進めば、きっと乗り越えられるはずだもん♪」

「そして、広い原っぱにたどり着いたら、大きな植木鉢に夢の種をパラパラってまくの!『私らしいお花が咲きますように♪』って願いながらね!」

「私、もっと心の大きな人になりたいわ。小さなことなんて気にしないの。大切なことを見極めたいのよね」

「でもね、私は寂しがり屋さん。生きる喜びを誰かと分かち合いたいの」

「だから、一緒にいてくれる大切な人がいるって思うと、もう、胸がじんわりあったかくなるの♪」

「ほら、あそこにねっ!」

ウサギの視線が遠くの人混みの中で、なじみ深いシルエットをとらえた。心がぽっと温かくなり、頬にふわりと笑みが広がる。

次の瞬間、迷いなく風を切るように駆け出した。彼のもとへ、一秒でも早く…。

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