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受験生だったあの頃

「おはようございます!『ウサギのティースプーン』のお時間です」 小さなラジオブースに囲まれて、ウサギはいつも通り明るい声で番組を始めた。

「次のメッセージは、ラジオネーム『もっと勉強したいカメさん』からいただきました」 手元のメモに目を落とすと、柔らかく微笑んだ。

「受験の時の思い出はありますか、というご質問ですね」そう言うと、記憶を手繰り寄せるように語り始めた。

「実はね、私、今でも合格発表の日の夢を見るんです。きっと心に刻まれているんでしょうね」ふとどこか遠くを見つめるような表情を浮かべた。

「受験の日といえば、近くの男の子たちの会話が今も残っています」

「なんとなく聞いていると、『前の席の長い髪を見てたら、試験よりも緊張した』なんて言っていたんです。きっと男子校の子たちだったのでしょうね」

「先日、母校を訪れたんです。不思議ですよね、久しぶりでもここが自分の原点なんだと感じました。歩いている後輩だって、どこか他人とは思えなくて…」

「こうしてラジオで話しているのも、メディア論を専攻していたからなのかなって、時々思いますね」 ウサギは少し照れたように、さらりと言葉を綴った。

「今年の受験生のみなさん、本番ですね。私みたいに消しゴムを忘れないよう、持ち物チェックをしてくださいね。消しゴムがないと問題が3倍くらい難しく感じます!」

「あ、でもそのおかげで隣の子と仲良くなったんですけどね。それでは、また次回の放送でお会いしましょう」

放送が終わると、ウサギはしばらくスタジオの静けさに身を任せた。「そういえば、カメくんの大学の話って聞いたことないわ」

「でも、聞かなくても分かる気がするわ。きっと、図書館の一番奥の席に座って、時間を忘れて本を読んでいたんでしょうね。授業に行きなさいって、司書さんに注意されてたりして…」

「今ごろ、くしゃみしてるかしら」そう思うと、思わず笑みがこぼれた。

「今年の受験生が、満開の桜を咲かせられますように!」ウサギは心の中で呟くと、勢いよくスタジオを飛び出した。

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