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恋もレースもスピードが命!

その日、ウサギとカメは科学技術館の「自転車広場」で、夢から飛び出してきたような不思議な自転車に囲まれていた。自転車を見つめる二人の瞳は、無邪気な子どものようにきらきらと輝いていた。

「ねえ、これも自転車なの?」
ウサギは小首をかしげながら、細い指先でそっと木製のライオンを指さした。

「これは、1790年にフランスのド・シブラック伯爵が作ったもので、自転車の始まりとされる伝説の乗り物なんだ」

「これが始まりの自転車なのね…」
ウサギはまるで宝物を見つけた旅人のように、うっとりとした瞳で木製のライオンを見つめていた。

伝説の木馬車「セレリフェール」

「その隣は、1817年にドイツのドライス男爵によって発明されたもの。ハンドルがついているから方向は変えられるけど、まだペダルはなくて、地面を蹴りながら進むんだ」

「地面を蹴って進むなんて、まるで子どものおもちゃみたいね」ウサギは愛しげに瞳を向けると、クスリと笑った。

自転車の始祖「ドライジーネ」

「これは、ずいぶん個性的な自転車ね…」
ウサギは驚いたように目を見開きながら、目の前の大きな車輪に視線を注いだ。
「こんなので、人が漕げるのかしら?」

「この自転車は、速く走ることができたらしいけれど、人間の足の長さには限界があるから、とても乗りにくかったみたいだね」

多くの人に愛された「オーディナリー」

二人は過去の自転車を珍しそうに眺めながらゆっくりと歩き続けた。そして、いつの間にか現代の自転車が並ぶコーナーへとたどり着いていた。

「オフロードバイクでデコボコ道を駆け抜けるのも悪くないけれど、私はやっぱり、果てしなく真っ直ぐな道を、全力で駆け抜ける方が好きなの」ウサギは、まるで風そのものになったような声で語り始めた。

「時速70キロを超えた瞬間なんて、まるで空を飛んでいるような感覚だったわ…」

「さすがにそれは、速度違反にならないのかな?」カメは少し眉をひそめながら、静かに首をかしげた。

「恋もレースもスピードが命なの。ぼやぼやしてたら、負けちゃうんだから!」
ウサギはいたずらっぽく微笑むと、カメの袖を軽く引いた。その瞳には、夜空を駆ける彗星のような輝きが宿っていた。

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